日本統治下の台湾で、その発展や台湾の地を守るため尽力した多くの日本人たち。台湾の人々の感謝の気持は今も厚く、「神様」として祀られている日本人が存在することもよく知られています。台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では今回、台南市で「飛虎将軍」として祀られている旧日本兵の杉浦茂峰氏をはじめ、台湾人民が慕い崇め続ける日本人のエピソードを紹介。さらに中国人により捏造され台湾の教科書にも掲載されていた美談の「その後」についても取り上げています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【台湾】台湾で神様となった日本人が結ぶ新たな日台の絆
新たに結ばれた日台の絆。台湾で神として祀られる日本人が残したもの
● 台湾・台南市 茨城県那珂市と友好交流協定 地元の廟が祭る旧日本兵の縁で
報道によると、5月6日、台湾の台南市と茨城県那珂市が友好交流協定を結びました。これは、台南市の飛虎将軍廟に祀られている旧日本兵・杉浦茂峰の母親が那珂市出身であるという縁から実現したものです。
杉浦茂峰は海軍のパイロットで、1944(昭和19)年10月12日、台南が空襲を受けたため、迎撃のためゼロ戦で出撃。ところが米軍機との交戦で被弾し、機体は墜落を余儀なくされたのですが、すぐに脱出することなく、居住地を避けて畑や養殖池のある場所へ機体を向けてから、落下傘で脱出しました。しかし、敵戦闘機の機銃掃射により落下傘が破れ、地面に落下して亡くなったのでした。
墜落時にすぐ脱出すれば機銃掃射を受けることもなかったかもしれないのに、自分のことより住民の命を優先させたその自己犠牲の精神に多くの台湾人は感動し、語り継がれてきたのです。
そして1971年には地元住民らにより、杉浦を祭る祠が建立され、93年に「飛虎将軍廟」として改築されたわけです。廟内では朝に君が代が流され、杉浦の生誕祭など関係行事も年4回行われているそうです。
また、飛虎将軍の話は、地元の小学校の教科書にも掲載され、5カ国語に翻訳されているとのこと。こうした故事は、那珂市のホームページにも掲載されています。
日台南市政府永華市政センターで行われた調印式で、黄偉哲台南市長は、農産物、教育、スポーツ、相互訪問交流などで那珂市との絆が深められるとし、友好関係の発展に期待を寄せました。
また、先崎光那珂市長の長年にわたる相互交流への支持に感謝を示し、協定締結ができることをとても光栄だと挨拶し、7月末に台南で台湾と日本の交流促進を目指して行われる台日交流サミットに、那珂市議の参加を呼びかけました。一方、先崎市長は、協定締結は双方の都市にとって極めて重要な意義があると語っています。
玉砕命令から2,000人の台湾人兵士を救った海軍巡査隊長
このように、台湾で神として崇められている日本人は、他にもいます。たとえば、その一人が、広枝音右衛門警部です。広枝は明治38(1905)年、神奈川県小田原に生まれました。日大予科まで進学しましたが、昭和3(1928)年に幹部候補生として佐倉歩兵第五七連隊に入隊。除隊後は小学校の教員となり、やがて台湾にわたって総督府巡査として警部にまで昇進した人物です。
昭和18年から海軍巡査隊長に任命され、2,000人の台湾人志願兵や軍属を連れてマニラにわたり、巡査隊の訓練と治安維持の任務にあたりました。しかし、昭和20年2月、米軍上陸の情報が伝えられると、軍上層部から巡査隊に手榴弾が配られ、全員玉砕の命令が下りました。
広枝は苦慮したあげく、台湾人兵士の命だけは保証するようにと米軍にかけあい、2,000人の隊員に向かって言いました。
「諸君はよく国のために戦ってきた。しかし、今ここで軍の命令どおりに犬死にすることはない。祖国台湾には諸君らの生還を心から願っている家族が待っているのだ。責任は日本人の私がすべて取る。全員、米軍の捕虜となろうとも生きて帰ってくれ」
この言葉に、一同はただただすすり泣くだけだったといいます。広枝は昭和20年2月23日、拳銃で自決しました。40歳でした。このおかげで戦後、台湾人部下たちは全員台湾に帰国することができたのです。
