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“嘘で固めた経歴”から“ネガキャン動画散布”疑惑まで。ジタバタするほど追い詰められる高市早苗の崖っぷち会期末と「サナエトークン」の影

通常国会の会期末まで残り3週間。下がり続ける支持率を反転できないまま、高市早苗首相は内外政の行き詰まりという際どい綱渡りを強いられています。”ネガキャン動画拡散”疑惑では答弁修正を繰り返し、外交でもトランプ大統領に冷たくあしらわれ——。足掻けば足掻くほど苦しくなる政局運営の内実とは。『高野孟のTHE JOURNAL』では、著者でジャーナリストの高野孟さんが、嘘で固めた経歴と疑惑に追い詰められる高市政権の危うさを鋭く読み解いています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール高野孟たかのはじめ

1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

ジタバタすればするほど苦しくなる通常国会会期末の政局運営?/“中傷動画散布”疑惑を甘くみた高市の自業自得

通常国会の会期末まで3週間を残すのみとなり、高市早苗首相は内外政の両面にわたる”行き詰まり”を乗りきることが出来るかどうか、かなり際どい綱渡りを強いられようとしている。まさかこの3週間のうちに足を踏み外して地上に落ちることはないにしても、ジリジリと下がり続ける政権支持率を反転上昇させるきっかけを掴みながら今国会を終わらせることができるか否かは、政権そのものの消長を占う決定的な指標となるので、そこに注目して成り行きを見極めたい。

国会の日程が詰まっていると言っても、それが彼女が実現したいことのために不足であるなら会期延長すればいいだけの話である。それがそう出来ないのは、他の誰のせいでもない。彼女自身が、延長したくないどころか1日でも早く閉会して、昨秋の自民党総裁選と今冬の衆院選でのライバルに対する卑劣な「中傷動画散布」作戦についての文春砲と野党の追及に屈してズルズルと答弁修正を続けている不様さから解放されたいがためである。

これには前例があり、第2次安倍政権の最後の数年間がまさにこんな風だった。例えば、安倍昭恵夫人が学長を務める予定だった森友学園への国有地払い下げを9億5600万円から1億3400万円に減額するため財務省の佐川宣寿理財局長が先頭を切って公文書改竄を指示し、そのため末端の同省職員が自殺するという事実上の”殺人事件”が表沙汰になると、安倍はのらりくらりの答弁で誤魔化し続けた挙句、通常国会を早々に打ち切り、秋の臨時国会をなかなか開かないようにするなどして逃げまくった。何もこんなことまで師匠の真似をしなくともよさそうだが、弟子の高市はそれをそっくり踏襲している。

と言うか、このように一度嘘をついたらバレても決して撤回せずに言い張り、どうにも説明がつかなくなると少しずつ言い方を変えながら誤魔化し続けるという手法は、むしろ高市の方が先輩なのかもしれない。松下政経塾在学中の1987年に渡米して米民主党パトリシア・シュローダー下院議員の事務所で「日本人初の米連邦議会立法調査官」として働いたという経歴を売り物にして政治家への道を歩み始めた彼女が、米議会にそのような役職が存在しないことを指摘されて「コングレッショナル・フェロー」と言い換えたことはよく知られたエピソードだが、「日刊ゲンダイ」電子版6月26日付が改めて取り上げているように、実は「給費研究職」と訳すことが出来るフェローでさえもなくてインターン、すなわち在学中の学生が就くことの多い「事務職見習い」にすぎなかったようだ。

経歴の最初から自分を嘘で固めてきたような彼女が、今回の「中傷動画散布」について最初は「知らぬ存ぜぬ」で押し通そうとし、それから文春砲がネタを小出しにしながら攻め上げると、その度に松井健なる人物を「知らない」から「会ったことがない」、さらに「名刺を貰っていない」へとズラし、その松井と高市秘書の木下剛志との対話記録が公にされると「そんなものを聞いている暇はない」から「秘書の声に似ている」、そして秘書の参考人招致には応じないが「陳述書を書かせて提出させる」って、一体何?……ほとんど支離滅裂に陥っている。こんな押し問答を続けながら、おそらく文春砲の側は会期末に至る前のどこかの段階で”本丸”である「サナエトークン」詐欺の件に切り込んで行こうとするはずで、それを思うと高市は夜もろくに眠れない追い詰められた心境なのではないか。

