クリスマスのメロディーや歌声は、ただ季節を告げるだけでなく、「今、この時間を誰かと共有している」という実感を、私たちの心にそっと届けてくれます。メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんは、今年のクリスマスも音楽とともに平和を願いたいと語ります。
クリスマスは音楽とともに平和を願う
支援が必要な方への学びを提供する中で、移動に制限がある重症心身障がい者が受講するプログラムは、面談する際でもオンラインで講義する際にも「今」を一緒に過ごしていることを共有することから始まる。
12月は、年末の雰囲気を感じることが実生活を学ぶことにもつながっている、と考えているが、特にクリスマスは社会の雰囲気を言葉にし、歌や演奏で彩ることができれば、自分が社会の一部で存在していることを実感する瞬間にもなる。
こんな考えで、12月はあちらこちらでクリスマスと音楽を組み合わせた講義や公開講座などを行っているが、クリスマスを伴うメロディーやフレーズは、多くの人に笑顔をもたらし、何よりも「今」を実感できる響きがある。
歌う、踊る、笑う─。
直接触れ合うのも楽しいし、オンラインでそんな表情に出会うのも嬉しい。
講義をする私が、受講者から幸せをいただいている、そんなクリスマスに感謝したい。
東京国分寺市の本多公民館が主催する障がい者の学びの機会である「くぬぎ学級」は1976年からの歴史がある。
受講者は毎月、同公民館に集まって活動をするのを楽しみのようで、ここ数年は「みんなの大学校」と共催で行う「クリスマス音楽会」が12月のイベントだ。
今月も受講者が準備した大きなクリスマスツリーを傍らに、ピアノコーラスグループ、サームの3人が歌とピアノで交流した。
毎年、実施を積み重ねは、3人のメーバーと共に今年も楽しめる安心感もあるようで、演者との対話も滑らか。
クリスマスを楽しむ雰囲気が毎回盛り上がっているように感じる。
一方でオンライン講義「音楽でつながろう」では、歌手の奈月れいさんとギタリストの河野彰さんが、「ホワイトクリスマス」「きよしこの夜」を熱演したが、この講義も今年5年目であり、参加者もサンタクロースの装いで参加するなど、楽しみ方も熟知している。
この記事の著者・引地達也さんのメルマガ
クリスマスの音楽が人を惹きつけるのは、イエス・キリストの誕生というストーリーが、身近な私たちの物語へとつながっているからで、これは新国立劇場バレエ団の「くるみ割り人形」を12月21日に観劇したことで確信することになった。
「新国立劇場の冬の風物詩として、開場以来バージョンを変えながら愛されてきた」(同劇団ホームページ)題目は、今回の2025年年末から2026年始のシーズンで、英国の振付家ウィル・タケットによるオリジナル版が披露された。
舞台はクリスマスのパーティーでにぎわう家や街の様子から始まり、夢の中で旅をする展開は未知の世界との出会いの連続。
それが華麗な踊りで表現され、時には荘厳、時にはコミカルな演奏に心つかまれる。
クリスマスがもたらす平和はそこはかとなく、美しい。
観客の私は、その舞台に「今」を共有したことを感じ入る。
荘厳で華やかなクリスマスは私の日常に存在するはずだ、と。
それは悪いことではない。
みんなの大学校のクリスマスに際した「音楽でつながろう」では、河野彰さんのギターでジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」を演奏した。
題目は「ハッピー」だが、この曲は、幸せなクリスマスの風景から、それを共有できない世界に目を向け、有名なフレーズ「WAR IS OVER」に行き着くことになる。
「とても幸せなクリスマス 黒でも白でも 黄でも赤でも 止めよう 全ての争いを 争いは終わる もし君が望むなら 争いは終わる 今この時に」。
幸せなクリスマスはすなわち、人への幸せを祈ることにもつながる。
それが「今」を生きるということなのだろう。
今年も支援が必要な方々と、一緒に「祈れた」のが何よりもうれしい。メリークリスマス。
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