慰霊の山「守り続ける」 77歳管理人、被災乗り越え決意―日航機墜落35年

2020.08.11
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by 時事通信


登山道をふさいでいた倒木を切る「御巣鷹の尾根」管理人の黒沢完一さん=7月24日、群馬県上野村

登山道をふさいでいた倒木を切る「御巣鷹の尾根」管理人の黒沢完一さん=7月24日、群馬県上野村

  • 昨年10月の台風で一部崩落した「御巣鷹の尾根」の登山道を見る管理人の黒沢完一さん=7月24日、群馬県上野村
  • 墓標の周囲を整える「御巣鷹の尾根」管理人の黒沢完一さん=7月24日、群馬県上野村

 520人が犠牲になった日航ジャンボ機墜落事故から12日で35年。現場となった「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)は、昨年10月の台風による大雨で登山道が一部崩落するなど大きな被害を受けた。尾根の管理人黒沢完一さん(77)は連日足を運び、傷ついた山の復旧に尽力。「これからも山を守り続ける」と決意を見せる。
 7月24日、小雨の降る尾根の中腹に黒沢さんの姿があった。昨年の台風で犠牲者の名前が刻まれた墓標が一部流され、いたるところで倒木や土砂崩れが発生。9カ月以上たっても災害の爪痕は生々しく、この日は登山道をふさいでいた倒木を切り、道の整備に当たった。
 例年、遺族の多くは事故発生日にかけて慰霊の山登りをする。上野村や日航の支援もあり、登山道の「最低限の仮復旧」(黒沢さん)はできたが、墓標が立つ場所によっては向かうのに危険な道も残る。「まだまだ時間はかかる。壊れた所を一つ一つ直していきたい」と力を込める。
 黒沢さんは尾根の管理を任された2006年以降、「山守」として登山道の修繕や点検に尽くしてきた。墓標が傾いていれば立て直し、雑草が生えてくればむしり取る。つまずきそうな道があれば地面をならし、手すりやベンチを新しく設置するなど細かな気遣いを欠かさない。「(遺族から)『歩きやすくなりました』と声を掛けられるとうれしい」と照れた様子で話した。
 今年4月、喜寿を迎えた。今でも週に5~6回、山に登る。高低差180メートル、尾根まで800メートルの急峻(きゅうしゅん)な山道を回るのは身体的にも過酷な作業だ。はにかみながら「疲れやすくなってきた」と打ち明けた。
 それでも「山を守り続けていく」と黒沢さん。「ここは遺族にとって身近な方が亡くなった場所。(訪れる遺族が)不快な思いをしないためにも、力のある限り通ってしっかり手入れしないと」と静かに語った。(2020/08/11-20:32)

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