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真偽不明な選挙情報とSNS拡散、大炎上。フェイクニュース時代にメディアと有権者が果たすべき役割

昨年は世界各地で重要な選挙が相次ぎましたが、そこで必ずと言って出てくるのがSNS上に流れる真偽不明な選挙情報。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』ではジャーナリストの引地達也さんが、報道機関の責任とともに、市民一人ひとりにも問われる情報リテラシーの現在地と今後の課題について問題提起しています。

真意不明の選挙情報が飛び交うSNSに対峙する指針

選挙の年と言われた2024年。

米国とロシアの大統領選挙で選ばれたリーダーが世界を揺さぶり続け、最大の民主主義国家、インドの総選挙でも現職が再任され長期政権の道を突き進む。

日本では東京都知事選、名古屋市長選と兵庫県知事選の3つの地方選挙が、選挙活動に関する転換点と言われた。

これら世界的規模から足元の選挙まで、昨年の選挙が私たちへの共通の課題として突き付けたのが、選挙とSNS情報の在り方である。

候補者に纏わる真偽不明な情報やディープフェイク、デマや誹謗中傷が飛び交う中で、有権者は正確な情報をもとに投票行動が出来るのだろうか、という問いである。

これは民主主義の危機とも評され、同時に言論機関の機能低下も指摘される。

今夏の参議院選挙を前に、日本経済新聞は、新しい選挙報道に関する指針を発表し、SNSの真偽不明な情報に対応する姿勢を鮮明にした。

日経新聞は7月1日の紙面で「SNSが選挙に及ぼす力には長所と短所があります。個人が手軽に意見を表明し、世論を喚起できる点は間違いなく長所でしょう。

一方で真偽が不明な情報が拡散し、それを判断材料に選挙結果が左右される場合は、民主主義が脅かされます」とし、真偽不明な情報が投票行動を決定してしまうことを民主主義への脅威とみなす。

自らの反省として、兵庫県知事選では、現在も県政の混乱が続いていることを念頭に、「報道機関」が「十分な判断材料を提供しなかったのでは」との指摘が寄せられたことを紹介した。

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「提供したか、しなかった」のかを示していないのが残念ではあるが、その上で「私たちは事実を取材して確認し、伝えることが本分」であり、選挙の報道でも変わらないことを宣言し、5つの指針を明示した。

指針は「選挙期間中でも報道の判断基準に照らす」

「『量』ではなく『質』の公正を担保する」

「公正を害する行為には批判的な報道をする」

「真意不明情報や偽情報が選挙の公正を害する恐れがあれば積極的な取材・報道を心がける」等であり、明らかにSNSの情報に対峙する姿勢は、SNS情報の有益性よりも有害化した情報に喫緊の対応が迫られたともいえる。

NHKの調査でも選挙に向けてSNS情報が与えるのは「良い影響」が22%、「悪い影響」が37%、「影響ない」が38%だった。

社会全体もその「悪い影響」を認識しているようだ。SNSの真意不明な情報、特に悪意ある情報を排除していくには、報道機関の役割でもあるが、有権者である市民とともに考え、活動していくのも必要かもしれない。

報道機関が広く市民に向けフォーラムなどで対応する姿勢を共有することも期待したい。

昨年のインドの総選挙では、インドの一般メディアは公正さよりも、ストーリーとして読者に受け入れられる内容や表現が優先された。

「インド総選挙報道に見るメディア倫理の特徴 世界最大の選挙の伝わり方と日本の選挙報道を比較して」(日本メディア学会春季大会)で私が指摘したのは、公正さとは何かという問題で、インドと比較して日本では公正・中立を謳いながらも、実際に完全な公正・中立にはなっておらず、選挙報道の新たな指針が求められるという考えを示した。

真実から離れた情報の拡散を、報道機関が最も重要だとする真実性で打ち消そうとの姿勢は理解できるが、デモの拡散のスピードに真実は追いつかないであろう。

報道機関がつかんだ小さな真実を、市民と共有しながら小さなつながりを大事にしていくことから始めるのがよいのかもしれない。

日経新聞のガイドラインに大きな関心を寄せながら、私も1人の有権者として真意不明な情報に左右されないための行動を心がけたいと思う。

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image by: Rokas Tenys / Shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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