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骨折しても「いじめ」ではない?SNSで大拡散の“高校トイレ暴行動画”会見で露呈した神奈川県教委「法理解の欠如」

SNS上で拡散され大きな問題となった、神奈川県立高校のトイレ内で起きた「暴行」の様子を撮影した動画。非難のうねりを受け県教育委員会が記者会見を開きましたが、その内容のお粗末さがさらに批判を生む結果となってしまいました。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、県教委の会見を見聞きした正直な心情を吐露。その上で、行政と教育現場が本来果たすべき役目について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ダメな記者会見を見た

やるべきことをまったくしない無能。いじめ探偵が見た「ダメな記者会見」

2月6日に神奈川県教育委員会が行った記者会見が物議を醸している。

これは2月5日に、県内の生田東高校とされる高校のトイレで暴力が行われている様子の動画が拡散したため、これに応じる形で、神奈川県教育委員会が記者会見を行ったものだが、「いじめではなく喧嘩であった」という内容だったからである。

問題の動画は、トイレに複数人の男子生徒らが暴行する生徒とされる生徒をトイレの入り口側からたむろして見てる様子で、一方的に殴り倒し、その後複数回の回し蹴りをして、凄み、続いて、他の生徒も観ている輪から飛び出していき、膝蹴りを一方的にして倒してから、さらに蹴り続けるというものだ。

音声もあるので確認してみると、

殴る蹴る側 「なんか言えよ、おい」

――で一発パンチ、後ずさる生徒にさらに一発パンチをして、生徒がその場に倒れる

殴る蹴る側 「おい、立てよ。お前ヘタレてんじゃねーぞ」

――で後頭部を一撃叩く

――その後連続の蹴り

殴る蹴る側の生徒「おい、言いたいことあんなら言えよ。おい、こいよ」

――床に倒れ込んだままの生徒はその後、なすがままに一方的に殴る蹴るの暴行を受ける

確認ができる方は、確認してみて欲しい。

音声や動画は確認しづらいところもあるが、ここに書いたことは事実である。

率直な感想から言えば、逃げ場がないトイレで囲まれた生徒が、複数の生徒から殴る蹴るの暴行を受け、脅されている様子にしか見えない。

神奈川県教育委員会の記者会見での見解は以下の通りだ。

「動画は一部を切り抜いたものだからすべての事情が入っているわけではない」

「生徒間にはトラブルがあって、一方的ではなくその前は被害生徒される生徒も手を出していた」

「(自分たちで調べたのではなく)学校が調査をしてすでに喧嘩で処理済みで、解決済み事案だ」

「喧嘩のやり方を教えていて、押したりしているうちにトラブルになった」

「動画は12月のもので、動画が拡散されるまで県教委は全く把握していなかった」

「右手を骨折している」

「生徒の個人情報が流されている、その方が問題だ」

「教育委員会としては、恒常的かつ一方的な暴力ではないから、いじめだとは思っていない」

この会見の様子を聞き、立ち会った報道関係者からも話を聞いて、私がまず最初に思ったことは、「なんとも正直なおっさんだ」である。次に思ったことは「神奈川県教委は、まだこのレベルか、実に安穏としているな」である。

まず、恒常的かつ一方的な暴力ではないからいじめではないという点については、いじめ防止対策推進法第2条のいじめの定義に照らし合わせれば、誤りであることがわかる。

第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
<いじめ防止対策推進法より>

つまり、「一定の関係性」があって、「何らかの行為等」があって、それを受けた側が「心身の苦痛を感じた」時点でいじめとなる。

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被害者の「命の犠牲」が成立させたいじめ防止対策推進法

いじめの定義には時代による変遷がある。

これは、いじめ防止対策推進法が成立施行される前から、文科省が毎年公表している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(いじめの認知数や不登校の認知数などが発表される白書のようなもの)で、「いじめ」という表記や項目について、一定の定義が無ければ区別できないため、定義を設けたのだ。

昭和61年度からの定義

この調査において、「いじめ」とは、「?自分より弱い者に対して一方的に、?身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、?相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないもの」とする。

平成6年度からの定義

この調査において、「いじめ」とは、「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。

平成18年度からの定義

本調査において、個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。(※)なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

昭和61年、平成6年、平成18年、平成25年のいじめ防止対策推進法といじめの定義は変遷しているのだ。当初は、「強いものが弱いものを」「一方的に」「継続して」「学校が把握したもの」などの文言が並ぶが、問題が増えたり、隠しているのに報道で明るみになってしまって大問題になり、国としてそれなりの姿勢を見せとかなきゃ!みたいな感じで変化を続けた。

