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中国経済界の明と暗。国産ジェット就航と20%超の若者の失業率問題

中国の製造業の躍進のニュースが止まりません。5月28日、中国の国産ジェット旅客機「C919」が商業飛行を開始。すでに、受注数も1000機を超えているそうです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂教授が、このニュースについて各国メディアが伝えた「転換点」や「西側への依存度を減らす」などの意味を解説。脚光を浴びる出来事の裏で、若者の失業率が20%を超えていて、中国国民が決して将来を楽観していない現状も伝えています。

EVに続いて国産ジェット、豪華客船と貨物列車、リニア。若年層の失業率問題と同時進行で進む技術の躍進

中国の景気動向には、世界から常に熱い視線が注がれている。国際通貨基金(IMF)の予測によれば、今年のアジア地域の経済成長は4.6%。世界経済への寄与度は70%にも達するとされ、なかでも中国の寄与度はその半分前後ともいわれるのだから当然だろう。

中国の景気は悪いのか良いのか。シンガポールのテレビCNA(6月2日)は、民間のPMIとサービス業の伸びを並べ、「まだら模様」と表現した。実際、見る角度によって評価が分かれるのは自然な話だ。不動産業界を覆う曇天は相変わらずですっきりしない。失業率にも課題は残る。なかでも若年層の失業率の高さは深刻だ。

5月の後半には中国国内の多くの経済誌が若者の失業率について特集を組んだ。20.4%という高い水準が問題視されるのは当然だが、社会へのプレッシャーという意味では公務員の志望者数の高まりにそれが如実に表れていた。公務員の志望者は10年前に比べて約倍増するほどの勢いだ。若者の多くが安定を求めていて、その背後には先行き不透明感があることを物語っていた。

米中対立もその一つの要因だ。主要先進国(G7)広島サミットでは、デカップリングで先進国がまとまるのは回避され、グローバル・サウスが対中包囲網に加わることもなかった。それが中国にとって大きな安心材料となったことは先週の原稿でも触れた。ただし、バイデン政権はそれでも対中貿易を実質的に制限する新ワシントンコンセンサスを打ち出し、中国の先端産業の発展阻止に相変わらず躍起である。不安な要素は尽きないというわけだ。

だが、そんな中国にも明るいニュースがないわけではない。それどころか、むしろ製造業の分野では、技術面でのブレークスルーが継ぎ目なく脚光を浴びた。

フランスのテレビ「F2」(5月29日)は、中国国産旅客機C919が5月28日に商業飛行を始めたというニュースを大々的に扱った。番組キャスターは冒頭、「コンコルドの最後の商業飛行は20年前でしたが、今日、中国が国産旅客機の商業飛行を開始しました。世界の航空業界にとって、これは大きな転換点となるでしょう」という解説を加えた。

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国産ジェットの開発が国内産業の力の結集であることは言うまでもない。日本では今年、三菱重工業が2008年から15年間取り組んできた国産ジェット開発計画を正式に断念したばかりだ。

中国が国産旅客機の開発を始めたのは2007年のことだ。20以上の省・市から1000を超える企業・事業体が集結し、30万人に上る選抜チームが組成されて開発にかかわってきた。

100万点を超える部品を扱う旅客機の製造は、それ自体がハイテク技術の集積で、そこで磨かれた技術は他産業への波及効果も大きいと期待される。現状で受注数も1000機を超え、順調なスタートを切ったようだ。

ただフランスのテレビが「転換点」と表現したのには別の意味もある。ボーイングやエアバスが寡占していた世界に、いよいよ中国が大穴を開ける効果があるからだ。そのためかC919を扱った欧米や韓国のメディアでは「西側への依存度を減らすための大きな一歩」といった表現も目立った。

もっとも国産旅客機C919の製造には西側先進国の多くの部品が不可欠であり、中国側にも「脱依存」の発想はないのが現実だ。そのことは以前の本メルマガでも書いた。いわんや直ちに西側不要論に結び付くような話ではないのだ。ただC919が世界の航空産業に一石を投じたことには変わりなく、その意味で大きなブレークスルーであることは間違いない。

転換点という意味では、中国発の話題はこれだけではない。このところC919と並んで中国メディアを盛り上げたのは、中国の自動車輸出大国への転換である。電気自動車(EV)の躍進が中国を世界最大の自動車輸出国に押し上げたというニュースだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年6月4日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by:KITTIKUN YOKSAP/Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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