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問題は岸田首相の能力や人格ではない。トランプ“返り咲き”で日米関係は悪化する可能性大

バイデン大統領の「自滅」や銃撃事件の思わぬ影響もあり、再選が有力視されるトランプ氏。前大統領の返り咲きが現実のものとなった場合、日米関係はどのように変化するのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「厳しくなるだろう」と予測。その理由を岸田首相とプーチン氏との関係性にフォーカスし解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプが勝利したら日米関係はどうなる?

トランプが勝利したら日米関係はどうなる?

全世界の裏RPE読者の皆様、こんにちは!北野です。

皆さんご存知だと思いますが、アメリカ大統領選、バイデン劣勢、トランプ優勢になっています。

バイデンさんは、6月28日のトランプとの討論会で大敗しました。「認知症懸念」が沸騰し、民主党内で「バイデン撤退工作」がはじまりました。しかし、バイデンさんは現時点で、撤退をかたくなに拒んでいます。

そして、印象的な「言い間違え」も続いています。ゼレンスキーのことを「プーチン」と言ったり、ハリス副大統領のことを「トランプ副大統領」と言ったり。「BBC NEWS JAPAN」7月12日。「バイデン氏、ゼレンスキー氏を「プーチン大統領」と紹介 米副大統領とトランプ前大統領も言い違い」。

アメリカ・ワシントンで開催されていた北大西洋条約機構(NATO)首脳会談が11日、3日間の日程を終え閉幕した。

ジョー・バイデン大統領は閉幕に際し、単独の記者会見に臨んだ。その中で、カマラ・ハリス米副大統領とドナルド・トランプ前大統領を言い間違える場面があった。

これに先立ち、NATO諸国などが「ウクライナ支援に関する共同宣言」にもとづく「ウクライナ・コンパクト」を発表した際には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を紹介するはずが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と言い間違え、直後に訂正した。

世界一の大国の大統領として、「本当にやっていけるのかな?」と心配になります。

一方のトランプさんは、暗殺未遂直後の態度が実に立派で、一躍「英雄」になりました。そして、トランプは、「神に選ばれた候補」など、神格化も進んでいるようです。「ロイター」7月16日付。「死免れたトランプ氏、「神に祝福された候補」と支持者 神格化に懸念も」。

トランプ前米大統領が13日の演説中に銃撃を受けながらも致命傷を免れたことについて、キリスト教右派・福音派の支持者らは同氏が「神から祝福された」候補との考えを強めており、選挙戦で宗教的な崇拝を奨励する動きが一段と強まっている。

ウィスコンシン州ミルウォーキーで15日開幕した共和党全国大会で話を聞いた州・地域を代表する代議員18人のうち16人が、トランプが死を免れたのは神のおかげとの考えを示した。

テキサス州の代議員であるレイ・マイヤーズさんは「神秘的なことが起きている。トランプ氏はあらゆる経験をし、批判を受け、今回、自らの血さえ流した。それでもなお健在だ。神の関わりがあったとしか説明できない」と話した。

トランプ氏自身も14日、自らの交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「考えられない事態をまさに神の力で回避した」と投稿した。

そんな感じで、現時点では、バイデン劣勢、トランプ優勢となっています。

トランプが勝ったら日米関係はどうなる?

さて、トランプさんが勝ったら、日米関係はどうなるのでしょうか?

ちなみに、バイデンさんが大統領に就任した時、日本では、「親中反日の大統領が誕生した!大変だ、大変だ!」と騒いでいました。一方私は当時、「バイデンさんは確かに親中反日だが、日米関係はトランプ時代よりむしろよくなる」と主張していました。当時の動画、たとえばこちらを確認してください。

「尖閣はアメリカが守る!」中国はもってあと3年?知られざるアメリカの大戦略とは?

現在まで、バイデンは日本に非常に優しく、日米関係はずっと良好です。それでしばらくすると、「北野さんの言う通りになりましたね!」と、たくさんメールをいただくようになりました。

では、今回トランプさんが返り咲いたら、日米関係はどうなるのでしょうか?私は、「厳しくなるだろう」と考えています。なぜでしょうか?安倍さんがいないからです。安倍さんがいないと、なぜ日米関係は悪くなるのでしょうか?

