クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りする新番組『Why So Good?』。毎週プロフェッショナルや経営者をゲストに迎え、「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか」──成功の裏側にある思考を紐解く30分番組だ。
MC・コメンテーターを務めるのは、元日本マイクロソフト業務執行役員で、これまで800社超の働き方改革を支援してきた株式会社クロスリバー代表・越川慎司氏。アシスタントMCは上條美沙子。今回のゲストは、法人契約型のAI医療サポートを手がける株式会社URDoctor 代表取締役CEO・医師の唐澤孝通氏だ。
年間約3,000台の救急車を受け入れる病院や心臓専門病院で臨床経験を積んだ循環器内科医が、なぜ「働く人の健康」を支える会社を立ち上げたのか。産業医だけでは拾いきれない社員の不調を、LINEとAI、そして専門医チームでどう救い上げるのか──。生成AIを「情報収集」に徹させ、「決断と責任は人間が担う」という設計思想の核心が、余すところなく語られた。
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唐澤孝通のグッド──「キャリアも健康も諦めない職場」をつくる法人契約型AI医療サポート
上條:本日一組目のゲストは、株式会社URDoctor代表取締役CEO、そして医師の唐澤孝通さんです。循環器内科医として、年間およそ3,000台の救急車を受け入れる病院や心臓専門病院などで臨床経験を積まれてきました。月150時間以上の残業をしながら、命に直結する救急医療の最前線に向き合う中で、多くの人が忙しさから病気や心の不調を後回しにし、キャリアを諦める姿を目の当たりにしてこられたそうです。
越川:いや、もう興味津々ですね。ちょっと尺が足りないかもしれないぐらい。僕も働きすぎて、実は精神疾患を2回やってるんですよ。残業時間が最高の時は月300時間やった時があって。だからいろいろ聞きたいなと思っています。では早速ですが、唐澤さんが今回いちばん届けたいグッドなポイントを教えてもらっていいですか。
唐澤:ありがとうございます。今回ご紹介する私のグッドは、「キャリアも健康も諦めない職場」をつくる、法人契約型のAI医療サポートです。企業と法人契約を結び、従業員の方が無料でLINEから医療・メンタルの相談ができる仕組みを提供しています。
越川:あ、法人契約型なんですね。これがポイントですね。どうしても産業医に任せがち──もっと言葉を選ばずに言うと、産業医に“放置”しがち。産業医って基本的には「何かあったら対応する」ディフェンシブな守りの立場ですけど、いまはディフェンシブに対応すると、もう手遅れなんですよ。
産業医の限界と「攻めのヒアリング」
唐澤:そこがすごく難しいところだと思っていて。産業医の先生も、来てくれれば話は解決できるけれど、なかなか拾いきれない。従業員50名以上の企業には産業医の選定義務がありますが、中小企業にはそもそも産業医がいない。なので中小企業では我々がLINEから声を拾いますし、産業医がいらっしゃる企業では、その先生と連携して「攻めのヒアリング」をさせていただいています。
越川:そうですよね。実はうちの会社にも産業医のメンバーがいるんですけど、産業医って一社で1,000人ではなく、何十社も担当している。だから細かくは対応できず、基本的には「連絡が来たら面談する」という後手に回りがちなんです。そこに課題を感じているということですか。
唐澤:そうですね。やっぱり会社が雇った産業医の先生に若い方が相談しに行くのは、心理的なハードルがすごく高い。「自分の人事評価が悪くなるかもしれない」と。だから第三者が匿名で課題を抽出して、産業医の先生につなぐ、いない場合は我々の専門医につなぐ──そういうサービスがあればいいなと思って作りました。
越川:いや、素晴らしいですね。僕も精神疾患をやった時、最初に医師に相談するのがめちゃくちゃハードルが高かった。精神科医となるとなおさらで、「そこに行ったら自分は終わりだ」という感覚で足を踏み出せない。その手前の段階でサポートされるということなんですね。
「会社が雇った産業医には本音を言えない。“第三者が匿名で”だからこそ拾える声がある」
AIは“情報収集”、決断と責任は人間が担う──二重構造の設計思想
