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中居正広「起訴」はあるか?初犯でも実刑を食らう罪を“認定”された元SMAPと“温床”を作ったフジテレビの大罪

元スマップ中居正広氏の女性トラブルを巡り、3月31日に第三者委員会が発表した調査報告書。そこで明らかとなった中居氏とフジテレビの想像をはるかに超える所業に各所から大きな非難の声が上がっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、報告書の内容を詳しく紹介・解説するとともに、自身が驚かざるを得なかった2つの事実を指摘。さらに中居氏が今後告訴される可能性についても検証しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:フジテレビのセクハラ体質

女性アナウンサーに対する二次加害行為も。フジテレビのセクハラ体質

このメルマガでは、芸能関係の問題はほとんど取り上げることはありませんが、今回の問題は、あたしもかつて男性から性暴力を受けた被害者の1人として、どうしても見過ごすことができません。そのため、異例中の異例ですが、取り上げることにしました。

元タレントの中居正広氏の女性トラブルを巡る問題で、フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビの第三者委員会は、3月31日、記者会見をひらき、300ページを超える調査報告書を公表しました。委員長をつとめる竹内朗弁護士は、同社のアナウンサーだった女性が「2023年6月2日、業務の延長線上で、中居正広氏のマンションで中居氏から性暴力による重大な人権侵害の被害を受けたものと断定した」との調査結果を報告しました。

報告書によると、被害女性は事件の4日後にはフジテレビの産業医師とアナウンス室長に6月2日の出来事を具体的に話して相談し、8月21日には当時の港浩一社長にも報告していました。また、編成幹部の2人は、7月12日に中居氏から「女性とトラブルになっている」と相談を受け、翌日には中居氏の事務所に出向いて対応を相談していました。

しかし、その編成幹部は、被害女性が入院しているのにも関わらず、この事案を「プライベートな男女間のトラブル」と判断したのです。そして、被害女性から中居氏へ「摂食障害と鬱で入院。やりたい仕事もできず、給料も減り、お金も無くあの日を悔やむばかり」という連絡があったとLINEで相談されても、「なかなかですね、、私から無邪気なLINEしてみましょうか??」と返していて、まったく重大な問題とは考えていなかった上に、加害者側に立った対応をしていたことが明らかになりました。

この編成幹部は、中居氏から頼まれて飲み会に参加する女性アナウンサーを手配し、事件後は中居氏の用意した100万円の見舞金を入院中の被害女性に届け、それを突き返されると、今度は中居氏のために弁護士を探していました。これがフジテレビの業務だというのですから呆れてしまいます。

第三者委員会は、港浩一社長(当時)も同年8月21日に報告を受けたにも関わらず、中居氏の番組出演を1年半に渡って継続させ、被害者救済を優先しなかったと指摘しました。そして「(港社長は)思考停止に陥り責任を回避しようとしていた」と厳しく批判しました。

この編成幹部や港社長らの対応により、女性は「(この会社は)大物タレントを守り社員を切り捨てる」と受け止めることとなり、その結果、女性に「孤独感や孤立感を生じさせた」と、第三者委員会は認定しました。そして、こうしたフジテレビ上層部の対応は「女性に対する二次加害行為に当たる」と断じました。

さらに第三者委員会は、今回の問題が発生した背景として「社員の性別・年齢・容姿などに着目して会合に呼んだり、会合中のセクハラ被害を黙認したりする同社の企業風土」を挙げ、「全社的にハラスメント被害が蔓延していた」と批判しました。呆れたことに、飲み会での接待要員として女性アナウンサーを同席させることを、同社の部長クラスの社員が「喜び組でも呼んどけ」と言い放っていた事実まで報告されたのです。

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社長として不適切と言わざるを得ない港浩一氏の行動

また、あたしが個人的に一番驚いたのは、港浩一社長の「当事者意識ゼロの振る舞い」です。今回の報告書によると「週刊文春」の報道を受けてフジテレビは2024年12月27日付でHPに公式リリースを出しましたが、この日の打ち合わせからリリースを発表するまでの間、社長以下役員は、誰1人として打ち合わせに参加しなかったというのです。で、この日、港浩一社長が何をしていたのかと言うと、昼間はゴルフを楽しんでいて、その後は会食と宴会をハシゴしていたのです。

報告書には、現場で報道対策に当たっていた社員らの「(港社長には)大きく失望した」という発言が記され、「ゴルフまでは容認するとしても、その後、報道対策チームの現場に戻らず、アルコールが入っていると思われる状態で意見のやりとりを継続していた態度に怒りを隠さない者が複数いた」と書かれていました。そして第三者委員会は「客観的に見ても会社として重大な危機管理が進行している最中に社長がとる行動として不適切であったと言わざるを得ない」と結んでいます。

とんねるずの2人を始め多くのタレントから「港っち」と呼ばれ、フジテレビの看板プロデューサーとして大ヒット番組を数多く手がけて来て、とうとう社長の座まで上り詰めた人物なのに、どこで間違ってしまったのでしょうか。今回の報告書では「日枝久氏が組織風土の醸成に与えた影響も大きい」と指摘しています。どんなに優れた大統領でも、同じ政権が長く続くと必ず上から腐敗が始まるため、民主主義国家では同じ人物が大統領をつとめられる任期の回数を定めています。フジテレビにはそれがなかったことが原因だったのでしょうか。

