2002年の牛肉偽装問題など、勇気ある社員の内部告発により会社の暗部が表沙汰になった事例は存在します。しかしこのようなケースは稀で、実際の社員の立場となると、告発後の「報復人事」や「社内差別」などが怖いのが本音でしょう。無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、内部告発を原因に差別的な扱いを受けた社員が企業を訴えた裁判例を紹介しつつ、内部告発の必要性を説明しています。
内部告発を行った社員を差別するとどうなるか
「裏切り」には2種類あると、私は思っています。それは「悪い裏切り」と「良い裏切り」です。
裏切りと言えば、歴史上で有名な人物として、キリストを裏切ったユダ、織田信長を裏切った明智光秀などがいます(諸説はあるようですが)。この人たちは、信頼していた人を裏切ったわけですから、「悪い裏切り」と言えます(もちろん、当人の言い分はあると思いますが)。
また、以前に話題になった「ライアーゲーム」というドラマでは誰もが裏切り者だらけと言ってもよいほど裏切りのオンパレードだった記憶があります。
これに対して、良い裏切りとはなにか。例えば、不適切な話かも知れませんが、麻薬の使用で芸能人が逮捕される場合、その大半は、「身内の通報」がきっかけと言われます。これは、逮捕された本人にとっては一種の裏切りと感じられるかも知れませんが、その身内にとってみれば、「なんとか立ち直って欲しい」という苦渋の選択だったことでしょう。これは、「良い裏切り」と言えます。
これは、会社にとっても同じことが言えます。会社にとっては「悪い裏切り」と感じることでも本当は「会社を思ってのこと」という場合もあるのです。
これについて、裁判があります。
ある運輸会社の社員が、「会社が他の同業者との間でヤミカルテルを締結している」などとマスコミに対し内部告発をしました。
するとその会社は、その社員に対し「長期間にわたり昇格させない」「意味のない雑務を強要」などの差別的な行いをしました。これに不満をもった社員は会社を訴えました。
では、その結果どうなったか?
言うまでもありませんね。会社が負けました。内部告発を理由とする差別的な取扱いは「禁止」されています。
内部告発というと会社にとってはある意味で「裏切り」と感じることがあるかも知れません。ただ、それは本当にそうか?
「会社にもっと良くなってほしい」という気持ちがあるからこそ社員はそれを正すために行動するのではないでしょうか。
この裁判例とは別になりますが、以前読んだ「しんがり」という本に山一證券のある元社員の話がでてきます。その元社員は、再就職先で役員の不正(タクシー代のカラ請求)を発見しそれを上層部に報告したことで、社内で干されてしまいました。
その不正を知った別の社員は「いいなあ、税金取られない小遣いが毎月入るんだ」とうらやましがっていたそうです。ただ、その山一の元社員は、そういった幹部の不正がやがて組織を大きくむしばんでいくことを身をもって経験しています。そこで、指摘すれば恨みを買ってトラブルになることは覚悟の上で、上層部に報告したのです。
さて、みなさんはこれをどのように考えるでしょうか?
私は、このような社員がいることはむしろ、会社にとって大きな財産だと思います。ただ、外部への通報によりその不正が大きく知られることは会社にとってはマイナスが多くあります。
外部に行く前に、それを社内で解決できることが、会社にとっても、社員にとっても望ましいのは言うまでもありません。そのためには、社内通報制度や相談窓口の設置などの整備を行っておくことが有効です。
会社と社員、一緒に良くなっていけるといいですね。
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企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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