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信教の自由があれば不法行為は許されるのか?解散命令に“逆ギレ”した旧統一教会「まったく的外れな主張」

3月25日、東京地裁により解散命令が下された旧統一教会。関係者はこの判断をどのように見たのでしょうか。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、著者で同教団にかつて信者として身を置いていたジャーナリストの多田文明さんが、文科省の解散命令申立書の内容や東京地裁が出した決定文を詳しく解説。さらに解散命令の流れを完全に作ってしまった旧統一教会の姿勢を、「ここだけの話」として綴っています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:旧統一教会への解散命令の司法判断 決定文から、裁判所は何をどう見ていたのか。元信者の視点から読み解きます

元信者が読み解く。統一教会に解散命令を出した東京高裁は教団の何を問題視したのか

「組織性、悪質性、継続性」という解散命令の要件

文部科学大臣が、23年10月13日、解散命令を申し立ててから、約1年半かかりました。やっと出たとの思いです。40年以上にわたる被害に対して、ようやく司法の判断が出たことに感慨深いものを抱いています。

1年半は長い時にも感じられますが、文科省がヒアリングした人数は170人にもおよび、被害者らの膨大な数の陳述書や、5,000点もの証拠・資料を丹念にみて、結論を出すわけですから、相当な時間が必要だったと思います。

旧統一教会の解散命令請求をするにあたって、文科省はわかりやすい形で、解散命令の要件として「組織性、悪質性、継続性」という言葉を使いました。

教団は全国で、先祖の因縁などの霊の恐怖を煽りながら、霊感商法でものを売り、教団名を隠しての布教活動を行い、教義を信じ込んだ人に対しての悪質な高額献金の勧誘行為を続けました。

私自身も元信者として、教団の組織性、悪質性は身をもって知っていましたが、取材を進めるなかで、全国には私が知る以上のひどい勧誘実態があることがわかりました。

当然に、裁判所に出された元信者の陳述書からも、それはわかることです。

それが「その宗教活動の過程で生じた、信者によって行われた不法行為に該当する献金勧誘などの行為によって、類例のない甚大な被害を生じさせ」という裁判所の厳しい指摘になっていると思います。

すべて改善されたように見せかけるのが得意な教団

次に「継続性」についてです。

教団は、猫をかぶって、すべて改善されたように見せかけて、問題が起きていないようにふるまうのが得意です。表面上の姿にだまされた自民党の政治家たちが、選挙で当選するために、霊感商法などのお金集めの指示をしてきた教団と手を結んできたことは、すでに明らかになっている通りです。

以前の会見で、教団は「2009年にコンプライアンス(法令遵守)宣言して、教会改革をして以降、民法上の大きな問題も発生していない」と話しましたが、実際には、違っていました。

決定文では、この点を指摘しています。

本来行われるべき調査や改善への指導や制裁などが行われた形跡がないとして「宣言以降、旧統一教会の組織体質や相当数の信者の行動の在り方を大きく変化させるような根本的な対策が講じられたとはいえない」としています。

そして「問題状況は相当に根深く、宣言後にも直ちに大きく改善されることはなく、今もなお見過ごせない程度に残っているとみられる。和解や示談などを踏まえると、宣言後も179人程度について不法行為があり、約9億8,500万円程度の損害が生じたと認められる」と断じます。

ここは非常に大きなポイントの一つです。

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そもそも「コンプライアンス宣言」とはいかなるものか

教団が会見で説明した2009年のコンプライアンス宣言は次のようなものです。

  1. 民事裁判で問題にされたような献金と先祖の因縁を殊更に結びつける、または威迫・困惑を伴う献金の奨励や勧誘したりする行為をしてはならない。
  2. 信者への献金の奨励や勧誘行為はあくまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、十分配慮しなければならない。

しかしこれらが守られていない実態が浮き彫りになったわけです。

しかしすでに、国会内で行われた旧統一教会問題のヒアリングのなかでも、コンプラインス宣言後に高額献金の勧誘を上から指示されていた悪質な事実が明かされて、私自身、絶句した覚えがあります。

繰り返された通常の宗教団体とはいえない悪質な行為

70代のAさんは、平成26(2014)年に統一教会とかかわり、昨年の11月に脱会していますが、献金や物品購入で2,500万円以上を払い、被害に遭っています。

2,000万円以上の献金をさせられた後のことです。

Aさんは教団の婦人部長に「先祖解怨のためのお金がない」と話したところ、息子さんのお金の状況を聞かれます。

「『息子名義の定期預金はあるが、私には下せない』と答えると、婦人部長は『統一教会の男性に委任状を書いてもらえばよい』と指示してきました。私は息子の定期預金を、しかも無断で他人に委任状を書いてもらうことまでして、先祖解怨のお金を用立てなければならないことに、良心の呵責と罪悪感を覚えましたが、家庭が幸せになるためには、先祖の因縁を解決しなければならないといわれ続けてきたので、そうするしかないと思って、婦人部長の指図に従うしかありませんでした」とAさんは、当時の辛い胸の内を語ります。

