巨人軍監督として不滅のV9を成し遂げ「野球の神様」とも称される川上哲治氏。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、川上さんへのインタビューからビジネスにも役立つリーダーシップ、成果をあげるための集団の作り方を紹介しています。
不滅のV9。巨人伝説の名将・川上哲治氏に聞く「勝つためには何が必要か」
巨人軍の監督としてリーグ優勝、日本シリーズ優勝各11回を数え、不滅のV9を成し遂げた伝説の名将・川上哲治氏。
本日は、『致知』1986年11月号に掲載された貴重なインタビュー記事の一部をご紹介いたします。
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──不滅のV9(日本シリーズ9連覇)を達成し、「野球の神様」あるいは「巨人軍の鬼」といわれたほど野球に徹してこられた川上さんですが、今日はその体験を通して、勝つためには何が必要かということを伺いたいと思います。
私は何をするにも、それが正しい道かどうかということを常に頭において行動してきたわけです。道に則って進むということが私の生き方であり、やり方です。
巨人軍の監督だった時には常に勝ち続けることが宿命づけられていたから、勝ちに徹することが私にとっては道に則って進むことでした。
だから、何が勝利への近道かを考え、勝つためにはこの方法しかないと思えば、誰がなんといおうと、それを実行してきましたね。
──「石橋を叩いても渡らない」とか「オーソドックスすぎて面白くない」とかいわれましたが。
それは外の人間が勝手に決めつけとっただけですよ。
私はいつもチームの戦力を計算しながら、この戦法の方が勝つ確率は高いだろうと考えて作戦を立てていったわけです。
──今でこそ「管理野球」は当然のようにいわれていますが、管理野球を最初に導入されたのは川上さんですね。
私はね、野球という勝負において、“勝ち”に徹したわけですよ。
だから個人よりもチームの勝利を優先させたことは事実ですが、当時のマスコミのいう「管理」はかなり批判的な意味でした。
しかし、私は自分の考えを選手に押しつけたこともないし、個性を殺したつもりもないですよ。
私が考える「管理」とは、一人一人の個性を十二分に発揮させた上で、集団の目標を達成することなんだ。
一人一人の個性が発揮されなければ、集団としての目標を達成することはできない。
そのためには、勝つことを自分の手柄にしようとか、自分の名声を上げようとすることが先にたつと駄目なんです。
ですから、自分を捨て切っていないと、本当の意味の管理などはできんのですよ。
──そういう意味で、勝つために自らを賭けた川上さんの足跡は、まさに“忍の一生”といえるのではないですか。
そうです。もう一面からみると、“やる気”の一生といってもいい。
一つ一つのことにのほほんとやっとるだけでは何もできない。
死ぬか生きるかという苦労を重ねて、きざにいえば死線を何回も超えていって初めて逞しい人間ができるんですよ。
その死線を超えるときに、忍というか、そういう強さが必要なんじゃないですか。
なにがなんでもやってのける、途中であきらめないという不退転の決意、そういうものが大事でしょう。
私は育ちが貧乏だっただけにね、やってのけないことにはしようがなかったわけですから、ハングリー精神というのは、子供のころからありました。それが支えにもなったわけです。
──ハングリー精神も、その裏にはまさに忍の心がありますね。
自分はもう駄目だと思って逃げてしまったりあとずさりしたら、それで堕落してしまうわけです。
大事なことは、それをどう受け止めるかという受け取り方、そしてそれをどう実行していくかということなんですからね。逃げちゃ終わりですよ。
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