唐澤:我々はLINEで「心の相談」と「体の相談」を選べるようになっていて、それを押していただくと、自動でAIが問診をしてくれるんです。健康診断の結果って、紙で出っぱなしで、いざという時に使えないことが多い。なのでアプリとLINEを連携させて、そのデータをもとに、その人にオーダーメイドで対応していきます。
越川:仕組みだけ聞くと、ちょっとドライな感じもするじゃないですか。AIが処理して、AIが「大丈夫ですか?」なんて声をかけそうな。でも、裏側はAIだけれども、基本は人間が設計しているのがポイントなんですかね。
唐澤:はい。問診で情報を吸い取るところは基本的にAIですが、その後は専門医チームがオーダーメイドで回答する「二重構造」になっています。医療AIができないことって、僕は「責任を取ること」だと思うんですよね。だからこそ、人間が、そして専門医がちゃんと責任を持って一人ひとりにお伝えする、という設計にしています。
越川:いいですね。決断は人間、というのがポイントですよね。LINEというのも、結構カジュアルな感じなんですか。
唐澤:そうですね。いまの若い方のコミュニケーションツールとして普及していますし、「LINEからなら気軽に」というのと、自分でお金をかけて健康ケアはしないけれど、「会社が信用して契約していて、無料で相談できるなら相談してみよう」と、心理的ハードルを越えやすいのがポイントかなと思います。
「医療AIにできないのは“責任を取ること”。だから決断と責任は人間が担う」
なぜ「予防」なのか──自分では気づけないSOS
越川:なんでこれを始めようと思ったんですか。
唐澤:僕の周りにもいましたし、心の問題も体の問題も、「本当はもっと早く介入していれば、こんなに悪くならなかったのに」というケースがありすぎて。
上條:ご自身のご経験からということですよね。
越川:それは僕も当事者だったのでよくわかります。いまも800社を支援しているので、そういう相談がたくさん来る。でもメンタルの問題ってすごくセンシティブで、なかなか深く入れない。そこで第三者という立場がポイントなんですね。
唐澤:そうなんです。ストレスチェックもそうですが、第三者だから本音を言える。その「本音と建前」の本音を企業ごとに抽出して、企業にフィードバックしています。
越川:処置じゃなくて予防に力を入れようと思ったのは、どうしてですか。
唐澤:自分の心の不調って、自分で察知するのがすごく難しいんです。「食欲がなんとなく落ちた」「夜眠れなくなった」から始まっているのに、それを“心の相談”だと思わない人が多い。だからLINEから気軽に、というところで紐解いて、引きずり出してくることを考えました。
越川:これ、僕は当事者なのでよくわかるんですよ。最初は睡眠障害から来る。ある日、朝起きたら靴の履き方がわからなくなって、気づいたら左が革靴で右がサンダル、みたいな。これ、自分じゃ気づけないんですよ。こういう相談もLINEで受けられるということですか。
唐澤:もちろんです。それぞれの専門家がチームとしているので、上がってきた課題をそれぞれに振ってコメントをもらい、フィードバックする。病院を受診する段階では保険診療でやってもらうので、受ける側も自己負担3割で済む。そこが予防医療の強みです。
“優秀な人を辞めさせない”ほうが、採用より圧倒的にコスパが高い
越川:いま特に予想外なのは、活躍している人たちが精神疾患になってしまっていること。あと多いのが中間管理職。課長・部長層がいきなり労働時間が増えて、突然出社できなくなる。人手不足の会社は、いろいろなデータで7割近くが人手不足と言っていますが、採用よりも「優秀な人を辞めさせない」ほうが圧倒的にコスパが高い。新しい人を雇うコストと、優秀な人を辞めさせないコストで言うと、後者は3分の1で済むんですよ。
唐澤:そう思います。採用業界が盛り上がっているぶん、そちらに目が向きがちですが、教育コストってすごくかかっている。人が人に教えるのは本当に時間がかかる。プレイヤーから上がったマネージャー層が働き続けられることにフォーカスするのが、本当にいい職場なんじゃないかなと。そういう支援ができればと思っています。
越川:これがあると人事部も楽になりますよね。人事って、精神疾患の方のケア以上に、評価・面接・制度設計・労務管理と、やらなきゃいけないことが山ほどある。本当は緊急度が高い、優秀な社員のメンタル不調をケアしなきゃいけないのに、忙しくて無理ですよね。そこをサービスでケアして、しかも予防に回している。
