トランプ米大統領が突如持ち出したグリーンランド領有をめぐる発言は、欧州諸国との緊張を一気に高めました。しかしその後、関税措置の撤回とNATOとの「枠組み合意」が示されたことで、市場と国際社会はひとまず落ち着きを取り戻している状況です。メルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』の著者・大澤裕さんは今回、ニューヨーク・タイムズの記事を抜粋し、トランプ流交渉術が国際秩序に与える影響について読み解いています。
グリーンランドとトランプ大統領の交渉
トランプ米大統領、グリーンランド領有に反対する欧州諸国に対して課すと表明していた関税措置を撤回すると表明しました。
ニューヨーク証券市場は反騰しました。
トランプ氏は、スイス・ダボスでNATOのルッテ事務総長と行った会談後、グリーンランドの将来についてNATOと大枠の合意に達したとSNSに投稿したのです。
「この理解に基づき、2月1日に発効予定だった関税は発動しない」と述べました。
しかし合意内容の詳細は明らかにしていません。
これについて、ニューヨークタイムズの1月21日の記事をみましょう。
記事抜粋
トランプ大統領は水曜日、グリーンランドの将来をめぐるNATOとの枠組み合意に達したと発表しました。
トランプ大統領はNATO のルッテ事務総長と「グリーンランド、そして実際には北極圏全体に関する将来の合意の枠組みを構築した」と発表しました。
「率直に言って我々が圧倒的な強さと武力を行使する決断をしない限り、おそらく何も得られないだろう」とトランプ氏は述べました。
「しかし私はそうはしない。これがおそらく最大のメッセージだ。人々は私が武力行使すると思っていたが、私は武力を使う必要もないし、使いたくもない。使うつもりもない。米国が求めているのは、グリーンランドという土地だけだ」
一部の欧州指導者たちは、軍隊を派遣しないという約束に反応し、妥協点を見出せるかもしれないとの希望を表明しました。
多くの欧州の指導者は、グリーンランドの所有権を米国に譲渡することは容認できないと主張しつつも、米国の存在感を拡大する取り決めには前向きだと述べています。
解説
最初は「武力を使ってもグリーンランドを米国が領有する」「反対する国には関税をかける」等、トランプ大統領に理解をもつ人々も唖然とする発言でした。
しかしNATO事務総長と枠組みに合意したので関税を撤回したというのです。
それではどのような合意だったのでしょう?
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続いて記事を見ましょう。
記事抜粋
会合に出席した関係者の一人は、この構想をキプロスにある英国基地に例えました。
別の関係者も、グリーンランド案がキプロスの英国主権基地をモデルとしていることを確認しました。
解説
キプロスには、英国が主権を保持する二つの軍事基地が存在します。
これは駐留地ではなく英国領土として扱われる「主権基地地域」です。
1960年にキプロスが独立する際、旧宗主国であるイギリスが独立条件として基地の主権維持を認めさせた結果です。国際的にも例外的な存在です。
基地は米英同盟やNATOの作戦とも連動しています。英国が現在もグローバルな軍事行動能力を維持していることを示す象徴的拠点です。
おそらく、グリーンランドの一部に米国領土として扱われる「主権基地地域」が作られるでしょう。
それは初めからトランプ大統領が意図していたことでしょう。
「武力をつかってもグリーンランドを領有する」という発言で、関係者を驚かせた後で、本当の要求(グリーンランドに米国の基地を置く)を通すのです。
彼のよく使う交渉戦術「圧迫して妥協」です。
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