拉致解決、道筋見えず=安倍首相、陣容替え糸口模索

2019.09.17
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by 時事通信

拉致被害者家族との面会の冒頭、あいさつする安倍晋三首相。左は菅義偉官房長官兼拉致問題担当相=16日午後、東京・平河町(代表撮影)

拉致被害者家族との面会の冒頭、あいさつする安倍晋三首相。左は菅義偉官房長官兼拉致問題担当相=16日午後、東京・平河町(代表撮影)

 首相は先の内閣改造に合わせ、北朝鮮の日本人拉致問題に関わる陣容を変更し、日朝首脳会談の糸口を再び模索し始めた。しかし、自民党総裁の残り任期が2年となる中、金正恩朝鮮労働党委員長が会談に応じる兆しはなく、「内閣の最重要課題」を解決する道筋は見えていない。
 「オールジャパンで、安倍内閣一体となって拉致問題を解決しなければいけない。もう一刻の猶予もない」。首相は16日、横田早紀江さんら拉致被害者家族と東京都内で面会し、拉致問題解決に向けて突破口を開くため、日朝首脳会談をできるだけ早く実現したいと改めて伝えた。
 首相の横には拉致問題担当の政務3役が着席。官房長官は「改造後も引き続き拉致問題を担当する。首相の下で全力で頑張る」と語った。
 拉致問題は首相にとって議員秘書時代の1988年以来の「ライフワーク」だ。政界では誰よりも早くから取り組んできたという自負がある。北方領土交渉が停滞する中、2021年9月までの総裁任期中に何とか解決に導き、自身のレガシー(政治的遺産)にしたいとの思いも強い。
 このため、首相は先の改造で拉致担当を引き続き懐刀の菅長官に任せる一方、谷内正太郎元外務事務次官を国家安全保障局長から外し、後任に北村滋前内閣情報官を充てた。北村氏は警察庁出身で、首相の命を受けて北朝鮮当局者と極秘接触を重ねてきたとされる事務方の側近だ。
 首相が前経済再生担当相を外相に充てた背景にも、日米貿易協定交渉を大枠合意に導いた手腕に期待している側面があるとみられる。
 だが、道のりは険しい。首相周辺には当初、非核化をめぐる米朝交渉が進展すれば拉致問題でも突破口が開けるとの楽観論があったが、北朝鮮はあざ笑うかのように短距離弾道ミサイルを何度も発射。政府内からは「北朝鮮は日本を相手にしていない」(外務省関係者)との声も上がる。
 横田さんは首相との面会で「どうか本当に、このことだけは解決していただきたい。ちょっとでも元気な間に、子どもたちと一目対面できる日を与えてください」と祈るように語った。(2019/09/17-07:10)

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