そして、次にあたしが驚いたことは、今回の調査結果では、何よりも重要な当事者からの聞き取り調査が行なわれていないという点です。今回の事案は当事者双方に守秘義務があることから、第三者委員会として「守秘義務の解除」を申し入れたところ、被害女性は全面的な守秘義務解除に同意しましたが、中居氏が解除に応じなかったため、直接の聞き取り調査ができなかったのです。そのため第三者委員会は、当事者間のLINEの内容、フジテレビ関係者の報告内容、関係者のヒアリング、客観資料などを精査した上で、事実認定を行なったと説明しました。

不祥事を起こしても説明責任を果たさずに逃げまくる自民党議員のような中居氏の態度に、あたしは1人の女性として怒りを禁じ得ません。あたしは性暴力を受けてから精神的に立ち直るまで、15年以上も掛かりました。その間、どれほど苦しんだか、自分のその場の性欲だけで犯罪を犯すような身勝手な人物には、被害者の苦しみなど1ミリも分からないのです。

今回、第三者委員会が指針としたのは、WHO(世界保健機構)が公表している「World Report on Violence and Health」の「Sexual Violence(性暴力)」の定義だそうです。WHOは「性暴力」を「強制力を用いたあらゆる性的な行為、性的な行為を求める試み、望まない性的な発言や誘い、売春、その他個人の性に向けられた行為を言い、被害者との関係性を問わず、家庭や職場を含むあらゆる環境で起こり得るものである。また、この定義における強制力とは、有形力に限らず、心理的な威圧、ゆすり、その他脅しが含まれるもので、その強制力の程度は問題とならない」と定めています。

これを踏まえた上で、第三者委員会は、中居氏が被害女性に行なった行為を「性暴力」と認定し、「性暴力には同意のない性的な行為が広く含まれており、性を使った暴力全般を意味する。当委員会は性暴力を重大な人権侵害行為の一つと認識している」と説明しました。

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中居氏が「法的処罰の対象」になる可能性はあるか

でも、法律の専門家である弁護士で構成された第三者委員会が「性暴力」と認定したということは、中居氏は今後、法的処罰の対象になってしまうのでしょうか。何故なら、かつては被害者が刑事告訴しない限り事件化しない「親告罪」だった性犯罪ですが、2017年に性犯罪は「親告罪」から「非親告罪」へと法改正され、被害者が刑事告訴しなくとも起訴される可能性のある犯罪へと厳罰化されたからです。

これに該当する性犯罪とは、

  1. 不同意性交致死傷罪(刑法177条、181条第2項、無期または6年以上の拘禁刑)
  2. 不同意性交等罪(刑法177条、5年以上の有期拘禁刑)
  3. 不同意わいせつ罪(刑法176条、6月以上10年以下の懲役)
  4. ストーカー規制法の各種違反行為(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)

の4種類です。

1から3までは、以前は「強制」と「準強制」に分けられていましたが、犯行の悪質さと身勝手さは変わらないため、2023年の法改正でそれぞれ1つにまとめられました。また、それぞれの公訴時効期間は「不同意性交致死傷罪」が20年、「不同意性交等罪」が15年、「不同意わいせつ罪」が12年になります。また、1の「致傷」とは肉体的な傷害だけでなくPTSDのような精神的な傷害も該当します。

今回の調査では、中居氏の意向により当事者への聞き取りができなかったので、中居氏の「性暴力」が1から3までのどれに該当するのかは分かりません。しかし、法律の専門家らが「性暴力」と認定したのですから、どれかに該当することは間違いありません。そして、2017年以降は被害者が刑事告訴しなくとも起訴される可能性がある「非親告罪」となったのです。

そこで、知り合いの弁護士に聞いてみたところ「この手の犯罪で起訴と不起訴を分けるのは被害者の意向が最も大きいので、当事者間で示談が成立していれば起訴されることはまずありません」とのことでした。一部の週刊誌は「中居氏が代理人を通じて被害女性に解決金として9,000万円を支払った」と報じましたし、中居氏自身も今年1月9日、公式HPに「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」と発表しているので、芸能活動うんぬんはともかくとして、示談は成立しているのでしょう。

ですから、中居正広氏が今後、起訴されることはないと思いますが、もしも被害女性から訴えられていたら、最悪の場合は初犯でも実刑になる可能性の高い犯罪を犯したのです。そして、その温床を作ったのは、港浩一氏が社長をつとめ、日枝久氏がトップに君臨していた時代のフジテレビだったのです。今回、第三者委員会から厳しい調査報告書が公表されたのですから、フジテレビはどこかの県知事のような恥知らずな言い訳はせずに、抜本的な組織改革を進め、二度とこんな悲劇が起こらないようにしてほしいと思います。

(『きっこのメルマガ』2025年4月2日号より一部抜粋・文中敬称略)

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