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中国経済の大崩壊はあるのか?漂い始めたソ連末期と同じ空気感

GDPの伸び率が25年ぶりの低水準となるなど、大減速の様相を呈する中国経済。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、現在の中国にはソ連崩壊時と同じような空気感が漂っていると指摘、さらに中国、そして世界の行く末は3月の全人代で発表される「新五か年計画」にかかっていると分析しています。

中国GDP6.9%に鈍化…中国の大崩壊はあるか?

先月、中国のGDPが発表されたが、成長率は6.9%と鈍化。伸び率は25年ぶりの低水準。背景には過剰投資、いわゆるつくりすぎ。このつくりすぎが東南アジアやヨーロッパにまで波及して世界全体の景気を悪くしている。これらを「新チャイナリスク」というような言い方をしている。

V字回復は不可能

最近の中国の動きを見ると、マンションをつくりすぎており、中国専門家の試算では業者が購入済みの分譲地や住宅は63億平方メートル、1人30平方メートルとするとなんと2億人分余るというような状況。マンションに電気がついておらず、幽霊城みたいだということがいわれるがそのような状況だと思う。

さらに鉄鋼もつくりすぎで、余剰の鉄鋼物の量は日本の鉄鋼生産量の4倍ともいわれ、これらがアジア内に輸出され、不況に陥れているというようなこともある。中国共産党の機関紙では経済の先行きについて「V字回復は不可能だと掲載し、注目を集めた。

中国の過剰投資

また、貿易も落ち込み昨年の輸出は2.8%減で6年ぶりに減少。貿易も相当落ち込んでいる。輸入も-14%。中国がモノをつくりすぎて、過剰投資があるのではないかと言われている。李克強首相は「腕を1本切り落とすつもりで構造改革をやれ」と言っているくらいで、中国の過剰生産が世界に影響を与え、デフレ状況を作っているとうことが言える。

中国がこれでもってすぐに大崩壊するかどうかはわからないが、本当に今危ないところにきた。そういうことでいえばこれまで様々な取材をしてきたが、今回のこととソ連の崩壊を重ねて思い出した。

過去のソ連から見えるもの

ソ連崩壊は89年から90年にかけ、あの当時ソ連はモノをつくりすぎ、そのつくりすぎというのは一般の生活用品などではなく、対アメリカの軍備競争に一生懸命になりおカネをつかいすぎた。そこへもってきて石油価格が下がりすぎ、金が売れなくなりソ連の経済がおかしくなってくる。

そこでゴルバチョフ氏は軍備競争は止め、仲良くやっていこうではないかとペレストロイカを実施しようとした。レーガン氏は当初それを信用しなかったが、ブッシュ副大統領(当時)にゴルバチョフ氏の本当の心根を探って来てくれと探りにいかせたところ、どうも本当だということがわかりレイキャビック(アイスランド)で首脳会談が行なわれ、それが冷戦崩壊の1つの始まりという大転換を図った。

そういうようなソ連の崩壊の動きに今の中国が少し似ているように感じるが、アメリカのウォールストリートジャーナルは昨年「中国共産党のたそがれ」という論文を掲載。中国共産党は政治的に深刻な状況で軍部との関係もある。さらに行政当局が大衆からの信頼を失っている、成長率もどんどん下がってきている。必ずしもソ連の崩壊とは一致しないけれども、中国はソ連の末期的な症状と似てきているように感じる。

当時のソ連の状況

当時私はソ連も訪れているが、駅の裏に行くと戦後の日本のような状況であったし、デパートやスーパーにモノがなかった。そこで、近郊の村々からトラックに野菜などを載せてそれらを買っていた。結局ソ連は軍備競争の為に鉄鋼などを多量に作りGDPは大きくなったが、生活用品は作っていない。当時「ソ連にはアイロンが1種類しかない」と言われたほどで、生活必需品を作らないので種類もデザインも何もないというのがあの当時の実態であった。

そしてソ連は金や石油を売ることで、おカネを儲けていたが、それらもだんだん売れなくなり崩壊していく。つまり、モノを作ってそれらを輸出するという経済になっていなかったということだ。

ソ連のクーデター

当時のソ連の動きはエリツィン氏がゴルバチョフ氏を批判し、その一方で保守派は「ペレストロイカ」に関して気に入らない。ゴルバチョフ氏はクリミア半島の保養地フォロスで休暇中、大統領府長官ら一行が面会を要求し、副大統領への全権移譲と非常事態宣言の受け入れを迫ったがゴルバチョフ氏は拒否。ソ連ではクーデターが起こりモスクワで銃撃戦が行なわれたこともあった。エリツィン氏は強面で勇気もあった、戦車の上でクーデターを阻止したことにより民衆の支持を得た。

このようにしてソ連ではゴルバチョフ氏からエリツィンへという流れで崩壊していく図式になり、西側も一時エリツィン氏を支持し連戦を終らせようという動きになっていく。

同じような空気感

そういった状況と必ずしも一致はしないが、今の中国は何となく似ているようなところがあるというように思う。中国の方々に取材をしてみたが、なんとなく湿っぽい。贅沢禁止令もあり、うまく商売が運営できないからつぶれるのではなく突然国の方針が変わることによってその企業をつぶすということもあるため、中国の人達は何となく萎縮している。

中国は陸軍を縮小し改革しようとしているが、その反面太平洋に進出するため海軍や空軍の強化をはかっていることから内部分裂もあるようだ。習近平氏を守っているのは海軍であるとも言われており、当然不満分子も出て来てくる。

今後の注目点

中国は間もなく「新五か年計画」を3月の全人代で発表するが、ここで国民が納得するような内容が出てこないと習近平政権は「チャイナリスク」と言われるようなことが世界に広まっていくだろう。ここでは数字も発表されると思うが、これまで中国が発表した数字は信用ならず、その数字がどうなのかという点も注目される。

(TBSラジオ「日本全国8時です」1月26日音源の要約です)

 

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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