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トランプ完全敗北。米国の“大きな譲歩”で3千億ドルをせしめてメンツを守りきったイランのしたたかさ

アメリカとイランによる停戦合意の成立後も、なお先行きが見通せない中東情勢。米国側の「大幅な譲歩」とも受け取れる合意内容に対し、イスラエルの動向が新たな火種となる可能性も浮上しています。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、米国とイラン間の「了解覚書」やイスラエルの動きを詳しく解説。その上で、ウクライナ戦争や日本を取り巻く安全保障環境、さらに「世界平和の構想」について独自の視点で考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ氏の見事な敗北

それでも「勝った」といつもの強がり。トランプが喫した見事な敗北

米国は、イランに負けて賠償金まで払うことになった。それでもトランプ氏は勝ったという。この合意に反対のイスラエルはヒズボラへの攻撃を続け、この合意を阻害している。今後を検討しよう。

なぜアメリカはここまで譲歩せざるを得なかったか

米国とイランの停戦合意が成立して、停戦になった。米国はイランとの14項目の「了解覚書」の全文を公開した。主な条件には以下が含まれる。

  1. 米国、イラン、およびその同盟国は、レバノンを含むすべての戦線で軍事作戦を即時かつ恒久的に終了することに合意する
  2. 米国とイランは、互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことに合意する
  3. 米国とイランは、相互に延長されない限り、60日以内に最終合意を交渉し、達成することにコミットする
  4. 米国は直ちに海上封鎖の撤廃を開始し、30日以内に封鎖を完全に終了する
  5. イランは、最大限の努力を払って、ホルムズ海峡を通る商業船舶の安全な通航を60日間、料金なしで確保する
  6. 米国および地域のパートナーは、イランの再建および経済開発のための少なくとも3,000億ドルの相互合意された計画を策定する
  7. 米国は、国連、IAEA、一次、二次制裁を含むイランに対するすべての種類の制裁の終了に向かって取り組む
  8. イランは核兵器の取得または開発を行わないことを再確認し、IAEAの監督下で濃縮素材の備蓄に対処することに合意する
  9. 最終合意が達成されるまで、イランは現在の核プログラムの現状を維持し、米国は新たな制裁を課さず、追加の軍を展開しない
  10. 米国財務省は、イラン産原油、石油製品、デリバティブ、および関連する銀行、保険、輸送サービスに対する免除を発行する
  11. 米国は、凍結または制限されたイラン資金および資産を完全に利用可能にする
  12. 米国とイランは、MOUの実施と最終合意の将来の遵守を監視するための執行メカニズムを確立する
  13. MOUの署名および主要な停戦、封鎖、海運、石油免除、資産解放条項の実施後、米国とイランは最終合意の交渉を開始する
  14. 最終合意は、拘束力のある国連安全保障理事会決議によって承認される

この覚書は、最終合意の交渉のための60日間の期間を開始する。

この停戦合意で、イランのモハンマド・ガリバフ議長は、「トランプ氏との交渉を通じて、軍事行動では決して達成できなかったほど多くの成果を上げた」言い、続いて「新たに台頭するグローバルなブロックには、中国とイランが絶対的な中核を成すだろう」と宣言したが、ロシアを除外した。

ロシアはウクライナ戦争に劣勢になり、とうとう、援助するイランにも見下されたようだ。それと、イランの中東における位置づけは大きな物になったようである。

このように停戦項目を見ると、米国が大きく譲歩しているが、なぜ、ここまで譲歩する必要になったのかである。それは、戦争を終わらせないと、石油備蓄が後約4週間で枯渇することにより、1バーレルが150ドル以上になりえたからだ。

しかし、イスラエルのネタニアフ首相は、米イラン合意を受けても、レバノンからは撤退しないと発言し、イスラエルがリタニ川南部ではヒズボラの残党に対する攻撃継続をするとして、米イランの合意を阻害した。

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バンス副大統領がイスラエルに突き付けた「厳しい現実」

その上、イスラエルのカッツ国防相は、「誰も我々に何をすべきかを指図できないし、我々はレバノン南部にある最初の村落のすべての家屋が破壊して『安全地帯』にした。20万人のレバノン人は二度とそこに戻ることはできない。我々はヒズボラと戦っているし、イスラエルは安全地帯を一切放棄しない。ガザ、シリア、レバノンでも同じだ。イスラエル軍は国境を超え、向こう側に存在しなければならない」という。

これに対して、イランは、すべての今後の交渉の中止し、ホルムズ海峡の完全封鎖の再実施し、テルアビブへのミサイル攻撃を警告し、覚書第1条の直接的な違反で、第1条では戦争の終結とレバノン主権の保証が明示されている。このため、スイスで19日予定されていた米当局者との協議が延期した。

覚書1条を順守するために、バンス副大統領が「イスラエル政府の一部閣僚は、トランプ大統領を批判しているようだが、現実を見た方がいい。今この瞬間、イスラエルに同情的な世界の指導者は、ほとんどトランプ氏しかいない。しかも彼は、世界最強国アメリカの大統領だ。もし自分がイスラエルの閣僚なら、世界で唯一残っている強力な味方を攻撃しない。さらに、この3か月間、イスラエル本土を守ってきた防衛兵器の3分の2は米国で作られ、米国民の税金で支払われている。イスラエルの問題は、トランプ大統領ではない。トランプ氏こそが最大の問題だと思っているイスラエル関係者は、自国が置かれている現実を直視すべきだ」と言う。

このバンス氏の演説後、イスラエルとレバノンのヒズボラが現地時間19日午後4時からの停戦で合意した。

このため、スイスでの交渉は21日に開催されるという。

もう1つ、覚書13条は、米国に対し、まずレバノンでのすべての軍事作戦の即時終了を実施し、イスラエルの恒久的な撤退を含め、財務省によるイラン産石油および金融取引のための免除を発行し、最大1,000億ドルの凍結されたイラン資金をすべて解放することを要求している。

米国がこれらの要求を履行しない限り、核問題を含むすべての交渉はしないとしているので、イランのアラグチ外相氏がスイスでの交渉のための出張をしないし、代表団が参加することもないとした。このため、21日の交渉はどうなるのかわからない。

そして、イランは立場を強硬化させ、ホルムズ海峡の再開を南レバノンからのイスラエルの完全かつ永続的な撤退とイスラエル軍事作戦の完全停止に結びつけた。ホルムズ海峡の再封鎖になっている。

このため、トランプ政権は、ネタニアフ首相の政治的ライバルたちと連絡を取り始めている。グレター・イスラエルを主張するイスラエルの極右閣僚に愛想が尽きたようだ。

しかし、この解決を見ないと、石油供給不足による物資の欠乏、価格高騰の恐れが出て、安定化が期待外れとなる。

そして、イスラエル人口は600万人程度であり、地上戦での絶対有利であった過去とは違い、ドローン攻撃で自慢の戦車が破壊されている。米国の支援がなければ、周辺国に負けることになる。

それと、イスラエルは、EUのカラス外交安全保障上級代表(外相)との関係を断絶するとした。カラス氏がイスラエルの対パレスチナ政策に関し、南アフリカで行われていたアパルトヘイト(人種隔離)政策と同一視したと報じられたことに反発した。というように、イスラエルの孤立化が進んでいる。

その上、トルコのエルドアン大統領は、「世界は目を覚まさなければならない。ガザで起きていることは戦争ではない。それは、人間性を完全に失った男によって犯されたジェノサイドだ」と言い、イスラエルとの戦争も視野に入れて、トルコ軍はシリアにいる。まだまだ、何が起こるか見通せない状態だ。

6月21日朝9時現在の状況であり、非常に早く事態が動くので、X等で事態の推移を追いかけてください。

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ロシアで広がる深刻な「クレムリンに対する国民の反発」

キーウへのロシアのミサイル・ドローン攻撃に対して、ウクライナもモスクワに対して、1,000機以上の中距離ドローン攻撃を実施して、モスクワにある製油所を破壊した。それとモスクワでは多数のアパートなども損傷した。