そして「息子のお金を無断で(統一教会に献金したことは)息子に本当に申し訳ないことをしたと思っています。脱会後、息子には正直に話して謝りました」とAさんは言葉を詰まらせます。

高齢の女性にこのような行為を要請するなど、通常の宗教団体とはいえない悪質な行為です。

70代女性は2014年に入信していますので、コンプライアンス宣言から、かなりたってから行われた行為です。

絵にかいた餅に過ぎなかった教団のコンプライアンス宣言

「統一教会の信者に委任状を書いてもらえばよい」との言葉のどこにコンプライアンス宣言の遵守があるのでしょうか。

しかも、2022年に社会に高額献金などの被害実態が明らかになるまで、明らかにせず、何も対応しようとしない。あわよくば、こうした被害を闇に葬ろうとする姿勢すら感じてしまいます。コンプライアンス宣言が、いかに絵にかいた餅であるかをものがたっています。

おそらく、A子さんのような事例は、全国で起きていたはずです。その被害が約9億円以上という数字になって表れてきています。

解散命令の決定のなかで「継続性」と思われるの点についての言及もあります。

コンプラインス宣言以降も「宣言以降も根本的な対策をせず、不十分な対応に終始している。解散命令は必要かつやむを得ない」としています。

これは、当然の判断であり、教団側は「国家による、信教の自由への侵害だ」と主張をしていますが、信教の自由があれば、このような不法行為は許されるというのでしょうか。まったく的外れな主張に聞こえています。

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再び被害を生じさせる懸念すら抱かざるを得ない会長の言葉

教団側は、解散命令の決定をうけて、ホームページに文章を出して、会見も行い、田中会長は冒頭で「背教者の主張をうのみにした決定は承服できない」と憤りをあらわにしたと報道されています。

これは、信者向けに出した言葉のように思われますが、そもそも、こうした発言をすること自体、ダメなことで、過去の引き起こした教団の被害の責任を見ていないことの表れだと私はみています。

教団の信者たちは神側で、世の中にいる人たちはサタンの側とわけて考えて、教団によって救わなければならない存在とみて、霊感商法を通じて、見えてもいない霊の存在を使いながら、「あなたは先祖の因縁で不幸になっている」と嘘をついて、不安をあおり、高額な壺などを売り、家系図などをとって、献金をさせてきました。

二度と金銭的被害を繰り返さないと思う心があるならば、「背教者の言葉」という、反対する者をサタン側で、自分たちは神側としてみるような言葉は、絶対に出てこないはずだからです。再び、同じような被害を生じさせる懸念すら感じさせる言葉です。

裁判所はその点をしっかりみているように思います。

「今も類似の被害を生じさせるおそれがある状況が残っている。旧統一教会に事態の改善を図ることを期待するのは困難というべき」としていますが、私もそう思います。

「罪の告白」をしなかった教団が招いた重大な結果

教団は、即時抗告の方針を示していますので、今後、解散命令の争いは、高等裁判所に移ることになります。しかし被害を出した事実は消えることはありませんし、何より被害者への謝罪をせずに、被害者に対しての賠償にも応じていない状況です。これでは、今後も被害が起こり続ける懸念はくすぶり続けている状況ですので、高裁でも同じ決定がでるものと考えています。

ここだけの話をすれば、やはり文化庁が7回の質問権を行使した時に「回答しない」という態度を取ったことが一番、ダメだったと思います。不都合なことに答えない姿勢が、過料10万円の決定となり、最高裁にてそれが確定して、解散命令の流れを完全に作りました。

正直なところ、教団は「答えなかった」というより、「被害を引き起こした真実に向き合って、質問に答えなかった」のだと思います。民法の不法行為の数々が露呈するのを恐れてかもしれません。

聖書をもとにして、教義を教えている宗教団体であるにもかかわらず「罪の告白」をしなかったこの行為は、結果として自らの首を絞めることになったように思います。

(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2025年3月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録後、3月分のバックナンバーをお求めの上お楽しみください)

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image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

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悪徳業者などへの潜入取材した数は100ヶ所以上。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動し、多数のテレビ・ラジオに出演している。現在はヤフーニュースのオーサ・公式コメンテーターとして、コメントやニュース記事を執筆中。消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」(2017年~18年)の委員も務めた。雑誌「ダカーポ」にて、悪徳商法に誘われたらついていく連載を担当。それをまとめた著書「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)はフジテレビで番組化され、ゴールデン枠の特番で第8弾まで放送された。新刊11月予定「信じてみたら、ダマされる。~元統一教会信者だから書けたマインドコントロールの手口」(清談社清談社Publico)

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【著者】 多田文明 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 14日・28日

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