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欧州は黙認か。中国に台湾侵攻を決意させたマクロンの「余計な一言」

開戦から400日以上が経過した現在も、激化の一途を辿るウクライナ戦争。東部のバフムトでは露軍の優勢が伝えられていますが、ロシア国内では不協和音が響いているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ロシアの有力者たちが上げ始めた露軍批判の声を紹介。さらに台湾や中東でも、ごく近い将来に戦火が上がる可能性を指摘しています。

台湾と中東でも上がる戦火。世界が再び迎える戦争の世紀

ロ軍は、バフムトとアウディーイウカ、マリンカの3拠点の攻撃に絞り、徐々に防御の方向にシフトしているのは、先週と同じ。

バフムト方面

ウ軍はバフムト市から撤退して良いが、ワグナー軍とロ軍空挺部隊の多くに損害を与えることに価値を見出している。ワグナー軍は攻撃を市内に絞り、市内中心部を確保しバフムト駅の攻防になっている。プリゴジンは、市内の80%をワグナー軍が占領したと言う。しかし、ワグナー軍がビルに侵入すると、ウ軍は撤退しながら、そのビルごと破壊して行く戦術になっている。

対して、ロ軍は、市内にテルミット焼夷弾を打ち込んで、ウ軍の排除を行っている。しかし、損害無視のワグナー軍が優位になっている。しかし、ワグナー軍は市内の東側での戦闘しか要員を割り当てられていない。他はロ軍空挺部隊であり、その攻撃をウ軍は撃退し続けている。ワグナー軍とロ軍空挺部隊では戦闘能力には大きな差がある。

そのワグナー軍は、徐々に数が少なくなり、市郊外の戦闘をロ軍に交代して、市内東側に移動させたようである。このため、市外での攻撃は減り、ウ軍が優勢になっている。

市外北西では、ボダニウカとクロモベにロ軍が攻撃したが、ウ軍は撃退しているし、市外南西では、ロ軍の攻撃もない。

このような状況であり、プリゴジンは「ウ軍がバフムートを離れる兆候はない」とし、周辺のロ正規軍は、引き続き郊外地区を守り、ワグナー軍を支援するよう求めた。

その他方面

バフムトに兵員を集めていることで、クレミンナ方面やリシチャンスク方面での攻撃が少なくなっている。しかし、クピャンスク方面では、リマンペルシーをロ軍が占領したことで、徐々にクピャンスクに近づいている。

アウディーイウカ周辺で、ロ軍は損害が大きく、攻撃を控えているようである。セベルネだけに攻撃したが、ウ軍に撃退されている。プレヴォマイシケはウ軍が奪還したようだ。

マリンカにもロ軍が攻撃しているが、ウ軍は撃退している。この地点は、数か月攻撃をしているが、ロ軍は前進できないでいる。

宇国防安保委員会のダニロフ氏は、クリミアで発生する謎の爆発について「ウクルオボロンプロム(ウクライナ防衛産業体)は新型兵器の開発やテストに従事しており、何らかの兵器のテストが行われるなら我々の領土で実施されるため、新型兵器のテストがクリミアで実施される可能性を否定できない」とした。また、クリミアのロ軍が、塹壕を掘っても絶対に助からないとした。

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アメリカの機密文書漏洩で判明したロシア軍の戦死者数

米軍とウ軍が検討している攻勢計画の秘密情報が漏れて、その犯人は捕まったが、機密文書で多くのことが分かった。

2023年中には、この戦争は終わらずに、2024年まで続くと米軍は見ているようである。

ウ軍の9個旅団を春攻勢に投入するが、その個々の旅団の兵器配備がわかり、その旅団の役割が分かるので、どこを攻めるのかが薄々分かる。このため、旅団の構成要素を変え、春攻勢の作戦を変更しているようである。

これにより、4月から5月に予定していた春攻勢は、少し後ろ倒しになり、「夏までに」とシュミハリ宇首相は言う。

この延期には、欧米諸国からの兵器供与が遅れていることも関係している。4月中に、戦車が必要台数揃わないとか、F-16供与を要請しているが、米国は供与を約束しないなどの作戦成功に必要な兵器が揃っていないことも原因のようである。

