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長野で有名な「牛乳パン」がソウルフードになった胸熱エピソードを知っていますか?

あなたは「牛乳パン」を知っていますか? 長野のソウルフードとして有名ですが、大きな企業も売り出したことで全国的に有名になりましたよね。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者、佐藤きよあきさんが、なぜ、この牛乳パンが長野全体で広まったのかがよくわかる、開発者の思いについて語っています。

長野のソウルフード「牛乳パン」は、開発者がみんなに作り方を教えたことで広まった

「牛乳パン」をご存知でしょうか。

四角いふわふわな生地の間に、なめらかなバタークリームを挟んだものです。

ヤマザキやパスコといったメーカーからも販売されていますが、そのルーツは長野県にあります。

長野では、20店舗以上のパン屋さんで販売されている、地元のソウルフードでもあります。

誕生したのは、昭和30年頃の伊那市。現在は閉店してしまった「若増製パン」。

このパン屋さんに、ある日の早朝、ひとりの女性が現れます。

パンを買い求めに来たのですが、時間が早過ぎて、パンはまだ焼けていませんでした。

応対したパン職人は断ったのですが、「どんなパンでもいいので、売ってください」と、食い下がる女性。

何か事情があると察した職人は、前日パン粉用に焼いておいたパンに、手元にあったジャムを塗って差し出したところ、喜んで帰って行きました。

そして、次の日も。

今度は、ジャムがなかったので、製菓用のバタークリームを挟んで、渡しました。

バタークリームが美味しかったようで、さらに次の日もやって来ました。

この女性は、近くのダム建設現場で賄いの仕事をしている人で、そこで働く日雇いの人夫たちのために、買いに来ていたのです。

これを見ていたパン屋さんの社長が、「これは売れるぞ!」と確信し、「牛乳パン」と命名し、商品化しました。

パン生地とクリームの色が白かったことと、当時、牛乳は美味しく栄養価の高い高級品だったことから、その名を借りて、牛乳パンとしました。

発売当初は牛乳は入っていませんでしたが、牛乳のイメージでどんどん人気が出ました。

いまなら問題となるところですが、時代的にご愛嬌で済んでいたようです。

後に牛乳を使うようになりましたが。

しかし、牛乳パンが、このお店の名物として有名になっていったのではなく、長野のソウルフードになっていったのはなぜでしょうか。

人気商品が生まれれば、そのお店は有名になり、やがて老舗として知られるようになります。

「長野のあのお店には牛乳パンが……」となるところですが、いまは「長野県の牛乳パン」です。

それは、このお店の社長の意志なのです。

「こんなに美味しいものは、作り方をみんなに教えて、もっと広めるべきだ」。

そう考えた社長は、牛乳パンの講習会を開いたのです。

オリジナルの商品を生み出して、大きな儲けに繋げることは、商売人の醍醐味でもあり、やりがいでもあります。

しかし、地域の同業者みんなに教え、地域全体で繁栄していこうとするのも、商売人の心意気だとも言えます。

この牛乳パンは、乳白色のパッケージに、青色で描かれた、シャツに半ズボンの男の子のイラストが入っているものが多くあります。

このイラストは、「若増製パン」に倣って牛乳パンを作り始めた「かねまるパン店」が、最初に使ったものです。

現店主の幼少期の姿を母親がスケッチした絵で、ほのぼのとした優しいタッチが、人びとにウケたようです。

この絵もまた、商標登録などせずに、誰が使っても良いこととしました。

牛乳パンと言えば、この男の子のイラストが浮かぶほど、たくさんのお店で使っています。

パンもパッケージも、それぞれのお店でひと手間を加え、オリジナルの牛乳パンとなっています。

偶然生まれた牛乳パンが、長野県のソウルフードになるまでには、いろんな人の「みんなのために」という想いがあったことは間違いありません。

自分の儲けより、みんなの繁栄。

これが、地域おこしにも繋がっているのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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