中国とロシア、そして北朝鮮の結びつきが強まる中で、大きく揺れ動く東アジア情勢。各国首脳による外交が活発化する一方で、地域の安全保障環境は複雑さを増すばかりというのが現状でもあります。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』ではジャーナリストの引地達也さんが、習近平国家主席の訪朝に関する憶測報道を入口として、中朝関係や朝鮮半島を巡るパワーバランスの変化を分析。その上で、独裁体制と向き合わなければならない東アジア外交の難しさについて考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:東アジアで首脳外交が動かす世界─独裁者と向き合う困難
「北朝鮮は有効的な隣国」。習近平の訪朝がさらに変える東アジアの政治構造
中国の習近平国会主席が近く北朝鮮を訪問し、金正恩朝鮮労働党総書記と首脳会談を行うとの憶測が報道されている。
韓国からの報道では、中国の王毅外相や習主席周辺の担当者が最近平壌を訪問していると指摘し、金総書記が昨年9月に訪中した返礼との位置づけとも伝わってくる。
実現すれば、習主席の訪朝は7年ぶり。
米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領と立て続けに首脳会談をこなし、訪朝に臨む姿勢は地域の盟主としての存在感を誇示するかのようで、現在の世界が首脳外交というパワーゲームによって物事が決定していく現実が示されることになる。
昨年9月に北京の天安門広場で開かれた抗日戦争勝利80年記念式典で、習国家主席、金総書記、プーチン大統領の3者が並ぶ光景は、訪朝というイベントのプロローグとして、新たな物語は3者が作り出している、と確認させられるかもしれない。
中国外務省の報道官の「中国と朝鮮民主主義人民共和国は友好的な社会主義の隣国だ」とのコメントは、日本との立場の違いを鮮明にしているが、もはや多国間の枠組みで機能しない東アジアのパワーバランスはウクライナ戦争やイラン戦争等のいくつかの戦争によって変化しており、中朝首脳会談はその構図をより一層、強固なものと印象付けることになるだろう。
ウクライナ戦争の兵士不足を補うように軍を派遣した北朝鮮はロシアと2024年に「包括的戦略パートナーシップ条約」との「血の同盟」を結び、昨年9月の北京での首脳会談で金総書記は「これからも国家主権と領土保全、安全利益を守護するためのロシア政府と軍隊、人民の闘争を全面的に支持する」とし、「それを兄弟の義務と見なし、変わりなく忠実に朝ロ(ロ朝)間の条約を履行していく」(聯合ニュース報道)と強い連帯を確認した。
その一方で、北朝鮮にとって中国は条約同盟国かつ最大の経済支援国である。そして朝鮮戦争休戦協定の同盟国である。
核の問題を理由に米国はイランを攻撃したが、北朝鮮の核開発は中国にとっても核心的な問題である。
開発を公言する北朝鮮に中国はどのように対処するのだろうか。
前回の米中首脳会談では北朝鮮の核問題の取り扱いについて、中国側からの発言が伝えられないことで様々な憶測を呼んでいる。
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「北朝鮮拉致問題」を抱えた日本外交の厳しい局面
さらに朝鮮半島の安全保障を考える上で気になるのは7月27日という朝鮮戦争休戦記念日だ。
これは1953年7月27日に署名された朝鮮戦争休戦協定の日で、同協定には「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と明記されており、この署名の当事者は国連軍代表である米国と、中朝軍である中国と北朝鮮の3者。
韓国は当事者ではない。
そのため、韓国の李在明大統領は1月に訪中した際に、習主席に南北の仲介役を求めたことが明らかになっているが、韓国も地域の安定のために中国の存在は欠かせないとの認識の上、現実的な外交を展開している。
東アジアのパワーゲームが展開される中である。
北朝鮮の拉致問題を解決したい日本にとっては厳しい局面だ。独裁を強め、盤石化している北朝鮮との対話は難しい。
国際社会はドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』(2024年日本公開)で記録された脱北者一家の過酷な自由への逃走の記録を目にし、不自由な国への介入への無力さを痛感する。
この映画は脱北者支援の韓国人牧師とブローカーが脱北した一家5人を中朝国境からラオス、タイ、韓国まで導く過程を、川を渡り、森の中をさまよい、逃避する映像とともに語られる。
脱出に成功した一家は安堵しながらも、おばあさんがいまだに「金正恩様は若くて立派に」と話し、周辺は「もう嘘を言わなくていいんだよ」と説いても、同じことを繰り返す。
国の指導者が神格化された社会のリーダーと向き合うために、東アジアの国政政治構造が変わる中、理想に向けた外交を行うのは極めて難しい局面である。
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト