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忌野清志郎も歌っていた。世界中で戦争が起きているというのに、なぜ今「反戦歌」が聞こえてこないのか?

世界中のさまざまな場所で今起きてしまっている「戦争」。しかし、戦争に反対するための歌「反戦歌」がどこからも聞こえてこない、と嘆くのは、生きづらさを抱える人たちの支援に取り組むジャーナリストの引地達也さん。引地さんは自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の中で、米国の代表的な「反戦歌」を紹介しながら、今こそもっと反戦歌があふれてよいはずだと語ります。

あふれる爆撃の中でも、世の中に「反戦歌」が響かない

ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ、シリア、スーダン─。

戦争や戦況のニュースが日本や世界のメディアから絶え間なく伝えられるが、反戦歌はどこからも聞こえてこない。

今、ウクライナやパレスチナに思いを寄せる気持ちは多くの人が持っていると思われるが、街頭では表現されず、言葉をメロディーに乗せて歌い、共有することも忘れてしまったようだ。

米国のトランプ政権は彼なりのやり方でロシアとウクライナの戦争を止めようとしているが、それは反戦歌が描く戦争の悲惨さを分かち合う世界観とは趣を異にするから、一般の人々が戦争を取引のように錯覚してしまうなど、戦争に対する世界の見方が変わってきたのかもしれない。

人が殺し合うことは変わらず、悲劇を大量生産する戦争を真正面から反対するメディアとして、今こそ反戦歌が必要なのだと思う。

ポップス音楽の発信地である米国には多くの反戦歌がある。

そのうち「花はどこへいった」と「風に吹かれて」は最も有名な反戦歌の2つである。

前者は、ピート・シーガーが発表したものだが、ピーター、ポール・アンド・マリーがカバーしたバージョンのほうが耳に馴染んでいるかもしれない。

キングストン・トリオ、ジョニー・リヴァース、ジョーン・バエズもカバーしている。

日本語訳詩バージョンでは、忌野清志郎、加藤登紀子、ダカーポ、ミスターチルドレン等、多くの歌手が切ないメロディーに言葉を乗せている。

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「花はどこへいった」のオリジナルは、ベトナム戦争の反戦歌として広まっている。歌詞の内容はロシアの作家、ミハイル・ショーロホフの大作「静かなるドン」から引用し、その曲調はウクライナ民謡を参考にしたとされる。

今、戦禍にあるウクライナとロシアの国境近くで生まれた反戦歌である皮肉は、この曲を作った時に、想像していたのだろうか。

「花はみんなどこへ行った。もう長い時が経つ。花は乙女たちが摘んでしまった。ああ、いつになったら分かるのだろう。乙女たちはどこへ行った。結婚した。若者たちはどこへ行った。軍服を着た。兵隊はどこへ行った。墓場へ行った」。

平易な英文は訳し方もいろいろと考えられ、その情景は広がり、解釈も自由だから想像力も膨らむ反戦歌だ。

ロシアとウクライナの国境に近いドン川流域のコサックの村を舞台にした作品は、今の争いの場所の風景につながる。

日本語詞では歌手によって歌詞の違いがあり、忌野清志郎は「野に咲く花はどこへいった、遠い昔の物語。野に咲く花は少女の胸に抱かれていた」と歌う。

野に咲く花と戦場と若者、その死が詩の中で展開されている。

メロディーはもちろん、歌詞の意味も共有できるこの歌は、今こそ歌われるべきかもしれない。

 「風に吹かれて」はノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの代表曲の1つで、本人曰く反戦歌として作ったものではないが、米国の公民権運動やベトナム戦争反対の意味合いを帯びてしまったのは、時代の産物ともいえる。

「男はどれほどの道を歩いていかなければならないのだろうか。人として認めて貰うまでに。白い鳩はいくつの海を渡らなければいけないのだろうか。砂浜で眠るまでに。砲弾はどれほど飛ばし合わなくてはいけないのか。永遠になくなるまでに。友よ、その答えは風に吹かれているのだ。そう、答えは風に吹かれている」。

そして彼はユダヤ人でありユダヤ教徒。

一時、キリスト教福音派に改宗したようだが、現在はユダヤ教に戻ったという。

ノーベル文学賞の歌手は、イスラエルによるパレスチナの攻撃をどう考え、そして「風に吹かれて」を歌うのだろうか。

世の中に戦争があまりに多いから、もっと反戦歌があふれてもよいはずである。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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