安倍さんは、トランプやプーチンと仲良しだったので、「猛獣使い」と呼ばれていました。岸田さんは「猛獣使いではない」から、日米関係は悪くなるのでしょうか?いえ、岸田さんの能力や人格は関係ありません。ポイントは、プーチンとの関係にあります。

安倍さんは2012年12月、総理に返り咲いた後、プーチンと仲よくしようと、がんばってきました。その言動は、「北方領土返還を実現したい」こと以上に、「ロシアを中国包囲網に引き入れることができれば、必勝じゃないか」という、リアリスト的大戦略に基づいていたのです。

安倍さんとプーチンは、仲がいい。トランプさんが大統領になったのは2017年です。とてもユニークなトランプさんは、安倍さん以外の西側諸国のリーダーとは、仲良くなれませんでした。トランプが仲良しだったのは、安倍さん、プーチン、金正恩です。

ところで、トランプは、なぜ安倍さんと仲良しだったのでしょうか?安倍さんが、トランプ勝利後真っ先に会いに来たから?ゴルフという共通の趣味があったから?中国という共通の敵があったから?どれも「その通り」だと思います。

しかし、私が考える、最大の理由は、「安倍さんとプーチンの仲が良かったから」です。安倍さんとプーチンが仲良しだったので、トランプも安倍さんと仲良くしたのです。

なぜ?皆さん気づいていないかもしれませんが、トランプの主張は、「プーチンに都合がいいことばかり」です。たとえば、トランプは、ウクライナ支援に消極的。これ、アメリカファースト的にいえば、「アメリカ国民のお金をウクライナにつかうのは無駄だ」ということでしょう。しかし、プーチンから見ると、「トランプありがとう」です。

また、トランプは、NATO加盟国が防衛費をさらに増やさなければ、守らないと発言し、世界を驚かせました。「ロイター」3月20日。「トランプ氏、NATO防衛せずと再表明 『公平な負担なければ』」。

トランプ前米大統領は、欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国が防衛費をさらに負担しない限り、米国はロシアによる将来の攻撃からNATO加盟国を防衛しないと改めて述べた。

トランプ氏は先月、サウスカロライナ州で開かれた選挙集会で、過去に会談したNATOの主要加盟国の首脳から、もし同国が拠出金を払わず、かつロシアから攻撃を受けた場合に、米国が防衛してくれるかとの質問をされ、「私はあなた(の国)を防衛しない。逆に、彼らに好きなようにするよう伝えるだろう。拠出金は払わなければならない」と回答した。

これ、「アメリカ・ファースト」的に考えると、「なぜアメリカが、金を払わない国を守る必要があるのか?」ということでしょう。しかし、トランプ発言でNATOが分断されるのを一番喜んでいるのは、プーチンでしょう。

二つ例を挙げましたが、トランプの言動は、基本的に「プーチンを喜ばすことばかり」です。

私は、二人の関係は、プーチン >>> トランプ だと見ています。なぜでしょうか?トランプの言動は、ほぼすべてプーチンを喜ばす内容になっている。その一方で、プーチンがトランプを喜ばせる何かをしたことはないからです。

しかし、トランプの一期目、米ロ関係はほとんど好転しませんでした。なぜでしょうか?

一期目、トランプは「アウトサイダー」と思われていました。共和党内でも、トランプがあまりにも親プーチンであることに反対する人が多かったのです。しかし、一期目、そして2020年の選挙でバイデンに敗れてから4年間で、トランプは「共和党主流派」になることに成功しました。だから、彼が返り咲いて、「ウクライナ支援を止める」「ロシアと和解する」といえば、そうなる可能性が高いのです。

ここまで、

そして、岸田さんとプーチンは、ウクライナ問題をめぐって「絶縁関係」にあります。ということは、岸田さんとトランプの関係も悪化する可能性が高いのです。つまり、「日米関係も現在より悪化する可能性が高い」となります。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年7月17日号より一部抜粋)

image by: lev radin / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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