各国首脳や数々の国際機関から「予測不能で危険な存在」とみなされているトランプ大統領。ベネズエラ侵攻やグリーンランド取得意図を公言するなど、戦後秩序を破壊するかのような彼の言動は、国際社会に混乱を巻き起こしているのも事実です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、トランプ大統領の「思いつき」のようにも受け取れる言動の背景を考察。その「複雑な構図」を解説するとともに、アメリカの「本当の狙い」を読み解いています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:強者が支配する世界への回帰と揶揄されるトランプ外交の“本当の”狙い
気まぐれとは程遠い綿密に計算された動き。トランプ外交の本当の狙い
「トランプ外交は“ルールのない世界への回帰”と言わざるを得ない。法の支配に基づく戦後の秩序は完膚なきまで踏みにじられ、国際法よりも強者の原理が優先される、まさに帝国主義の再興と言わざるを得ない」
(”It’s a shift towards a world without rules. Where international law is trampled underfoot and where the only law that seems to matter is that of the strongest, and imperial ambitions are resurfacing.”)
これは今年のダボス会議でフランスのマクロン大統領が激しいアメリカ批判を行った際に放たれた発言の一部分です(マクロン大統領が終始サングラスを着用したまま演説を行ったことで、様々な憶測を呼んだ際の演説です)。
66にわたる国際機関や条約からの一方的な離脱と脱退を宣言し、様々な国際的な協力体制に背を向けていることから、確かに「国際法に基づく法の支配を否定し、アメリカの論理を押し付けている」という指摘は当たっているように思われます。
そして今年に入ってからのベネズエラへの侵攻とMaduro大統領夫妻の拘束(実は昨年末に実施が予定されていたそうですが、天候不順で延期され、天候条件が整った1月3日に実行に移したそうです。まさに広島と長崎への原爆投下時の状況と類似しています)や、復活した“グリーンランド取得”の意思の表明、そしてトランプ大統領自身のダボスでの発言や、一方的な平和評議会(Board of Peace)の設置などを見ていると、確かに「好き放題やっているなあ」と感じてしまいます。
今週はオーストラリアの首都キャンベラにおりますが、オーストラリア国立大学(ANU)での特別プログラムの実施と並行して、オーストラリア政府関係者や各国の政策立案と実施に携わっているアドバイザーなどと意見交換をしていると、一様に国際情勢への大きな懸念が表明されます。
「見通しがつかない」
「予測不能で、対応ができない」
「毎朝起きるたびに、全く予想していなかったサプライズに直面して、愕然とすることが多い」
といった意見が出てきます。
キャンベラで話す相手と、かなり遠隔で協議する専門家・政策実務者などがいろいろな不安点を挙げ、未来についての不安と無力感を表明する中、私たちを深刻に悩ませる極めつけの要素は「冷戦時代に遡って米ロ(米ソ)が締結し、世界中の実に87%にのぼる核兵器を有する二国が、核軍縮に向けて相互努力を続ける最後の取り決めである新戦略兵器削減条約(The New Strategic Arms Reduction Treaty)が今月末に期限を迎えるにもかかわらず、条約の延長を行わない姿勢を示す」という決定です。
トランプ大統領が大統領就任から1年経った1月末に、2月5日に期限を迎える新STARTの延長について「この条約は、中国が核戦力を飛躍的に増大させる中、核軍縮を目指す意義に合致しない。中国を含む米ロ中の参加国間での条約の締結には関心があるが、その見込みは薄い。ゆえに、新STARTが期限を迎え失効するのであれば、その取り決めは2月6日以降、無効と言うことだ」と発言し、長年にわたる核保有国による米ロ2国間の核軍縮の取り組みが終焉することを宣言しました。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
「平和の使者」という仮面を完全に脱ぎ捨てたトランプ
これにより、米ロは恐らく核戦力の増大と更新に勤しみ、そこに急激に核戦力を伸長させている中国が競争に加わり、インドやパキスタン、そしてイスラエルという実質的な核保有国が核戦力の増強に舵を切るだけでなく、まだ核兵器は持っていないが保有の手前まで来ているとされるイランの核開発を加速し、そしてサウジアラビア王国をはじめとするアラブ諸国を核保有に走らせるという、世界的な核軍拡競争を過熱させ、そこに核戦争と紛争のエスカレーションの脅威の増大が、人類をかつてないほど絶望の淵に追い詰めることに繋がる恐れが大きくなります。
今回の新STARTの失効(2026年2月5日に米ロ両国で期限を迎えた)と、それにより起こり得る危機を踏まえ、「世界終末時計」を毎年発表しているThe Bulletin of the Atomic Scientistsが終末時計の針を “残り89秒”にまで進め、トランプ大統領やプーチン大統領を含む、世界のリーダーたちに警告を提示しました。
その警告、切実なメッセージは果たしてトランプ大統領やプーチン大統領、習近平国家主席、そしてイスラエルのネタニエフ首相などに届いたでしょうか?
