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毎年老いる私、いつも元気な庭の小鳥。ホンマでっか池田教授が78歳で痛感する「老化」の残酷な不条理

スタンフォード大学の研究によると、人は34歳、60歳、78歳の3つの境目で急激に老けるといいます。昨年78歳を迎えた著者は、体力・気力の衰えを実感しながらも、庭に訪れる小鳥たちの元気な姿に羨望を感じる日々を過ごしています。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、生物学者でCX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田教授さんが、「老い」への率直な思いと小鳥たちの生態をつづっています。

私の寿命と小鳥の寿命

スタンフォード大学の研究によると、人は34歳、60歳、78歳の3つの境目で急激に老けるということだ。確かに私は去年の7月に78歳になり、それまでに比べて体力と気力がかなり減衰したような気がする。数年前から、脊柱管狭窄症を患っていて、足の裏に違和感があり、脚が重く、痛みも少しあるけれども受忍の限度内だし、間欠性跛行もまだ出ていないので、手術も見送り、薬も飲まないで、騙し騙し暮らしている。それ以外にこれと言って具合が悪いところはない。客観的に考えれば、まあまあ健康のように思えるのだけれども、主観的にはずいぶん老けた。

ルーティンだけが私の救いになる

 元来何をするのも面倒な質なのだが、最近特に、今の状態を変えて別のことをするのが面倒になった。朝なかなか布団から抜け出せないのは、冬だったら寒いからとか、あるいは昨晩寝るのが遅かったからとか、昨日は外出したので疲れたからとか、いろいろ言い訳はあるのだけれども、私に限って言えば、布団にくるまっているという状態から、立ち上がるという状態に変化するのが面倒なのだ。

意を決して起きて、靴下を履いてしまえば、また布団の中に入ろうという気は起きない。夜は、焼酎のお湯割りをちびちび飲みながら、午前1時くらいまで起きているけれども、これも飲むのをやめて寝るという動作に移行するのが面倒なので、つい飲み続けることになる。その間に、断続的にバランスボードという器具に乗って脚の筋肉を鍛えて(鍛えるふりをして)いるのだけれども、これはいつもルーティンでやっているのであまり面倒だと感じないのが不思議だ。

朝起きるのが遅いので、朝飯は自分で用意して、風呂も女房の後で入るので、毎日の風呂洗いは私の仕事だが、これもルーティンなので苦にならない。ルーティンと言えば、月2回「池田清彦のやせ我慢日記」というメルマガ(この原稿)と、週3回「池田清彦の森羅万象」という音声プラットフォーム(Voicy)を配信しているが、これは結構楽しみでやっている。してみると、朝起きるのと夜寝るのがイヤなのは、これらはルーティンではないのだな、きっと。

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庭の小鳥たちがうらやましい

冬の間は、朝起きて、庭のコクサギの枝に吊るしてある鳥の餌台を見て、ヒマワリの種を補充し、水飲み場の水を新しいのに代えるのも私の仕事である。気が向くと、バナナを輪切りにして西洋シャクナゲやカルミアの枝に刺したり、安物のジュースを半分くらいに水で薄めて、ガラスの器に入れたりしている。

ヒマワリの種はシジュウカラやヤマガラの餌で、バナナやジュースはメジロやヒヨドリの餌である。最近はキジバトが来て餌をねだるので、「野鳥のまき餌」というのを買ってきて、時々庭に撒いている。トウモロコシやオーツ、アワ、キビなどが混入しているもので、見ているとキジバトは選択的にトウモロコシを食べる。他の雑穀に比べ大きいので、効率がいいのだろう。小鳥たちの元気な姿を見るのは楽しいが、あまり元気でない我が身を振り返って、元気で羨ましいね、と思ってしまう。

山梨大学に勤務していた頃の旧宅は、今の自宅から急坂を登ったところにあった。朝、通勤のために小走りで坂を下りていく途中で、白い子犬を連れたおばあさんによく遭った。おばあさんは私を見ると、「若い人はいいね、元気で」と声をかけてくれた。私は「おはようございます」と返事をしたが、「別に元気じゃねーよ。急がないと電車に乗り遅れちゃうんだよ」と心の中で思っていた。でも、今から思えば十分元気だったのだ。今では、たとえ電車に乗り遅れそうでも、急坂を走って降りたりしない。そんなことをすると途中で加速度がついて、弱った脚がついて行けずに転倒するに決まっている。

75歳を超えたら骨折が最大の敵

75歳過ぎて、一番怖いのはがんになることではなく、脚の骨折なのだ。私の友人の何人かは階段から落ちて脚を骨折して、入院→寝たきり→誤嚥性肺炎という経過をたどり、亡くなられた。友人の南伸坊は2025年の初夏に大腿骨を骨折した。先日、東京都写真博物館で開かれている、養老孟司&小檜山賢二の「虫展」の内覧会でお会いしたら、普通に歩いていたのでびっくりした。手術した次の日からリハビリで歩かされて、すっかり治ったという。この人はかつて肺がんになって治療もせずに自然治癒した人だ。南伸坊は不死身なのか。

元気な時にはほとんど気が付かなかったのだが、自分があまり元気じゃなくなってくると、街の中で杖を突いたり、車いすに乗っていたりする人が意外に多いのに気が付くようになる。杖を突いて大儀そうに歩いている人を見ると、声には出さなくとも「大変ですね」と同情すると同時に「何とか楽しいことを見つけて生きていってください」と応援したくなる。まあ、明日は我が身だけれどね。

反対に元気そうにすたこら歩いている若人を見かけると、子犬を連れたおばあさんと同じことを言いたくなる。でも表面的にはそう見えるだけで、そのうちの何人かは重い病を抱えて辛うじて生きているのかも知れない。人は自分の病や悩みについては敏感だが、マスとしての他人は、みんな元気なように見えるのだ。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋)

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