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筋が悪すぎる日本維新の国権強化法案群

こうして、高市が自身に降りかかった疑惑で足掻けば足掻くほど、会期末の日程がキツくなる中で、しかし少なくとも政権の基盤となっている日本維新との「連立政権合意」の重要項目のいくつかだけは何としても通過させないと、政権そのものの存立が危うくなる。維新側も切羽詰まっていて、ここで連立入りしたことによる成果を支持者に示さないと、存在意義が疑われかねない。そこで高市に対しては、会期を大幅延長して、参院が衆院と異なる議決をした場合、もしくは60日以内に議決をせず衆院がそれを事実上の否決とみなした(いわゆる「みなし否決」の)場合、衆院が3分の2以上を以て再可決すれば法案は成立するという憲法59条の規定に基づく強行手段を揮ってでもいくつかの関心項目を実現させるよう迫っている。が、もちろん高市は会期延長など応じる訳がない。

ここにおいて、衆院での圧倒的優勢にも関わらず参院では少数という高市政権の抱える潜在的矛盾は、高市vs維新それぞれの自己都合のぶつかり合いとして顕在化せざるを得なくなるのである。

しかも具合の悪いことに、維新が昨年10月15日に高市から連立入りを打診され、わずか数日の協議で政策合意に押し込んだ案は、野党だった維新が”右から”自民党を批判しもしくは叱咤するというスタンスからの無責任な(と言って言い過ぎなら小気味よい)国権強化ぶりが目立ち、それをさらに高市が自民党での議論を一切経ることなく飲み込んでしまったために、突っ込みどころ満載の筋の悪いものばかりになった。

自民と維新の昨年10月20日調印の政策合意のうちの主なものは次のとおり(本誌による要約。要旨はhttps://o-ishin.jp/coalition2025/ 全文は、https://o-ishin.jp/news/2025/images/624de5f22900f6e88e892abb49d3fc70ef3cac92.pdf )。

  1. 「飲食料品消費税2年間0%」をつなぎとして「給付付き税額控除」を実現
  2. 安定した皇位継承に向けた「養子縁組」の導入
  3. 憲法9条改正、緊急事態条項新設に向けた条文起草協議会の設置
  4. 「日本国国章損壊罪」の制定
  5. 「防衛装備移転3原則の運用指針」の5類型の撤廃
  6. 自衛隊の階級呼称、服制等の国際標準化
  7. 「国家情報局・国家情報会議」の設置、スパイ防止法検討
  8. 「副首都」実現に向けた法案
  9. 「議員定数1割減」の議員立法

参院も通過成立したのは「国家情報局」だけ

これらのうち、6月26日現在で参院も通過して成立しているのは(7) の「国家情報局」関連法案のみ。警察官僚主体の「内閣情報調査室」の看板を架け替えただけでは国家的な「戦略情報分析」、すなわち本当のインテリジェンスなど出来る訳がないことについては、本誌No.1364(今年5月4日号)参照。これに関しては野党の中の旧左翼陣営も困ったもので、スパイ防止法との関連で「国民監視」が心配だという本筋からかけ離れた批判の仕方に終始している。

(1) の消費税減税については、「0%ではレジ改修が間に合わないから1%で」という間抜けとしか言いようのない話が沸き起こって迷走し、またなぜ2年間限定なのか、なぜその先は「給付付き税額控除」が望ましいのかについて、高市は一度も国民にはおろか自民党に対しても自論を説明したことがない。この問題は、古くは小泉政権時代の谷垣禎一財務相が「日本は低負担中福祉」と定義して以来、一度もまともな議論が行われたことがなく、単なる惰性で低負担のまま中福祉を低福祉に下げるという厚生労働官僚の浅知恵に委ねられてきた。せめて「中負担中福祉」にするのかそれとも思い切って北欧並みの「高負担高福祉」を目指すのかの”国民負担率”の議論から始めて、その負担を税と社会保障費のバランスをどう取るかの”税と社会保障費の一体改革”プラン、さらにその税部分を直接税と間接税のどちらを主に取るのかの”直間比率”ーーという国としての基本設計をやり直すべきではないか。私は昔から、消費税を欧州諸国並みに15~20%にする代わり食料など生活必需品は完全にゼロ化し、所得税も減税するという、先進国型間接税中心主義に大転換すべきだと主張している。今の政権は余りに瑣末なところへ議論が流れている。

(2) の養子縁組による皇族数の確保は、一皮剥けば「男系男子による皇位継承」というイデオロギーへのしがみつきであって、こんな案を両院議長に無理やり「国会の総意」に仕立てさせて強行する意味は何もない。中国嫌いの高市は、落合恵美子=京都産業大学教授(家族社会学)の「日本の家族観はもともと厳密な父系(男系)制ではなく、女系も重んじられる双系的なもの」であって、「男系男子にこだわる人は、それが『中国化』だという意味を認識していないからではないでしょうか。日本の独自性とは何かを真剣に考えよう」という意見(6月27日付毎日新聞電子版)をよく聞いた方がいいのではないか。皇室を”中国化”するなんて、高市さん、不敬の極致じゃないですか。

(8) の「副首都」は、筋が悪い話の典型で、大阪ローカルの府と市の二重行政解消の問題と、何もそれは大阪だけの話ではなく全国20の政令指定都市と道府県との間にも多かれ少なかれ存在する同様の事態を全体としてどうしたらいいかという問題と、首都が戦乱か災害で壊滅する場合に備えて副首都が予め用意されていた方がいいのかどうかという問題とが、全部ゴチャマゼになっていて、維新の思考混乱ぶりを示している。こんなものに国会が真面目に取り合うことがおかしい。

もう1つだけ。(9) の定数を比例代表だけで45議席減らすという案は、小選挙区制をいじると自民党もてんやわんやになって収拾がつかなくなるが、比例のみあるいは比例復活で上がって来た議員はもともと”B級視”されているというコンプレックスがあって文句を言いづらいだろうというところに付け込んだ卑劣なやり方で、よろしくない。より本質的には、小選挙区制だけでは「2026年高市自民党=317、2009年鳩山民主党=309」のような極端な振れが生じるので、それを緩和するため何らかの形の比例代表制と噛み合わせるという現行選挙制度の設計の基本を大きく変更することになるので、少数政党の存在価値をどう考えるかから議論が必要。それを「1年かけて結論が出なければ議論を打ち切って問答無用で実行する」というのは民主主義の自殺行為である。

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媚態外交ではもうトランプも振り返ってくれない

内政がダメなら外交で、と本人はまだ思っているのかもしれないが、それももう終わった。昨年10月のトランプ米大統領来日では、横須賀港に入った米空母の甲板上でトランプの横でピョンピョン跳ねて得意満面。その延長で今年3月の自身の訪米では、抱きつき挨拶、ホワイトハウスの祝宴で腰振りダンス、トランプの意地悪さ剥き出しのバイデンへの侮辱的な展示を見て大口を開けてバカ笑いと、はしゃぎまくったのはまあいいとしよう。会談が始まって冒頭に高市が一所懸命に考えてきた英語のセリフで語りかけたものの、すぐに話に詰まり、トランプから「君には優秀な通訳が付いているだろう」と言われてしまい、ここでもまた「米議会立法調査員」とかの嘘が露呈してしまった。そういう役職が本当にあったとして、それはネイティブ並みの英語力とロースクール卒レベルの法律知識がなければ務まらない。

そこで恥をかいたせいもあって、6月のG7エビアン・サミットでは、トランプに歩きながら満面の笑みを浴びせただけで話しかけることはせず、トランプもチラッと高市に視線を向けたがほとんど無視。他の首脳たちの立ち話に加わるでもなく、まだ誰も着いていない大テーブルに一人着席して所在なげにしていた高市の姿は哀れを誘った。

だから今更「得意の外交で挽回」などと思っているはずもないと思うのだが、それでも急遽7月1日からインドを訪れモディ首相と会談するという日程を作ったのはどういうわけか。米国防総省がハワイの「インド太平洋軍」を2018年以前の「太平洋軍」に名称を戻すという発表に接して、いよいよトランプの気まぐれで安倍以来の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という名の中国包囲網戦略が崩れかねないという危機感(前号参照)もさることながら、それよりも国会の議場で針の筵に座らされているのに耐えきれず、1日でも2日でもそれから逃れたいという心情が先に立っているのではあるまいか。

しかしそんなことをすれば、会期末の日程が余計にタイトになり、自分の首を絞めることになるのである。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年6月29日号より一部抜粋・文中敬称略。メルマガ全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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