米国はロシアの国民が戦争に本気になると、戦争が激化してエスカレーションするので、そうならない範囲を見極める必要があると思っている。兵器の種類と米軍の関与をどうするかであり、米軍がウクライナのリビウまで米国製兵器を運ぶ実験をするようである。

次の段階は、米軍が兵器の整備をすることになる。どこまでがロシア国民が怒らない範囲かを考えている。そのため、兵器もF-16は大丈夫かを見極める必要があるということのようである。

また、文書では、ウクライナ戦争でロ軍・ウ軍両軍の兵士合わせて最大35万4,000人が死傷したという。ロ軍側の死傷者は18万9,500~22万3,000人。うち3万5,500~4万3,000人が戦死、15万4,000~18万人が負傷したという。ウ軍側の死傷者は12万4,500~13万1,000人に上り、戦死者は1万5,500~1万7,500人、負傷者は10万,9000~11万3,500人とされている。

ロ軍側の戦死者数がウ軍側の3倍になっていることがわかる。

ウクライナの大攻勢でロシア連邦に訪れる崩壊の時

ウ軍の春攻勢に備えて、ロ軍は、ザポロジエ州の占領地に全長約120キロの防御線を完成させたという。この防御線は3層からなり、英国防省は「メリトポリへの進撃をウ軍が検討しているのは間違いないとロ軍は考えており、かなり力を入れて構築したとみられる」とした。

また、ウ軍の春攻勢に備えて、プーチンは、軍への動員や徴兵の招集令状電子化を認める改正法に署名し発効させた。これにより、招集拒否ができなくなる。

40万人の兵員募集を行っているが、10分の1も集まっていない現状があり、第2次動員が始まる可能性が高まっている。その時には招集拒否ができなくなる。

それと、ウ軍大攻勢に備えて、ヘルソン方面やザポリージャ方面全域において、民間人をクリミア方面へ避難させている。民間人が、地域のロ軍の兵器などの位置を知らせるのを恐れていることがわかる。

それと、5月9日の戦勝パレードが各地で中止される。クリミアや国境隣接各州で、昨年は実施したが、今年は中止のようだ。この理由が兵器の枯渇でT90などの戦車がないことによる。そもそも戦車がない。

少し前には、中央戦車保管センターからのT-64戦車を前線に送っていたが、現在は、シベリアのダーチノエ戦車保管庫からT-55/T-54戦車を持ってきている。

このため、ロ軍は欧米製戦車対応策で、特別部隊を編成して、歩兵に対戦車ロケット砲やドローンを持たせて、戦うという。欧米戦車に対して、ロ戦車を対抗させないということは、負けを認めていることになる。

もう1つが、1日5万発の砲弾を打っていたが、現在は1日5,000発しか打たない。数か所の攻撃地点以外には、砲弾を補給しなくなったが、その理由がウ軍大攻勢に備えるために、備蓄することにあるようだ。しかし、ロシアの弾丸生産能力はすごい。

欧米側が、束になっても生産能力面で追いついていない。とうとう、韓国の備蓄分を投入するが、ロシアは北朝鮮とイランから弾薬を買っているが、自国生産量もすごいようである。

それでも、弾薬削減の対応策をロ軍が打つが、ウクライナ国防省傘下情報総局のブダーノウ局長は、ウ軍の大攻勢でロシア連邦に崩壊の時が来ているとした。

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ナリヌワイ氏を毒殺へ。「敗戦後」の準備を始めたロシア

そして、ワグナー軍トップのプリゴジンも14日、「プーチン政権は軍事作戦の終了を宣言すべき時だ」とする声明を発表した。同氏はまた、ロ軍は「東部ドネツク州全域の制圧」とする主目標を達成できそうもない上、ウ軍の反攻で敗北する可能性があるとも警告した。

ワグナー軍の要員も大幅な減少になり、ワグナー軍も戦えないことによるようである。それと、ロ軍第22特殊任務旅団(スペツナズ)と他の2つのスペツナズ旅団が、ウクライナで推定90~95%消耗したことも大きいようである。