昭和58年、小隊長を務めた劉維添は、かつての隊長が自決した地を訪れて、広枝隊長終焉の地の土を集め、茨城県に住むフミ夫人の手に渡しました。その夫人も鬼籍の人となり、広枝隊長の位牌とともに、かつての部下だった新竹警友会の人々の手によって苗栗県獅頭山の勧化堂に祀られています。
台湾の平地にて崇められているもうひとりの警官は、警察服に警察帽、サーベルを腰から下げて立派なほおひげを蓄えていた森川清治郎巡査です。今では、嘉義県東石郷副瀬村にある富安宮に、彼の彫像が祀られています。
森川巡査は文久元(1861)年横浜に生まれました。台湾にわたったのは明治30年、日本による台湾領有3年目の時でした。森川は家族を連れて台南州の村に赴任しました。警官の役割として治安維持がありますが、森川は決して力で押さえようとはしませんでした。
とにかく仕事熱心、教育熱心でした。小学校がまだつくられていない時代だったため、派出所の隣に寺子屋を建てて子供たちに勉強を教え、農民には農業指導をし、病人には薬を調合するなど、人々の生活全般に細かく心を配ったのです。いってみれば、日本の田舎によく見られる面倒見の良いおまわりさんです。
漁業と農業を兼業しても暮らしが貧しい村の実情を知った森川は、村人のために税金の減免を何度も総督府に嘆願しました。しかし上司は、現地住民から慕われている森川のことを、村人を扇動する反動的分子と見なし、ついに訓戒処分が下されます。
森川は、これに抗議するため、村の慶福堂にて村田銃で自殺をしてしまいました。享年42、台湾に渡ってから5年目のことでした。村人は森川巡査の徳を讚え、生前の姿を模して神体をつくり義愛公と命名して、それを祀ったのです。
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台湾人を激怒させた『呉鳳の物語』という中国の捏造ストーリー
戦後、中国大陸から入ってきた警察を見た台湾人は、日本人警官とのあまりの違いに大きなショックを受けました。中国人警官は、買い物をするときに金を払う習慣さえなく、ほしいままにタダで奪っていくのが彼らの習わしで、逆に何かをやってやる時にはどんなに細かいことでもワイロがなければ動きませんでした。
そんな中国人が「犠牲精神」の美談として捏造した物語に、『呉鳳の物語』というものがあります。これは、かつて台湾の小学校の教科書でも取り上げられていました。そのストーリーを簡単に紹介しましょう。
清国時代、「生蕃」の通事(理蕃の地方官吏)に呉鳳という者がいました。彼は原住民の間では、親しまれ慕われていた人物です。呉鳳の目的は、「出草」(首狩り)の悪習を改めさせることであり、なんとかいい方法はないかと思案していました。
ある日呉鳳は、これが最後だとの約束で首狩りを皆に許しました。彼らもこれに納得し、最後の「出草」を行ったのです。ところが首を狩られたのは、なんと、彼らが親しみ尊敬していた呉鳳本人でした。人々は、これを痛く悲しみ反省し、以後は首狩りを絶対にしないと誓ったのです。
こうして原住民の首狩りの悪習はなくなったという美談です。しかし実際には、清国の通事は、たいてい圧迫、搾取、略奪、詐欺などの悪事を山地でやり尽くした者が多く、「現住民の娘を何人も妾として囲っている悪代官」と言われ、原住民から忌み嫌われていました。
呉鳳という人物もその一人でした。このような歴史捏造に対して、平成元(1989)年に李登輝が総統に就任してからは、台湾の民主化が進んだこともあり、呉鳳神話の捏造が暴かれるようになりました。その結果、嘉義の呉鳳の銅像は原住民に打ち壊され、記念館には火がつけられたのです。
この騒ぎから、呉鳳郷という地名も阿里山郷に変更され、教科書からも呉鳳の物語は削除されました。
こうして台湾では、台湾人に本当に慕われてきた日本人が祀られるようになっていったわけです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年5月8日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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