なんとも他人事であり、真面目にやる気があんのか!と怒りたくなるところではあるが、実際に色々なやり取りをしていると、温度差はこんなものだ。

結果、あまりにひどい事件が報道され、これではダメだということで議員立法により、いじめ防止対策推進法は出来たわけだ。

そこには、多くの被害者の命の犠牲があったことを忘れはならない。

この定義の変遷を知れば、多くの読者の方は、あー昭和61年ねと気が付く事だろう。記者会見に応じた教育参事監もこの会見の事前レクをした教育委員会医務局関係者も、今の定義をまだ理解していないということだ。

きっと、昭和のあの頃に学びの精神を忘れてきてしまったのだろう。

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被害者に「自分も悪かった」と言わせてしまう理不尽

もう1つの観点として、被害生徒が「喧嘩です」「大丈夫です」「僕も手を出しましたから」などと証言をした場合である。

この言葉のみ取り上げれば、「心身の苦痛はなかった」とできるかもしれないが、本件の場合はそうはいかない。なぜなら、被害生徒は「右手を骨折している」からである。

少なからず、骨折をしている以上、心身の苦痛はあると断定できるわけだ。

そもそも、学校はある種の閉鎖空間であり、いじめについての処分は日本全国共通で激アマを通り越して、ほぼ無いに等しい。これは2万件以上の相談対応をしている私が保証をする。大きな問題になっても、重大事態で第三者委員会が設置されても、まず処分はしない。一方で、ブラック校則があるように、下着の色だとか、髪が赤いだとか、学校でお菓子を食っただとかで、驚くほど重い懲罰を課せられる。

目の前のいじめを止めなかった先生、証言が書かれたアンケートを誤って処分又は廃棄した先生は一切お咎めはないけれど、残業をした先生は烈火のごとく校長に叱責を喰らったりする。

こうした世の常識と異なる特殊社会が形成されていることを、その空間に身を置く生徒は子どもながらによくわかっているのだ。

例えば、あなたが超ブラック企業に勤務していたとして、ある時、部長にカフェモカを買ってこいと命令され、10軒お店を周ったけれど売り切れで、課長に相談した上、カフェオレを買って帰ったとする。部長はブチ切れて、課長以下の職員を呼び、土下座を強要された。ある種の見せしめで、課長には足で頭を踏めと命令したとする。その後、部長は暴力をふるい、あなたは骨折してしまった。

まあ、普通は警察に行き、労基署に行って、さらに弁護士のところに行って労働審判や損害賠償請求をするだろう。この場合、学校だから、それは無いと考える。

なぜなら、教育委員会は独立した行政委員会であり、一応の指導の制度はあっても形骸化して、全てはお仲間の中だからだ。警察もその実、地域懇談会などの集まりで、校長とはお酒を交わす仲かもしれない。

私の本業は探偵だ。その上でいじめの無償対応などのオフィシャルな活動をしているし、経営者の会など各団体にもよく顔を出すから、こういう色々な裏の話については、だいたい承知済みだ。

話しを戻そう。もしも、救いがない中で、自分がされた理不尽な暴力等があったとして、それでも生きるためにはその環境にいなければならないとしたら、あなたならどうするか?暴行者らは、結局、元の場でも元のポストにいるわけだ。加害者だらけの場に、結局戻らなければならないのだ。

その上で、激しく脅されたらどうなるか。

冒頭の暴力動画の様子の中にあった言葉は、一方的な暴力と一方的な脅迫であった。

「彼らは悪くありません。私も悪いんです」

思わずそう言ってしまわないだろうか。

私はDV被害者の救援活動も無償でやっている。DVの被害者も当初はみんなそういうのだ。「彼が殴ったのは私のせいなんです」「私が悪いんです」

稀にこの言葉だけを鵜呑みにするアホな司法の人もいるが、現実の状況を見れば、普通にわかるだろう。

暴力は時に人の思考を支配してしまう。しかし、それを救うことができる人は、痛みや恐怖の背景を読み解き、真実の助けてくださいの叫びの声をしっかりと捉え、時間や労力をかけても粘り強く、手を差し伸べ、そこから救い出さなければならないのではないだろうか。

神奈川県教育委員会が本来取るべきだった対応

本来、神奈川県教育委員会がやるべきであったことは、学校に確認だけをやって記者会見をしてしまうのではなく、自ら出向き、学校のみならず、関係生徒のみならず、その他の生徒たちともしっかり向き合って、専門家を入れて徹底した調査を行い、二度とこのようなことが起きないように、多方面の対策をする事ではないだろうか。

私とはスタンスが異なるいじめ問題の専門家の中からも、今回の神奈川県教育委員会の対応は、暴行を受けた生徒が骨折等をしている以上、少なからずしっかりとした調査を行い、事実解明をするべきだというものもあった。

確かに、神奈川県は人口も多く、問題発生数も多いだろうが、神奈川県教育委員会には、本件みならず、全件チェックと忌憚のない第三者による調査と併せて、暫定措置として被害者が安心して学生生活ができるようにしてもらいたい――(『伝説の探偵』2026年2月9日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方はぜひご登録ください。初月無料でお読みいただけます)

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image by: Shutterstock.com

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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