日本人が「静かに」海外へ移住・永住している、そんなニュースが注目を集めています。メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさんが、ご自身も海外移住者の一人として、そのニュースの「なぜ」を解説しています。
※本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年2月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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静かに進む海外移住がついに新聞でも話題に
日本人の海外流出がニュースになっています。
● 日本人、静かに進む海外流出 永住者が過去最高の55.7万人に
この記事ですが、実は私も取材を受けてます。
ポイントは2つ。
1つは「なぜ『静かに』なのか」。もう1つは、「永住者が過去最高」の持つ意味です。
なぜ「静かに」移住するのか
ポイントはなぜ「静かに」移住するかです。
サラリーマンの海外赴任や結婚など大義名分がある人はともかくとして、そうでない「勝手に海外に出ていく人たち」は相当の勇気を持って飛び出しています。
移住者の一人は、「他人と自分とは結局、分かり合えないと知っているからかなー」と言っていました。なるほどなぁ、と。
会社を辞めたり、都会に出たりすると「逃げるのか」「自分達をおいていくのか」などと謎に攻撃してくる人がいます。移住を発表したひろゆきさんも、中田敦彦さんも、当初はやたらいろいろ言われてました。特に農家だった人にとって、土地を捨てるとはとんでもないことだからなぁ、とも。
動く人たちは、「他人の判断にいちいち外野から文句をつける人」と戦っても仕方がないと諦めてるんでは。
他人にわかりやすいように、人生を全部説明するのは無理。そもそも納得してもらうような筋合いのものでもない。無駄な議論は時間の無駄。
なんで、家族で折り合いがつき次第、静かに出ていくのかなと。それが気がつくとかなり多くの数になっていた、みたいな感じでしょうか。
私がマレーシアで出会った移住する経営者にも「静かにやりたい」とおっしゃる方が少なくありません。
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長期滞在者と永住者の違い
ところで、今回増えているのは永住者です。永住者と長期滞在者は違います。
長期滞在者は、約75万1千人(前年比約5万6千人減)とコロナ禍で3年連続で減少した。
(朝日新聞)
とのこと。マレーシアに来ているのはほぼ長期滞在者です(結婚している人などを除く)。つまりはいつかは日本に帰ることを前提とした滞在者です。つまりマレーシアに来ている人は、全体から見ると減っています。
なんでかというと、マレーシアで永住権を取るのは非常に難易度が高いからです。そこに気づいてオーストラリアや欧州に移っていった人たちも大勢知っています。
一方、永住者は日本に帰らないかもしれない人たちです。その永住者が20年連続で増えているのです。
一方、原則として在留国で永住権を認められ、生活の拠点を日本から海外に移した「永住者」は20年連続で増加し、10年前と比べても約14万人超増えた。地域別では北米(約27万4千人)、西欧(約9万人)、豪州・オセアニア(約7万6千人)が多い。男女比は女性が約62%と多い。職業や年齢など他の属性は明らかにされていない。
(朝日新聞)
永住権には3~10年など、相当の期間がかかります(国によって異なります)。実は申請中の人はもっといるでしょう。
日本人海外永住者が過去最高の55.7万人。
日本は良い国ではあるけど、徐々に悪くなってきてるし、日本以外の国に生活拠点を移せる準備をしたほうが安全だよね、、と、10年前の東日本大震災ぐらいから動いた人達が顕在化。国によりますが、永住権とるのに10年位かかります。https://t.co/0qojRzgvKk
— ひろゆき (@hirox246) January 23, 2023
中世の音楽家たちは、本当によく転居しますよね。最近読んだシューマンの伝記でも、シューマンもワーグナーもニーズに合わせて住む場所をコロコロ変えています。ドボルザークもチェコからアメリカに行きました。
マレーシアの周囲の華僑と話すと、他国の永住権を持っている人が、少なくありません。子どもが国を変わることを当たり前だと考えている節がある方も多いです。ある方は「子どもがマレーシアに残りたがってて困る。私たちの時代に比べて内向きだ」とこぼしてました。
マレーシアでは頭脳流出が昔から問題になっているわけです。
近所の公立学校に通うマレー系の親も子どもに積極的に外国語(ドイツ語・日本語・韓国語)を学ばせています。「これからはグローバルの時代だから」と子どもをドイツに短期留学させてました。
同時に日本が好きで住みたいとやってくる外国人もいるので、静かに人口の移動が起きているんでしょう。
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