唐澤:はい、予防医療です。
「新規採用より“辞めさせない”ほうが、コストは3分の1で済む」
循環器内科医が起業したワケ──「医者はチームでいい」
越川:プロフィールを見ると予想外ですよね。こういうサービスをやる方は精神科医が多いのに、唐澤さんは循環器内科医。立ち上げるには、何か捨てなきゃいけないものもあったんじゃないですか。
唐澤:保険診療の最前線でカテーテル手術をしていた立場で、高齢者医療もすごくやりがいがありました。でも「自分は医者として本当に何をやりたいのか」と考えた時に、「働き続ける人たちに健康に働き続けてほしい」という思いが強くなってきて、会社を作ろうと。僕の専門は確かに心臓ですが、医者はチームでいい。いまも医療法人の院長と理事をやっているので、チームで対応できればと思いついたんです。
越川:素晴らしすぎますね。医師の方々は、2024年の労働基準法改正で時間外労働の規制が入った。医療も教育も、今回のラジオを含めたメディア業界も、時間外労働なんて考えたことのない業界でした。いきなり法律で環境が変わる中でこのサービスを立ち上げたのは、原体験があってのことですか。
唐澤:そうですね。自分自身もハードに働いていたし、ハードに働き続けることが当たり前の世界にいました。でも時代が変わり、モラルや“当たり前”も変わっていく中で、若い人たちにできることは何か、というところにフィットできればと思っています。
上條:新しい会社に入って慣れるだけでも大変という時に、このシステムがあるだけでも、私はすごく安心するなと思いました。
大切にするマイルール──専門性に“正当な対価”を
越川:社会に求められているサービスだと思いますが、維持・継続は正直難しいところもある。多くの方を救いたいということと、経営としてしっかりしなきゃいけないということ。その両立で、唐澤さんが大切にしているマイルールがあれば教えてください。
唐澤:対応する側が人手不足になって、働き方を過酷にしてしまったら困る、というのが一つ。もう一つは、僕自身が「医療従事者の専門性に価値を作りたい」と思っているんです。保険診療だとお金がある程度限られていて、働けば働くほど優秀な人が損をしていく、やりがい搾取されがちな業界。だからこそ、協力してくれる専門医チームを増やして、彼らの専門性や知識、経験にインセンティブという形で報酬をつけて、一緒に広がっていければと思っています。
越川:素晴らしいインセンティブですね。継続のためには重要ですよね。
今後のビジョン──自治体と連携し、人手不足の現場へ
越川:最後に、今日勇気をもらったリスナーも多いと思います。唐澤さんの今後のビジョンを教えてもらえますか。
唐澤:従業員数が少ないところは定着せずすぐ辞めてしまう。いま本当に必要なのは、ものづくりや観光など、大変な仕事に就く人たちが働き続けられる職場を、業界を問わず広げていくこと。いま自治体の方ともお話しさせていただいているので、頑張ります。
越川:自治体と民間企業の連携は欠かせないですね。こういうサービスは個人に直接提供する形が多いけれど、その余裕がない方々が多い。ぜひ自治体と、できれば観光庁とも連携してもらいたい。僕もいろんな人を紹介したいくらいです。今日は本当にワクワクをいただきました。楽しすぎて、これからちょっと元気に働けそうだなと思ってきました。ありがとうございました。
「働き続ける人が、健康に働き続けられる職場を──業界を問わず広げていきたい」
番組概要
- 番組名:Why So Good?
- 放送局:interfm
- 放送日時:毎週木曜25:00~25:30
- 出演:越川慎司氏(株式会社クロスリバー 代表取締役)
上條美沙子氏 - ゲスト出演:唐澤孝通氏(株式会社URDoctor 代表取締役CEO・医師)
- 公式サイト:https://ur-doctor.com/ - プロデューサー:エダコDX
- ラジオ本編はこちらから https://www.interfm.co.jp/whysogood
- interfm(東京:89.7MHz 横浜:76.5 MHz) https://www.interfm.co.jp/
- 番組TikTok(https://www.tiktok.com/@whysogood_radio)
※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです