ロシアによるウクライナ侵攻以降、欧米や日本は経済制裁を強化し、国際的な圧力を通じてロシアへの包囲網を築いてきました。一方で、世界経済やエネルギー市場は複雑につながっており、各国が必ずしも同じ温度感で対ロ政策を取っているわけではありません。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では、著者で国際政治経済学者の浜田和幸さんが、シア・ASEAN首脳会議の背景や各国の思惑を整理しながら、ロシアが東南アジアとの関係強化を進める理由と、日本や先進国が直面する外交上の課題について考察します。
欧米や日本の制裁を潜り抜けるロシアの切り札:アセアン諸国の取り込み
ぶっちゃけ、ロシア中部カザンで6月17、18日に開催されたロシア・ASEAN首脳会議を通じて、ロシアは東南アジアにおける「経済的・外交的な影響力の維持・誇示」に一定の成果を収めた模様です。
ウクライナ侵攻後にプーチン大統領がASEAN諸国の首脳らをロシアに一堂に集めて対面会談を行ったのは今回が初めてのこと。
ロシアの影響力が全方位で拡大しているというよりは、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー危機を背景に、ASEAN側が「実利優先」でロシアに接近したというのが実態と思われます。
ホルムズ海峡の緊張などで原油不足や価格高騰に直面する東南アジア各国にとって、安価なロシア産原油や天然ガス、液化天然ガスの確保は死活問題となっているからです。
また、プーチン大統領とすれば、中国に爆買いされているロシア産エネルギーの輸出先の多角化にもなるというメリットは無視できません。
その上、採択されたカザン宣言では、ロシアへの配慮からウクライナ侵攻に対する非難や言及が一切盛り込まれませんでした。
欧米主導とは異なる「多極的な世界秩序」を主張するプーチン氏にとって、ASEANを取り込むことで「国際的な孤立はしていない」と内外にアピールする絶好の舞台になったと言っても過言ではありません。
しかも、次期ASEAN議長国であるフィリピンのマルコス大統領は、11月にマニラで開催されるASEAN首脳会議にプーチン氏を招待する旨を明らかにしており、ロシア外交にとっては大勝利と言えるもの。
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逆に、日本政府やフランス・エヴィアンでG7サミットを終えたばかりの先進諸国は、今回の首脳会議を「対ロ包囲網の足並みを乱す懸念すべき動き」として、強い警戒感と危機感を持って注視しています。
日本はG7の一員としてロシアへの厳しい経済・エネルギー制裁を主導していますが、東南アジアがロシア産資源を大量買いし、貿易額が侵略前の水準(約181億ドル)に回復している現状に対し、制裁の「抜け穴」になることを懸念。
日本はASEANにとって最大の政府開発援助供与国であり、強固な信頼関係がありますが、ASEAN側には「欧米や日本のルールに巻き込まれたくない」という本音も見え隠れします。
例えば、シンガポールは対ロ制裁を継続しつつ、裏では欧米の制裁を逃れてロシア産原油を運ぶ「影の船団」の中継・給油基地を提供している二枚舌外交を展開。
そんなこんなで、ぶっちゃけ、日本としては、東南アジア諸国にロシア非難を強要しすぎると逆に日本離れを招くため、強く批判しにくいというジレンマに直面しているわけです。
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