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米国が仕掛けた「半導体」補助金競争。工場を建てて勝つのはどの国か?

半導体工場を設立するための補助金の額が思っている以上に多いということが世界で話題になっています。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、韓国をはじめ、世界各国の半導体補助金事情について紹介しています。

補助金あるところに半導体工場あり

三星電子が米政府から半導体工場設立補助金として60億ドル(約8兆ウォン)以上を受け取る見通しだ。三星電子は現在170億ドルを投資し、米テキサス州テイラー市に半導体ファウンドリー(委託生産)工場を建設している。

15日、三星の事情に詳しい財界関係者によると、米商務省は三星電子に米国半導体支援法(チップス法)による補助金として60億ドル以上を支給する計画だ。ブルームバーグもこの日、消息筋の話として「このニュースは数週間以内に発表されるだろう」と述べた。

当初、半導体業界ではサムソン電子の半導体支援金が多くても20億~30億ドル水準であると見ていた。400億ドルを投資してアリゾナに工場を建てているTSMCが50億ドル水準の補助金を受けるものと知られたためだ。

しかし、米政府との交渉過程で三星電子が追加投資の意思を示し、破格的な補助金が策定されたという。半導体業界のある関係者は「テイラー工場建設費用が原材料価格上昇などで大きく増えたという点、グローバル半導体業界で三星電子の地位、韓米両国関係なども交渉に影響を及ぼしたと理解している」と話した。

米政府が三星電子に支給する60億ドル(約8兆ウォン)以上の補助金は、当初の予想値の3倍に近い破格の金額だ。

半導体業界では米国が度量の大きい補助金を支給しながら三星電子の追加投資を引き出し、中国半導体の勢いを共に圧迫しようという信号を送ったものと解釈している。

KAIST電気・電子工学部のキム・ジョンホ教授は「三星電子は半導体ファウンドリー(委託生産)だけでなくメモリーとパッケージング(後工程)も可能なので、米国の立場ではTSMC依存度を低くし地政学的リスクを分散するために三星電子を活用するほかはない」とし「三星もエヌビディア、AMD、メタなど米国顧客を積極的に誘致しTSMCを追撃できる基盤を用意することになった」と話した。

米政府は2022年にチップス法を作り、半導体補助金と研究・開発費用などを含め計527億ドルを企業に支援することにした。このうち280億ドルを最先端半導体生産施設に補助金として支給する。これまで約600社が補助金を申請した。補助金がグローバル半導体企業を米国に集中させる確実な効果があるということだ。

自国中心の半導体供給網の構築を試みる日本、欧州、インドなども莫大な補助金を前面に出して企業を誘惑している。「補助金があるところに半導体工場がある」という話が出てくるほど、グローバル半導体供給網で補助金の役割が重要になったという評価が出ている。

米国が打ち上げた半導体補助金競争は世界的に広がっている。半導体産業の復活を夢見ている日本は、18兆ウォン規模の1次支援金に追加支援金まで掲げ、2030年までに国家半導体の売上を現在の3倍水準である15兆円まで引き上げるという目標だ。

日本はTSMCが熊本県にオープンした第1工場に工場建設費用の約40%に当たる4760億円を支援し、今年末に着工に入る第2工場にも7300億円を支給する。北海道に工場建設を始めた日本の半導体会社ラピダスにも5900億円を追加支援し、先端製品の2ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)半導体を直接生産する計画だ。

欧州連合(EU)は域内の半導体産業発展のためのEU半導体法に合意し、2030年までに政府と民間企業が共に62兆ウォンを投資することにした。これを通じて次世代半導体の世界市場シェアを10%から20%以上増やすということだ。企業に対する政府支援を原則的に禁止しているEUも、半導体分野だけは例外としている。

「眠る象」と呼ばれるインドも半導体補助金競争に飛び込んだ。米・中覇権戦争が激化し、グローバル企業が中国に代わる新しい生産地域の物色に乗り出すと、インドが大規模な補助金を前面に出してラブコールを送っているのだ。

インドは13兆ウォン規模の半導体補助金を掲げ、工場建設費用の50~70%を支援している。米マイクロンに続き、今月初めにインドのタタエレクトロニクスと台湾半導体ファウンドリーPSMCが一緒に推進する28ナノ半導体工場など3つの工場建設を一度に承認した。台湾も研究費の25%に対して法人税を免除するなど、自国史上最大規模の税制優遇を導入した。

昨年3月、韓国国会で可決されたKチップス法は、半導体のような国家戦略技術施設への投資に対する税額控除率を、大企業は8%から15%に、中小企業は16%から25%に高める法だ。直接補助金を支給できないので税金だけでも節約しようという趣旨だが、延長されるかどうかも不確実な状況だ。

直前3年間、平均投資額を超過する投資金額に対して最大10%を追加で税額控除する「臨時投資税額控除」も昨年末に満了した。半導体業界関係者は「半導体投資は誰が先に大規模投資をして進んだ技術を開発し製品を量産するかによって主導権が決定される」とし「莫大な海外各国の補助金をあきらめて韓国に投資する企業に対してはこれに相応するインセンティブが必要だ」と話した。

半導体補助金

世界主要国がグローバル半導体工場誘致のために掲げた補助金および税額控除などの大規模支援策。半導体が国家戦略産業として位置づけられ、各国が自国内の半導体生産能力を拡大するために施設投資の最大70%に当たる補助金を約束し、グローバル半導体企業を引き込んでいる。(朝鮮日報ベース)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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