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【書評】「もしドラ」の続編がすごい。野球部なのに選手が0人!?

280万部の大ベストセラーにもなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」。その待望の続編が発売されました。今回はドラッカーの「イノベーションと企業家精神」という本を浅川学園という高校の野球部マネージャーたちが読み解いていきます。メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』は、この本がいかに読み応えある内容か、そのエッセンスを紹介しています。

 

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』 岩崎夏海・著 ダイヤモンド社

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、280万部の大ベストセラーとなった、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の待望の続編。

※参考:『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

期待が大きいだけに、内容がどうなるのかドキドキでしたが、さすがは岩崎夏海さん。ストーリーも秀逸ビジネス的な気づきもバッチリ、読み応え十分です。

夢のない主人公、夢(ゆめ)が、友人・真実にさそわれ、野球部に入部するところからストーリーが始まるのですが、初期設定が憎い。
なんと、舞台となる浅川学園の野球部はマネージャー6人だけ選手がいないところからスタートするという、何とも意表をつくはじまりかたです。

6人のマネージャーたちが、ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読み、マネージャーとして大事なことを学び、成長していくというストーリーで、主人公・夢はそのなかの人事担当マネージャーに就任します。

「人材の確保」という時流にあった事業定義もさることながら、人事とは「居場所を作ること」、説得とは相手の「得」を説くこと、などという示唆に富んだ言葉も、読ませてくれます。

「予期せぬ成功」や「最大より最適」、「ギャップの存在」など、企業がイノベーションを起こすためのヒントを、『イノベーションと企業家精神』から上手に拾い上げ、見事にストーリーに組み込んでいます。

さっそく、本書のハイライトを、ご紹介しましょう。

イノベーションとは意識的かつ組織的に変化を探すことである

◆七つの機会

第一 予期せぬことの生起

第二 ギャップの存在

第三 ニーズの存在

第四 産業構造の変化

第五 人口構造の変化

第六 認識の変化

第七 新しい知識の出現

予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない。これほどリスクが小さく苦労の少ないイノベーションはない。しかるに予期せぬ成功はほとんど無視される。困ったことには存在さえ否定される

イノベーションの母としてのニーズは、限定されたニーズである。漠然とした一般的なニーズではない。具体的でなければならない。それは、予期せぬ成功や失敗、ギャップと同じように企業や産業の内部に存在する

コリンズは、生前のドラッカーとも親交の深かった経営学者だ。いうならば「ドラッカーの後継者」のような人物である。その彼が、この本の中で「偉大な企業は、まず人を集めた上で事業を決める」との調査結果を発表していた

「『人事』というから堅苦しく聞こえるけど、要は『居場所を作る』ってことなんだよ」(中略)「ーーつまり、『居場所を作るのが、夢の居場所」ってわけ」

「『説得』というのは、『依頼』ではないのよ」(中略)「『説得』とは、相手にとっての『得』を『説く』ということなの。相手に、『あなたにはこれだけの得がありますよ』と教えてあげること。こちらの都合に合わせて、お願いしたり、頼んだりすることじゃないのよね。だから『説得』という字を書くのよ」

浅川学園においては、まだ選手が集まる前から、グラウンド整備専属の部員が正式に参加した。そのことが、マネージャーたちに新たな視点をもたらしたのである。それは、「部員は必ずしも選手、あるいはマネージャーではなくともいい」ということだ。それ以外の仕事をする人間でも、組織の成果につながるのであれば、あるいは彼らがそこに居場所を見出すのなら、部員として所属させた方がいいということだった

夢は、今度は「人が誰かに必要とされるのはどういうときか?」ということを考えてみた。人はどういうときに誰かに頼りにされるのか? するとそれは、「自分では解決できない問題を、その人なら解決できるとき」というのが分かった

マネジメントが「居場所を作る」一方で、居場所を奪うこともある。そんな矛盾にも、本書は明確に答えており、本格的なロボット時代の到来にあっても、われわれが生きるヒントを示してくれています。

『イノベーションと企業家精神』とは、ずいぶんマニアックなところを突いてくるなと思いましたが、意外やこれは、現代的問題に答えた、タイムリーな一冊です。

ぜひ読んでみることをおすすめします。

image by: Shutterstock

 

『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』

著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。

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