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支援したくとも生活に余裕なし。長引く物価高騰で寄付が激減、苦しい状況が続く「子ども食堂」の現実

近年全国で増え続けている、諸事情により満足に食事を摂ることが難しい子どもたちを支援する子ども食堂。しかしその運営に大きな役割を果たしているフードバンクへの寄付が激減している事実をご存知でしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、子ども食堂の現状と貧困状態にある世帯の現実を紹介。さらに貧困問題の根にある「非正規雇用」のあり方を議論しない日本社会に疑問の目を向けています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:Giving December と日本の未来

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

フードバンクへの食料品寄付が激減。1万カ所を超えた子ども食堂を取り巻く環境

コロナ禍で注目を集めた「子ども食堂」が、全国で少なくとも1万866カ所となり、18年度の調査開始以降、初めて1万カ所を突破したことがわかりました。

私の周りでも「子ども食堂」を手伝っている人が結構いらっしゃいます。とてもとても温かい、愛を感じる素敵な空間であり、時間の共有です。

「子どもの貧困率16.3%」という衝撃的な数字が報じられてから、10年が経ちます。その間、NPOを中心とした支援活動の増加や、子どもへの支援策が講じられると共に、子どものいる女性が子育てをしながら働ける環境になり、子どもの貧困率は11.5%に低下しました。

しかし、一方、ひとり親世帯で、貧困ラインよりもさらに少ない所得で暮らす、深刻な貧困状態にある世帯は増加。新型コロナが追い打ちとなり、ますます厳しい生活を強いられ、いまだに状況が改善していないのです。

子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」が、23年末に実施したアンケート調査では、6割以上が厳しい生活から抜け出せず、約4割が健康問題を抱えながらも、3割超が受診していないと回答しています。理由のトップは「医療費負担が大きい」(60.9%)で、「病院に行く時間がない」(51.4%)が続いていました。

朝食を「毎日食べる」小学生は6割、中学生は5割。小学生~高校生の5割が「何でもないのにイライラする」とし、日常的に厳しい精神状態に置かれていて「何となく大声を出したい」39.2%、「学校に行く気がしない」38.7%、「孤独を感じることがある」34.6%、さらには、「消えてしまいたい」と答えた子どもが17.8%に登りました。

こういった現実が続いているだけに、子ども食堂の増加は「世の中捨てたもんじゃない」と思わせくれます。

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「日本には格差はない」と言い切る識者の事実誤認

ところが、各地のフードバンクへの食料品の寄付が激減し、6割以上のフードバンクで苦しい状況が続いているのです。

理由は、長引く物価高騰の影響と配送コストの増加です。個人で支援をしたくても生活に余裕がない。企業も寄付はしたいけど寄付できる食品の量を減らさないと厳しいそうです。

個人の金融資産が過去最高の2,199兆円に達したと言われる日本で、ご飯を食べられない子どもたちがいる。支援をしたくても、自分の生活を守るので精一杯の人たちがいる。この現実をどう受け止めればいいのでしょうか。

いまだに「日本には格差はない」と言い切る識者がいますが、格差は確実に存在し、持てるものと持てないものとの隔たりはどんどんと広がっています。

これから学校は冬休みですから、給食がなくなります。時給で働く人たちは年末年始で手取りが減ります。さらに、今年は寒いので暖房の費用もかさみます。

子どもの貧困は親の貧困です。非正規を対象としたインターネット調査では、72.5%が「今年1月から賃金が上がっていない」と回答しています。子は宝と誰もいうのに、なぜか非正規の賃金はあがらないのです。

なぜ、日本は親の就労環境、すなわち「非正規雇用」のあり方を徹底的に議論しないのか?なぜ、最低賃金を世界平均並みにできないのか?

103万の壁の議論もいいですが、問題の根っこの議論もやっていただきたいです。

そして、もし、興味がありましたら、さまざまな寄付方法がありますし、ググれば出てきます。私も微力ながら、「できることをできるときに」と続けています。

みなさんのご意見も、お聞かせください。

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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