このため、益々、防空システムをモスクワに集めているが、そうすると、地方の防空能力が脆弱になる。モスクワではロ軍は190機以上のドローンを迎撃したというが、多くが着弾したことになる。

このため、ロシアでは、ウクライナのドローン攻撃への恐怖と進展の乏しい高レベルの戦争死傷者により、クレムリンに対する国民の反発も深刻な状態になっている。

その上、ゼレンスキー大統領は、ベラルーシのルカシュンコ氏に対しても、ベラルーシでのロシア向け兵器工場と国境線にある攻撃用装備に警告も発した。ドローンによる爆撃を行う可能性を示唆した。

しかし、プーチンは戦争を止める気配がない。米国も仲介を止めているし、他国も仲介に入る気配がない。

それと、一連の飽和攻撃を両陣営が行うことになっているが、迎撃用ドローンを持つウクライナの方が迎撃効率が良いし、国民の反感も少ない。それでも、パトリオット迎撃ミサイルの欠乏で、ロ軍ミサイルを迎撃ができない状態であり、米国にパトリオット・ミサイルのライセンス生産を依頼したが、トランプ氏に拒否されたようである。

台湾統合に向けじわじわと押し寄せてきている中国

G7サミットでも高市首相は、トランプ氏より欧州政治家との会話を優先して、中国包囲網を形成したように見える。レアアースの国際的なネットワークを作った。その過程で中国を名指しで非難もしている。中国との摩擦を覚悟し、相当な自信があるようだ。

欧州も米国より日本を頼りにし始めたように見える。戦闘機開発でも、日伊英にカナダが参加をするというし、ドイツのラインメタル社が、日本での生産を計画するなど、日本の部品供給を期待して進出するようである。

5月の消費者物価指数は1.4%であるが、物価上昇が川中まで浸透した状況であり、6月に川下の消費者物価に反映するために、物価上昇は数か月は続くことになるようだ。供給の心配は今もなくならない。大量の備蓄があったとしても、日本を救われたかどうか分からない状態である。

しかし、憲法改正は着々と準備が進んでいる。維新の会が要求する議員定数削減も進行している。中国は徐々に自国の経済範囲を拡大している。南西諸島の日本のEEZでも中国公船が自国の範囲であると宣言した。台湾統合に向けて、じわじわと押し寄せてきている。

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日本が直面している「道徳体系の再構築」という課題

今まで、世界に日本のような「他者に配慮する」社会を作ることを述べてきたが、日本も道徳力が衰退する危険性がある。

それは、貧富の差が拡大することと、あるレベルの生活水準を皆に保証できなくなる危険が存在しているからだ。

もう1つが、日本の環境を目指して、世界から人が押し寄せることで、日本自体が変質して、世界標準的な社会になる可能性もある。

この現象が起きる原因は、体系的な道徳体系・倫理体系を持っていないからだ。宗教国は宗教に基づいた道徳体系も持つし、日本でも江戸時代までは論語という体系があり、それを明治時代に捨てたが、戦前までは尊重していた。現時点では、完全な無視になっている。

江戸時代の朱子学は偏狭な部分もあり、経済合理性がなく、倫理観での経済で経済衰退を起こしている。中国の習近平の経済政策も倫理的観点からの「共同富裕」や賄賂撲滅などの朱子学的な政策で、中国経済をつぶしている。

この愚を避ける必要があるが、道徳・倫理体系自体は必要であり、日本の道徳観を合意的に説明できる必要がある。それを教育の中心に置く必要がある。

この道徳の根本は、縄文時代の日本人たちの生活習慣に求めるべきであろうと見る。

そして、日本は暗黙知としての道徳から脱して、海外から来た人たちに日本の道徳観を理解してもらううことである。

この道徳の体系化は、日本から世界に道徳を広げる基礎でもある。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2026年6月22日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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