しかし、一時的な敗北によってロシア国民の奮起を促し、総動員令を出して、最終勝利まで戦い続けることができると主張している。

このような状況になり、ロシアで収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の広報担当者は13日、同氏が激しい胃痛を訴えていると明らかにし、ゆっくりと毒を盛られている可能性があるとした。

クレムリンとしては、ウクライナ戦争に負けると、民主化になり、その時の指導者がナワリヌイ氏になるとみて、民主化を潰す意味でもナワリヌイ氏をゆっくり殺そうとしている。

その上、ロシア国内がバラバラになってきた。イーゴリ・ギルキン氏は、主戦派で「怒れる愛国者クラブ」を結成し、ロ軍の批判を流し、信用を失墜させてきた。クレムリンはギルキンを検挙したいが、政権内のシロビキから支持されている。

同じくロ軍批判をするプリゴジンは、「公正ロシア」党の党首ミロノフ氏と組んで大統領選挙に出るので、ギルキン氏とは組まない。しかし、戦場の状況は一番押さえている。プリゴジンとしては、戦争を続けるとウ軍に負けることが見えているから、停戦か戦うにしても総動員を呼びかけている。クレムリンの権力者たちは、ロシアの利益を裏切っているという。

その見方では、FSBの官僚たち、特にパートリシェフ安保会議書記やゲラーシモフ参謀総長でも、財政面で戦争が続けられないと考える反戦派が出てきた。このため、プーチンもショイグ国防相も戦争継続するだけになってきた。この頃のロ軍が攻撃から防御にシフトした理由ともいわれる。

それと、ロシア国家親衛隊の一部がウクライナ前線に出されて、大きな損害を被り、反発する勢力もいる。ロ軍とは別の組織が多数前線に展開していて、指揮命令系統もバラバラであり、真面に戦えないということも大きい。

ロシアは、近代国家の体をなしていない。国が暴力の独占をしていないで、私兵軍がいる。国の中でも武装軍が多数の部局にいることで、命令系統がバラバラであり、作戦指揮が複雑で迅速な作戦が実行できない。

しかし、ロシアの政治体制では、FSBが中心であり、プーチンを交代させることもできる。戦争が負け始めると、このロシア内での権力闘争が激しくなり、クーデターなどの可能性も出てくることになる。

このようなロシア国内の分裂を抑えるために、プーチンは、毎年6月に行われる国民対話を、2023年6月上旬に行うようであり、2024年選挙時までは、第2次部分動員も総動員も行わないのであろう。

このようなロシアに対して、ノルウェーは、オスロのロシア大使館の約40人のロシア人外交官中15名を追放するので、約3分の1強を追放することになる。

米国は、国連に参加するロシアの国連代表団のビザを発給しなかった。今月、ロシアは、安全保障理事会の議長国であり、人員を増強したいが、できなかった。

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台湾侵攻を欧州は黙認か。中国に訪れた千載一遇の好機

中国は、欧米日が半導体製造装置を中国に売らないという協定を見て、このまま時間が経過すると、中露は負けることになると見た可能性が高い。

今回の戦争を見ると、ロ軍の物量対ウ軍の欧米製精密兵器の戦いであることがわかる。この精密兵器で物量のロ軍が多大な損害を出しているし、戦争全体としても、戦前の予想とは大きく違うことになっている。

この原因は、精密兵器に必要な半導体がロシアにはないことであり、中国も半導体自体は製造しているが、高密度な半導体を作れていない。このため、時間がたつと、欧米日は益々高密度化の半導体ができるが、中国ではできないことになる。

将来、台湾戦争になっても勝つことができないことは自明である。

このため、なるべく、時間をおかずに台湾侵攻した方が良いことになる。

その上、マクロン仏大統領は、米国の指示には従わないし、台湾侵略戦争が起きても、欧州は関係しないと、習近平主席に述べてしまった。このマクロンの言葉を聞いて、中国の戦略家は大きなチャンスが来たと述べている。

これで、台湾侵攻しても、欧州は手出ししないことになる。

しかし、その後訪中したドイツのベアボック外相は、「(台湾に関する)一方的で暴力的な現状変更は欧州として受け入れられない」「なぜ中国は侵略者の露に対して戦争をやめるように求めないのか」と述べた。これに対して、秦剛外相は、ウクライナ情勢を巡り「和平に向けて努力を続けたい」と表明し、対話を通じて解決すべきだと強調した。

しかし、台湾戦争時、ドイツ経済にも中国は重要な市場であるので、そう簡単に市場を放棄しないとみている。

もう1つが、欧米日企業の工場の撤退が起きている。このままにすると、いづれ、経済的分断も起きて、中国経済は回らなくなる。

それと、恒大集団倒産直前で不動産バブル崩壊で、今後経済的な面でも国民に豊かな生活を保障できない。そのため、共産党への支持率も落ちてくることになる。

それなら、いっそのこと、台湾軍事侵攻をして、台湾にある半導体工場と従業員を取ってしまい、中国の半導体としてしまえばよいとなる。

ということで、欧米対抗の戦略の方が良いということになるので、中国の態度が変化したようである。

台湾の蔡総統の米国訪問などを理由に、台湾包囲演習をして、いつでも侵略できることが台湾国民に分かったはずである。

このため、2024年総統選挙は、戦争か統一かの争点になる。

もし、平和な統一を掲げる国民党が負ければ、戦争を行うことになる。

その時までは、ロ軍もウ軍に負けないで、ロシアが民主化しないことが重要である。しかし、ウ軍の大攻勢でロ軍が負ける可能性が出てきた。ロシアは、逆にそのためには、中国から援助が必要であると述べているはず。

このため、今年初めに中国の中央軍事委員会がロシアに武器の「段階的な提供を承認」し、武器を民生品に偽装して引き渡そうしていたようである。しかし、中国の秦剛国務委員兼外相は、「紛争当事者に武器を提供することはない」と明言した。

このため、中国の李尚福国防相が4月16~18日にモスクワを訪問するが、ロシアへ中国の軍事支援をどのように行うのかが大きな議題であろうとみる。その見返りは、ロシア太平洋艦隊の台湾侵攻時の中国側面支援である。このため、北方四島でのミサイル配備などを行っているなど、ロシアは、太平洋勢力として活動できる対等な軍事パートナーであることを中国に強調する意図であるようだ。

今後、徐々に中国からロシアに武器援助が行われる可能性が高い。または、ロ軍が負け始めた時点で、中国がロシアとウクライナに停戦案を示すことになる。ロ軍が負けないようにロシアの体制を維持するためである。

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核兵器使用に躊躇なし。中東で進むイスラエル包囲網の構築

もう1つが、中東の動きである。イランが中東全域で親イラン武装勢力の結集に動いている。イランとイスラエルの間で続く隠れた戦争が新たな段階に差し掛かっており、先行き不透明感が強まっている。コッズ部隊のエスマイル・ガーニ司令官は最近、中東各地の武装組織の指導者らと秘密裏に会合を重ねてきた。シリアとイラクで活動する組織も含まれるという。

イスラエルのネタニエフ首相は、司法改革に反対するガラント国防相を罷免したが、司法改革を中止して、イスイラ戦争に備える必要が出てきた。勿論、ガラント国防相の罷免も中止した。

オースティン米国防長官は、ネタニヤフ首相らと会談し、イランの核開発で危機感を共有して、共同対処することになっている。

しかし、中東でサウジ、UAEもバーレンなどもイランと国交を回復して、イスイラ戦争になっても、良くても中立の維持でしかない。イランは、イスラエル孤立化で、全面対決になる。この方面では核抑止は効かない。お互いに核を使う可能性が高い。

ロシアは核技術と交換で、武器をイランから得ている可能性もある。

北朝鮮も同じように、ロケット技術と武器をロシアと交換している。このため、ロケット技術の進化が止まらないことになっている。

しかし、通常戦力がないので、中国の台湾進攻時でも韓国への侵攻はないとみる。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年4月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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