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オネエみたいには生きられない。悩むゲイ男性に石田衣良が出した答え

テレビでオネエタレントを見ない日はないほどですが、市井に暮らす多くのセクシャルマイノリティの方は、まだまだ理解が進まない現実社会の中で悩みを抱えて暮らしています。『石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」』では、そんな方から寄せられた相談に真摯な姿勢で答えています。

ゲイを個性に世の中に出ていけない自分を助けてほしい

Question

33歳ゲイです。学生時代に自覚しました。それから誰にも相談できずひた隠しにしてきました。ゲイ仲間をネットで作ってネットのやり取りで根も葉もないうわさを流されたこともあり、自分の中でホントの自分理解してくれる人なんかいないと思っています。

高校生時代に付き合った彼女が1人だけいて、彼女とは何でも話せる仲だと思っていました。別れた後も友達として連絡を取っていたし信用もしていたのですが、彼女にカミングアウトしたらそれ以来、連絡一切来なくなってしまいました。ショックでした。初めて付き合った彼氏に理解と助けを求めにいくと、彼は自殺していたことを知りました。ぼくもそうなるのか不安です。

今ではテレビにもセクシャルマイノリティの人たちが多く出るようになって、だいぶ理解は進んできたと思います。だけど彼らのような華やかさも話題性もない、ただの一般人のぼくがゲイを個性にして堂々と世の中に出ていくことは到底できそうにありません。助けてほしいです。

石田衣良さんの回答

ぼくは以前、NHKのEテレで福祉の番組をやっていました。その時、LGBTの人たちとたくさん会って話を聞いたのですが、本当に切実だったんです。ぼくがいまだに忘れられないのは、ある地方都市に住んでいる、ごく普通の地味な高校生の男子です。「自分はテレビで活躍している、いわゆるオネエの人たちみたいには到底なれない。でも、ゲイだとああいう風にしか生きていく方法はないのかな」と思って絶望していたんだよね。

要は新宿2丁目に行って、着たくもない女装やしたくもない化粧をして、オネエ言葉で何もかも面白おかしく盛り上げなきゃいけないのか。そんな生き方はできそうにもないけど、他には生き方がないって絶望していたんだよ、まだ高校生の若さでさ。

この問題に関しては、やっぱり、いつになってもなくならないと思うんだ。いまだに、イスラムの国では、ゲイであることを理由に、年に何人も死刑にされているじゃない。世界はさらに厳しいところがあるよね。日本では段々とよくなってきているので、すごくつらいかもしれないけど、ちょっとずつ自分を出してく努力をしていくほうがいいんじゃないかな。

ずっと仲の良かった女の子と、亡くなってしまった男の子に関しては、不幸なサンプルなんだけど、そういう人たちだけではないよね。ゲイでも力強く生きて、ごくごく普通のゲイ同士で付き合っている人っていますから。別にオネエでもなく、女装もしていないけど、幸せに暮らしている人もいるので、そちらの方向を目指して少しずつがんばってほしいかな。つらいとは思うけどね。

これ、自分の中だけにしまい込むとすごくつらいので。LGBTの会とかレインボーパレードなんかだと、すごくたくさんの人が集まってわぁっと盛り上がっているので、そういうところに行って、同じ性的志向を持つ気の合う人を探すといいんじゃないですかね。

あなたと同じように、ごく普通の落ち着いた生活をしていて、その上で男性と付き合いたいっていうゲイの人もたくさんいるので、そういう相手を探して幸せになって下さい。今の日本の中でも、ちょっと開けた部分、光が当たっている部分があるので、そちらの方に少しずつ動いてみたらどうでしょうか。

ぼくが以前聞いた話では、日本を代表するような大企業で、ある男性が「会社を辞めたくない。会社にいたまま性転換をして女性になりたい」って打ち明けたことがあったそうです。人事部の人はそれを聞いて最初はびっくりしたようですが、会社に籍を置いたまま性転換する場合の社内規則を作って対応してくれたみたいです。だんだんと社会の理解も深まっているので、あなたもがんばってみてくださいね。

source: 石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」

image by: Shutterstock

 

続きは11月13日発行のブックトーク第009号で……

 

石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」
著者:石田衣良
本と創作の話、時代や社会の問題、恋や性の謎、プライベートの親密な相談……。
ぼくがおもしろいと感じるすべてを投げこめるネットの個人誌です。小説ありエッセイありトークありおまけに動画も配信。週末のリラックスタイムをひとりの小説家と過ごしてみませんか?メールお待ちしています。
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