ジャニー喜多川氏からの性被害を訴えていた大阪在住の男性が、山中で首を吊った状態で発見されたという痛ましいニュース。なぜ男性は、自ら死を選ばなければならなかったのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、遺族のコメントを紹介するとともに、性加害を含む児童虐待の深刻さを解説。さらに旧ジャニーズ事務所の「悪の構造」に切り込まず放置し続けるマスコミを強く批判しています。
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プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
今も旧ジャニーズ「悪の構造」を放置するメディアの罪
旧ジャニーズ事務所の「性加害問題当事者の会」に所属する40代男性が、大阪府箕面市の山中で死亡しているのが見つかりました。報道によると、男性は性被害によって精神的な不調が続いていると訴えていたほか、被害を告発したことをきっかけに、インターネット上でひぼう中傷を受けていたそうです。
男性の遺族が代理人の弁護士を通じて発表したコメントの内容は、旧ジャニーズは本気で「被害者に寄り添っている」とは思えないものでした(以下、抜粋・要約)
彼は本年5月、旧ジャニーズ事務所に電話で、在籍時の1995年にジャニー喜多川から性加害を受けたことを訴えました。事務所は「担当者が必ず折り返す」旨を約束。しかし5か月以上、ジャニーズ事務所から連絡は一切ありませんでした。
再度の告発にも、事務所からはなんの応答もなく放置され、彼の焦燥感、悩みは深まっていました。また、事務所に誹謗中傷への対策も求めましたが、記者会見で「誹謗中傷をやめてください」と呼びかけるのみで、具体的な措置を講じていません。
彼の心労は、もともと抱えてきた性被害のトラウマの再燃とも相まって、一層深刻なものになっていました。そして、家族を残したまま、志半ばで自死するに至りました。
いったい何人の被害者を出せばこの“事件”は終焉をむかえるのでしょうか。いったい何人が告訴されれば、外野から凶器を投げる人が減るのでしょうか。
本メルマガや他媒体でも書いたとおり、ジャニー喜多川氏が犯したことは犯罪であり、23年前に国会でも追求されています。今の法律の枠組みの中でも処罰することが可能です。当人が亡くなっていても、経営幹部たちの責任はいまだって十分に問えます。
ご遺族がコメントしたとおり、被害を受けた“子ども”は、心に深い傷を負ったまま生きることを余儀なくされます。子供の将来に大きな心理的影響を及ぼすのが、性加害も含む「児童虐待」です。
なのにメディアは「元ジャニタレント」がどーした、こーした、紅白どうだ、という報道にあけくれ、被害者への補償問題や、性加害、犯罪、処罰についてはほとんど報じません。
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「トラウマの再燃」で再び追いつめられる被害者
そもそも今回の喜多川氏の犯罪は、喜多川氏だけで行われていたのものなのでしょうか。誰が被害を知り、被害を訴える子供は本当にいなかったのか。誰が子供たちを黙らせていたのか。裁判まであったのに、管理者の誰が何をして、何をしなかったのか。裁判のとき「完全なでっち上げ」とコメントした喜多川氏の弁護士は、今、どう思っているのか。
そういう具体的な「悪の構造」を明らかにしないと、効果的な「再発防止策」はとれないはずです。誰も犯罪の「責任」を負わないままでは、被害者は怒りのぶつける場所もなく、「トラウマの再燃」で再び追いつめられます。その末路が悲しい選択です。
今回の痛ましい死について、旧ジャニーズ事務所は、どのような対応をとるのでしょうか。メディアももっと「問題の本質」に突っ込んで欲しいです。
みなさまのご意見、教えてください。
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