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斎藤元彦県知事「問題の本質」はパワハラにあらず。マスコミは「内部告発=公益通報制度」の不備こそ追及せよ

兵庫県知事選で2位と大差で競り勝った斎藤元彦知事ですが、マスコミではSNSの活用や既存メディアとネットの戦いなど、その選挙戦略ばかりが連日のように報じされています。そして、選挙前にはテレビのワイドショーで「パワハラ」や「おねだり」問題ばかりが面白おかしく取り上げられてきました。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、斎藤知事に関する一連の騒動について、問題の本質は「内部告発=公益通報」をされた側の知識のなさと法の曖昧さに尽きると語り、この問題について時系列で解説。本来マスコミが取り上げるべき法の不備を指摘しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ワイドショーが仕切る国と問題の本質

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

ニュースをワイドショーが仕切るニッポンと「問題の本質」

兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦氏は、約111万もの票を集め圧勝しました。多くのメディアは「SNS vs 既存メディア」だの、「インターネットによる選挙運動の勝利」だのといった側面から圧勝の要因を紐解いています。

しかし一方で、新聞社が行った出口調査で、76%もの有権者が「3年間の県政運営」を評価すると答えているので、シンプルに捉えれば兵庫県の人たちが「この3年間で変わった」と実感できるだけの成果をあげたことが、再選につながったのでしょう。どんなにSNSに力があろうとも評価されなければ、これほどの圧勝はなかったはずです。

そもそもテレビは問題の本質を掘り下げることより、数字が取れそうな問題に迫るメディアです。日本人のニュースソースはワイドショーでは?と思えるくらい
ワイドショーだらけなのも日本独特です。かつては政治家と喧嘩を厭わない報道番組もありましたが、いつからか無難な報道に徹するようにもなってしまいました。

いずれせよ、メディアの報道はパワハラに偏りすぎていたのはまぎれもない事実です。問題の本質は「内部告発=公益通報」をされた側の知識のなさと、法の曖昧さに尽きるといっても過言ではないのに、この問題を報じ続けることも、取材することもほとんどありませんでした。

「内部告発=公益通報」は私たちの権利でもある、極めて大切な問題なので時系列で振り返ります。

ことの始まりは3月12日に、元県民局長だった男性職員が「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為について」と題する告発文を一部報道機関に送付し、20日にその事実を知った斎藤知事が「犯人探し」を県幹部らとはじめたことです。

翌日には「元幹部職員の関与の可能性」が浮上し、その後、元幹部職員の公用メールから文書が送られていたことを突き止めます。ここまでで終われば、まだ救いはありました。

ところが、県側は元幹部職員を6回にもわたって聴取を行い、3月25日には元幹部職員のパソコンを押収したのです。パソコンには告発文のデータが残されており、県側は27日、元幹部の定年退職(3月末予定)を取り消し、役職を解任します。

4月4日に元幹部職員は「公益通報制度」を利用して県の窓口に通報。担当部署が手続きを開始しました。そして、7月、元幹部職員が亡くなるという、最悪の事態に発展しました。

なぜ、最初から「公益通報制度」を使わなかったのか?という声もありますが、これはごく自然なことです。問題が表に出ないまま、握りつぶされてしまうリスクが多分にあるからです。だからこそ「内部告発」という手段に出るしかないのです。

奇しくも今年2月、「組織の不正をストップ! 従業員と企業を守る『内部通報制度』を活用しよう」という見出しの記事が、政府広報オンラインに掲載されました。

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記事で一貫して主張していたのは「あなた(=通報者)を守る法律があるから大丈夫!あなたが不利な扱いを受けないように、ちゃんと国が決めてあるから安心して通報してね!」という、従業員や職員たちへの呼びかけでした。

しかし、「勇気を出して声をあげた通報者」は守ってもらえなかった。

内部通報した社員を守るために2006年に施行された「公益通報者保護法」の第3~5条には、内部告発を理由とした解雇、派遣労働契約の解除、その他の減給、降格といった不利な扱いを禁止すると書かれていますが、肝心要の罰則規定が明記されていません。

どんなに国が「あなた(=通報者)を守る法律があるから大丈夫!」と豪語したところで、「法の抜け穴」をかいくぐるのは可能です。「内部通報者に冷淡な国」と言っても過言ではないほど“その穴”は大きいのです。

今回の問題に対し、斎藤知事は「県の対応は適切かつ法的にも問題はなかった」と繰り返していますが、百条委員会とは別に、兵庫県議と弁護士で構成する第三者機関できちんと検証し、通報者を守るためにはどうすればいいのか?という点まで掘り下げて欲しいです。

みなさんのご意見も、お聞かせください。

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image by: さいとう元彦公式X

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