皇位継承を巡る議論の中で、改めて問われている皇族数確保のあり方。「男系か直系長子か」という対立構図に注目が集まる一方で、「教育や広報体制の問題」は見逃されているのが現状です。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では作家で米国在住の冷泉彰彦さんが、近代の立憲君主制において必要とされる「君臨スキル」と宮内庁の役割を分析。その上で、敬宮愛子内親王や秋篠宮家、さらに将来の皇位継承を支える体制について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:皇族数の確保、今後の展開を考察
求められるのは生涯にわたる公人としての適切な言動。皇族数の確保、今後の展開を考察
皇族数の確保が問題になっており、このままですと男系か直系長子かという論争が国を二分してしまう勢いです。分断があるレベルを越えてしまうと、国の根幹が揺らぐことにもなり、全くもって良いことではありません。その一方で、この問題は結論を出す、つまり皇族の数を確保して皇位継承を持続可能にすれば、それで済むというわけではないのです。
近代以降の天皇制度においては、天皇にしても皇族にしても、全くの「お飾り」ではありません。時代によって細かな役割は変化しましたが、生涯にわたる公人として適切な言動を続けることがご本人には要求されます。また周囲、具体的には宮内庁ですが、については皇室の品格、権威というものを維持するための適切な措置を常に取り続けることが必要です。
問題は、皇族は自然に生誕したり養子縁組をすることで自動的に増えるものでは「ない」ということです。公人として国を代表するのに相応しい一挙手一投足の言動スキルを身につけることで、初めて皇族に「なる」のです。同時に周囲、具体的には国の機関である宮内庁は皇族が皇族に「なる」ようにする使命を全うしなくてはなりません。
この「皇族になる」部分、具体的には近代における立憲君主制度の原則に従って、適切な発言と行動がいつでもできるような教育訓練、これが必要になって来ます。俗に言う「帝王学」というものです。帝王といっても勿論「君臨すれども統治せず」ですが、それでも、君臨する、つまり儀式や外交において高度なトークと、身のこなしを常にハイレベルで保つのは大変です。
この大変な君臨スキルについて、どのように伝承するか、あるいは対象者に身につけてもらうかというのは、簡単なことではありません。また、君臨する存在である皇族を、その権威を高め、貶めないようにするために、様々な雑音から守っていく必要があります。そのためには、宮内庁には日本の官民の中で最もハイレベルなPR(パブリック・リレーションズ=広報のこと)能力が求められます。
皇族本人が適切な訓練を受けて君臨するスキルを獲得していること、周囲が最高レベルの広報体制で皇族を守っていくこと、この2つが機能しなければ近代における立憲君主制は成立しません。問題は、皇族の人数を増やすことではなく、また男系か長子かといった論争に時間を浪費することではないのです。該当者があれば、適切に教育し、同時に広報体制により守っていくことが必要です。
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愛子さまにしか伝わっていない一子相伝の君臨スキル
皇室に問題があるとしたら、この教育と広報という点であると思います。具体的には教育について、これが組織的に伝承されていない中で、今では過去3代の天皇による一子相伝という形での教育が唯一残っているだけです。その結果、敬宮愛子内親王には今上陛下から一子相伝の君臨スキルが伝わっているが、秋篠宮家には伝承されていないということが起きています。
その結果として、世論の間に敬宮さまの立太子を期待する声が生まれてしまっています。これは重大なことです。では、今上陛下が、皇位継承資格のない敬宮さまに、君臨スキルを一子相伝で仕込んでいるのは皇室典範に違反しているのかというと、そうではありません。女性皇族一般に求められるスキルと、一子相伝の即位可能な君臨スキルは基本的に同じものだからです。
問題は、皇位継承順位1位の秋篠宮さまに、この君臨スキルが伝承されていないことであり、同時に、秋篠宮家を守り切る広報体制が脆弱であることです。臣籍降下されたご長女の結婚問題において、その取り扱いにはもっと他に様々な対策が可能であったにもかかわらず、結果的に国内では新家庭を守り切ることができないという悲劇的な判断に追い込まれ、宮家の権威を減じる結果になったのは、この2つの問題が合わさっています。
仮に今上陛下がある時点でご退位になり、秋篠宮家に皇位が移った場合には、皇位にある方が一子相伝の君臨スキルを持たないという状況になります。これは、象徴天皇制度の危機になります。ここからは推測になりますが、その場合には敬宮さまが何らかの形で秋篠宮父子を支えるのではないかと思います。表には出ない形で、嫌な役回りも含めて秋篠宮父子が君臨スキルの「奥義」を理解されるまで、恐らくは自己犠牲の領域に踏み込んででも責任を全うしようとされるのではないかと思います。
仮に、30年あるいは50年先になって、例えば即位した悠仁さまに男子が誕生せず、本当に伏見宮系の男系養子のお子さんが皇位継承順位に上がってきたとしたとします。その場合は、その方が確かな君臨スキルを獲得するような育ち方をするかは、国民から厳しい目で見られると思います。そうした際には、もしかしたら臣籍降下されているかもしれませんが、敬宮さまなり、あるいは君臨スキルを習得され即位されているであろう悠仁親王が、そのご養子のお子さまを訓育することになります。
重たい責任ではありますが、お二人はその責任を全うしようとされるでしょう。ですが、それだけでは全く不十分です。国民の目は厳しく、令和初期に秋篠宮家に向けられた数倍の厳しさで、このご養子のお子さんの成長を監視するに違いありません。そうした場合に、その存在を守りきり、一子相伝の象徴天皇の奥義を伝え切るようにするには、宮内庁には計り知れない努力をもって、この方を守っていく責任が生じます。
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どう考えても不足している「支える体制」というピース
こうした未来への考察をする中で、どう考えてもピースが不足しているのが、支える体制です。法執行機関でキャリアを積んだ人材「だけ」では、遠い古代からの日本の伝統に関する「深遠なる奥義」を理解しリスペクトする人材は集まりません。また法執行機関の人材は現行の法令と判例を前提にする行動様式しか持たず、未経験の事態に際しては全く頼りになりません。
非常に簡単なたとえになりますが、敬宮さま、悠仁さまのお二人では、どうにも支えきれないということになるとしたら、それこそ大相撲の「横審」のような組織が支える、場合によっては世論への説明も行うという体制が必要です。その場合の顔ぶれですが、―――(本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年6月30日号の抜粋です。続きをお読みになりたい方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上、6月分のバックナンバーをお求め下さい。メイン・コンテンツ「USAレポート」の「沖縄という複雑系を考える」、今週の論点「どうして韓国は半導体に83兆円も投資できるのか?」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。
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