一時閉店に追い込まれた「すき家」は実は被害者で、外国勢力の工作によって商品にネズミやゴキブリを混入されたのだ――とする説がネット上を駆けめぐっている。国産米にこだわる愛国牛丼チェーンが中国に狙われた、というのだが、実際はどうなのか?
「すき家」は攻撃されている!? アルピニストの野口氏も持論
大手牛丼チェーンの「すき家」で、商品にネズミやゴキブリなどの異物混入が相次いでいる問題。
「すき家」は、きょう31日9時から来月4日9時まで、ショッピングセンター内などの一部店舗を除く全店を一時閉店して害虫・害獣対策を行うとしているが、消費者から不安の声が多数あがっているのは周知のとおりだ。
ただその一方、動画サイトやSNSでは、人々の不安を打ち消すかのように、ある真偽不明の“異説”が急拡散している。
それによると、実は「すき家」は“被害者”で、“外国勢力にハメられた”可能性がある――というのだ。実際のところはどうなのか?ネットメディア編集デスクが説明する。
「味噌汁にネズミが混入したのが1月21日で、テイクアウト商品にゴキブリが混入したのが今月28日。飲食店としては致命的な“N”と“G”が連続したことで、≪ネズミは味噌汁などの熱を嫌う。常識では考えられない≫≪すき家が攻撃を受けているのでは?≫といった見方が急浮上しました」(ネットメディア編集デスク)
この流れに反応したのが、7大陸最高峰を世界最年少で登頂したアルピニストの野口健氏(51)だ。野口氏は31日にXを更新し、
「ホンマかいな???と感じている人、多いのではないでしょうか。普通に考えて仮に本当にネズミが厨房の鍋の中に入っていたら、店員さんがお皿に移す時に気がつくでしょうに。意図的にやった行為なら話は別ですが。いずれにせよ何かしらかの意図を感じてしまう。そういえば以前、中国の餃子工場で毒を入れた人がいて事件になりましたね。その手の話なのか?客側による嫌がらせ的な犯行なのか? 分かりませんが、確かに何か臭う気がしますね…」
と持論を展開した。
“すき家の真実”は、陰謀論の域を出ない与太話
野口氏ほどの著名人も疑っているとなると、やはり「すき家」は本当に、中国などの外国勢力から攻撃を受けているのだろうか。
「それはどうでしょうか…。野口さんは前後の話をご存じないのかもしれません。経緯を振り返ると、まずネズミ入り味噌汁の画像がSNSに出回り、被害者が箸ではなくスプーンのようなものでネズミをすくっている点が注目されました。そこから“味噌汁を箸で食べていない⇒日本人ではないのでは?⇒外国人による嫌がらせかもしれない⇒中国人による攻撃に違いない”と、噂がどんどんエスカレートしていったのです。現在は、≪『すき家』は国産米にこだわる愛国チェーン店で、だから中国から攻撃を受けているんだ!≫という壮大なストーリーに発展しています。ただ、これを積極的に拡散しているのは、いわゆるエセ保守と呼ばれる人々が中心のようで、あくまで陰謀論の域を出ない与太話と捉えるべきだと思います」(前出のネットメディア編集デスク)
理由は不明ながら、なぜか日本保守党界隈との親和性が極めて高い“すき家陰謀論”。これを与太話と言い切れる理由は他にもある。(次ページに続く)
日本人ならネズミは箸でいけ!? さすがに厳しいって…
味噌汁に混入した異物(ネズミ)をスプーンですくっているから、日本人ではなく外国人に違いない――。このような飛躍した見方は陰謀論にすぎず、まったくもって不合理だという。
先のネットメディア編集デスクが指摘する。
「まず、昨今は丼物をスプーンで食べる人が増えており、さほど珍しい光景ではありません。ご飯を最後のひと粒まで高速できれいにいただけるので合理的です。日本人でも、牛丼店でスプーンを愛用する人は少なくないんですよ。
ただ、ここでは巷の説にならって、“丼を箸で食べていた”と仮定しましょう。ふと、つけあわせの味噌汁に目をやると、ネズミがインしていましたと。そのとき、あなたが次に取るアクションは?よくイメージしてください。
はたして、直前まで丼をワシワシかきこんでいた箸で、味噌汁内のネズミをダイレクトに掴みにいけるでしょうか?そのときの感触を想像してください。まず無理でしょう。箸は汚したくないのが人情であり、日本の心です。気持ち悪すぎますからね。
その結果、そこらへんの手頃なスプーンでネズミをすくうことになってしまった――と考えるほうが、よほど自然なはず。“スプーンを使っているから中国人に違いない”といった決めつけは、“日本人はネズミを箸でいくもの”という危険思想と表裏一体なので、くれぐれも注意が必要です」(前出のネットメディア編集デスク)
一連の異物混入は、「すき家」自身が公式に認めていることだ。トラブルが発生した店舗のユーザー評価は総じて低く、元クルーなど関係者と思しき人物からも「すき家」の衛生管理に批判の声が出ている。
スプーン使用の有無によって“国籍透視”をしてしまうのは、やはり著しく合理性に欠けるようだ。
最近では、遅れてスマホデビューしたばかりの年老いた両親や祖父母が、この手の陰謀論を真に受けて“真実を知ってしまう”ケースが増えているとされる。もしあなたの大切な人が“すき家陰謀論”に洗脳されそうになっていたら、手遅れになる前に“じゃあ、あなたはネズミをお箸でいけるの?”と聞いてみるといいかもしれない。
【関連】『月曜から夜ふかし』は打ち切り濃厚。「中国人はカラス食べる」捏造発覚で「街頭インタビュー全部ヤラセ」の疑念広がる
image by: StreetVJ / Shutterstock.com