トップ棋士として、そして子供将棋教室を運営しプロ棋士を育ててきた石田和雄さん。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、そんな彼が逆境の人生を乗り越え、運命を切り開く心について語っています。
将棋界の名伯楽が教える上達の要諦
長くトップ棋士として活躍すると共に、千葉県柏市で将棋センター・子供将棋教室を運営し、多くのプロ棋士を育ててきた将棋界の名伯楽・石田和雄さん、77歳。
現在に至る道のりは逆境の連続だったという石田さんに、人生の山坂の中から掴み取った人育ての要諦、自らの運命をひらいていく心の持ち方を語っていただきました。
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──将棋が強くなるためにどんな努力を重ねていかれましたか。
<石田>
最初の頃は、近くの本屋さんで将棋の本を夢中になって立ち読みして勉強しました。あと、『近代将棋』や『将棋世界』などの雑誌もよく読みましたし、当時はラジオ対局もやっていて放送を聴くのが楽しみでしたね。
とにかく将棋のことなら見るもの聞くものすべてが新鮮で、2か月ほどしたら兄たちに飛車と角、二枚ひいて勝てるくらい強くなったんです。
周りに相手がいなくなると、隣町の将棋道場まで行って大人に混じって対局したり、「あの町に強い人がいる」と聞けば、自転車でどこでもすっ飛んでいきました。
──ものすごい向学心ですね。
<石田>
そうしているうちに、「愛知棋友会」という同好会に参加するようになって、その月例会では中学2年生の時から5か月連続で優勝しました。
さらに、年一回開催される「全三河将棋大会」という100人以上集まる大会でもB級で3位入賞を果たすことができ、地元の愛知新聞に「怪童現る」と書かれました。将来はプロになりたいと思い始めたのはこの頃です。
自分の子供の頃の体験から思うのは、やはり貪むさぼるように学び、苦心して吸収したものだけが、本当の身になっていくということですね。
いまは何でもすぐに調べられるし、好きな時に好きなだけ教えてもらえる、便利過ぎる時代になりましたが、気をつけなければいけないのはそれだと上辺だけの知識になってしまうということです。
子供将棋教室でも、例えば詰将棋の宿題を出すと、よい詰将棋の本を買って暗記すれば強くなれるなんて簡単に考えちゃう。
でも私が伝えたいのは、詰将棋なりなんなりに、一所懸命、貪欲に取り組む過程、努力がその人を本当に強くするということなんです。このことは、いま指導者として特に気をつけているところですね。(『致知出版社の「人間力メルマガ」』2024年8月27日号より一部抜粋)
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