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「習近平拘束」は可能か?米国がベネズエラ侵攻で見せた“驚愕の軍事行動力”と中国の“抜かりない対抗策”

年明け早々に世界を震撼させた、トランプ大統領によるベネズエラへの軍事侵攻。その背景を巡っては、各国各方面でさまざまな見方が交錯しています。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、米軍の電撃的な作戦遂行により浮かび上がった軍事技術と、恐るべき情報収集能力について解説。さらにトランプ氏が意識する中国軍の実像と、米中軍事バランスの現在地について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:米軍のベネズエラ攻撃の裏で垣間見られた軍事技術と規律をめぐる米中の駆け引き

トランプ「ベネズエラ攻撃」に世界が驚愕。中国はアメリカとどう対峙するのか

年が明けて間もなく、米特殊部隊がベネズエラを強襲した。同国のニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束し、連れ去るための軍事作戦だった。世界に衝撃を与えたニュースだった。

直後からトランプ政権の目的は「中国やロシアに対する警告」だとか、逆に「中国に台湾進攻の口実を与えてしまう」といった懸念の声が入り乱れ、議論も百出した。

一方で「ベネズエラを守っていた防空システムは中国製で、今回の作戦でまったく役に立たなかった。中国は困っている」といった軍事面での評価も話題となった。

事実、ベネズエラが導入したレーダーは中国製で、尖端防空ミサイルとしてロシア製S300が配備されていた。

だが、仮に中国のレーダー・システムに大きな欠陥があったとして、それをわざわざ中国側に教えるような軍事作戦を米軍が行う理由は見当たらない。

それ以前に、レーダーを稼働させる電源が完全に落ちていたことが見落とされているが、これは中央情報局(CIA)によって防空システムに供給される電源のルートが正確に特定されていたためだ。

つまりヒューミントの力に加えて、ピンポイントで電源と防空システムを破壊する精度の高い攻撃が連携したことによる作戦の成功だったのだ。

そもそもマドゥロ大統領の側近もアメリカと裏で通じていたというから、アメリカのヒューミントの力は驚異的だ。

米『ニューズ・ウィーク 日本語版』の2026年1月18日の記事で、<トランプ米政権当局者らはベネズエラのマドゥロ大統領を捕まえる数カ月前から同国の治安機関を統括するカベジョ内務・法務相と協議していた>とその内幕を報じている。

ディオスダド・カベジョの内通疑惑は、<カベジョ氏はトランプ政権がマドゥロ氏拘束の根拠とした麻薬密売の起訴状に名前が挙がっているが、今回の作戦では拘束されなかった>ことで深まったという。

また、この作戦で注目を集めたのは、マドゥロ夫妻拘束の過程で米軍が使用したとされる新兵器だ。

直後から、大統領を守っていた兵士たちが「一瞬、まったく身動きが取れなくなった」「鼻血が大量に出た」といった体の異常を訴えていたからだ。

状況から判断して使われたのはソニック・ウェポン(音響兵器)ではないかという観測が流れていた。

この疑惑を確信に変えたのが、米『NDTV』(1月22日)の報道だ。ドナルド・トランプ大統領自ら、秘密兵器を使用した事実を認めたのだ。

タイトルは、「トランプ氏、ベネズエラ襲撃で米軍が『驚異的な』音波兵器を使用と示唆」だ。

ウェブ記事によれば、兵器が使用された現場の目撃者は<何か発射されるのを目撃したが、正確には説明できないものの、非常に強烈な音波のような感覚だったと述べた>という。

また、同時に<「突然、頭が内側から爆発するような感覚に襲われた」(中略)複数の兵士が鼻血を流し、血を吐く者まで現れ、多くの兵士が倒れて立ち上がれなくなったと証言した>という。

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ヒューミントの力を恐れスパイ摘発を徹底してきた中国

だが、これで思い出すのは、かつてキューバで勤務していたアメリカの外交官21人が突然強い耳鳴りや激しい頭痛に襲われたことで浮上した「音響兵器」による攻撃疑惑だ。

当時「犯人」と疑われたのは、ロシアや中国が秘密裏に開発したソニック・ウェポンだった。つまり、そうした兵器の存在はむしろロシアや中国が積極的に活用しているはずだと考えられてきたのだ。

結局、疑惑が証明されることはなく、現在はむしろ不確かな情報だったと認識されているが、今度は逆に米軍が指向性を備えた武器として登場させたのだ。

国際政治という視点に立てば、乱暴な秩序の破壊でしかないベネズエラへの軍事力行使だが、米軍の手際の良さに驚かされた国は少なくなかったはずだ。

もちろん中国もそのうちの一つと指摘されている。

だが、私はそう単純な話ではないとも考えている。

というのもヒューミントの力を恐れているからこそ、中国はここ数年徹底してスパイ摘発に力を入れてきたのであって、しかも大きな成果を上げてきた。

軍内部の規律の乱れを徹底して引き締めるための取り組みもその一つだが、相変わらず隙はない。

象徴的なニュースは1月25日の張又侠上将の身柄拘束だ。制服組のトップとされる中央軍事委員会副主席の張又侠が規律違反で取り調べを受けているとの国防部報道官の発表は、習近平政権下で進められる規律違反の取り締まりに聖域がないことを改めて社会に知らしめたことになる。

昨年も多くの将官が規律違反で失脚していったが、それでもまだ取り締まりの手綱は緩められていないのだ。

米中の軍事力の比較では、しばしば中国軍の実戦不足が指摘されてきた。しかし、その評価も変わりつつある。

決定的だったのは昨年のインドとパキスタンの衝突だった。インド側はフランスのラファール戦闘機とロシアのミグ戦闘機。対するパキスタン側は中国製J‐10戦闘機と中国とパキスタンが共同開発した戦闘機JF‐17サンダーという戦いだったが、結果はインド側が5機の戦闘機を撃墜され(パキスタン側の発表)大きな損害を出した。

パキスタンが空中戦で圧勝した背景にはシステムの支援も要因とされたが、この戦闘以降、J‐10戦闘機とJF‐17サンダーへの注文が世界各国から殺したというから興味深い。

少なくとも中国の戦闘機を「劣化コピー」「ハリボテ」と揶揄する声は、抑え込んだのではないだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年1月25日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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