耳には入っていると信じますが、それが行動を促す、または何らかの変更をもたらすとは考えられないと感じます。
今年に入ってからトランプ大統領は、「力こそが正義だ」と国際秩序を構築しようとし、平和の使者・ピースメーカーのお面を捨て、アメリカが持つ圧倒的な軍事力と経済力を組み合わせて、意のままに動かない国々に圧力をかけて、果てには、ベネズエラで実際に起きたように、軍事力を用いた強硬的な“矯正”を行う方向に一気に傾いているように見えます
そして今、“国家安全保障のため”と理由を付けて、同盟国デンマークの自治領であるグリーンランドをアメリカ領として“所有”しようという試みに出ています(暴挙と呼ぶべきでしょうか?)。
トランプ大統領が自らの2期目を開始してから1年が経ちましたが、恐らく誰もNATO同盟国の領土を自国のものにすべく攻撃を加えると脅す賭けに出て、同盟と協調に基づく戦後国際秩序を破壊し、力がものをいう弱肉強食の世界に導くとは予想していなかったと思います。
実際、1期目のころから、トランプ大統領の外交は予測不能で、かつ発言内容は思い付きであり、かつ誇張であるという見方が強かったと感じていますが、最近は言行不一致の気配は消え、確実に力こそ正義という信念の下、アメリカの影響力・支配力の拡大に勤しみ、その代償として国際協調と同盟国を切り捨て、
国際舞台でもAmerica Firstを構築しようとしているように見えます。
その走りがイラン、シリア、ナイジェリア、イエメンへの空爆の実施であり、ベネズエラへの侵攻と為政者の拘束という暴挙で、今後、この流れはグリーンランド、キューバ、コロンビア、ニカラグア、メキシコなどに広がり、手薄と思われがちなアジア太平洋地域にも広がるのではないかと思われます。
中国と台湾を巡る直接的な武力対立に至るのは、最後の最後までないと信じますが、北朝鮮がトランプ大統領からの呼びかけを無碍に扱ったり、タイとカンボジアの国境紛争やインドとパキスタンのカシミールを巡る対立といった“仲介”した紛争が再燃したりしそうな時には、限定的な軍事作戦を含む強硬策に打って出て強引な解決を図るのではないかと恐れさえ抱かせる状態に導いています。
「トランプ大統領は世界の救世主・平和の使者などではなく、もしかしたら最後の破壊者なのではないか?」
そのような懸念が容易に浮かぶ状況なのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
トランプ大統領とその政権は、本当に無策で荒唐無稽な行いをランダムに行っているのでしょうか?それとも実は何か行動の背後にある軸が存在するのでしょうか?
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トランプが中国へ向け発信している穏やかならぬメッセージ
先週号でも少し触れたような気もしますが、トランプ大統領とアメリカ政府が行っている一連の動きは気まぐれとは程遠い、綿密に計算された動きであると考えられます。
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もちろん、そのすべての行動が成功裏に終わっているということはなく、計算違いややりすぎ、そして勇み足的なものも散見される気がしますが、【力こそ正義】、【力による外交】を強行する中で共通している対象があります。
その最たるものは【中国の影響力拡大の最前線の封じ込め】という要素・対象です。
ベネズエラへの侵攻、イランへの攻撃と再攻撃の予告、イエメンへの攻撃(その後、一応、フーシー派とは手打ちしているが、今後については未定。しかし、サウジアラビア王国とUAEの争いがイエメンを巡って繰り広げられていることから、事態の収拾に向けた動きの中で、再度、イエメンが犠牲になる可能性は大と見ている)、ナイジェリアにおける“キリスト教徒保護”という名目でのIS狩り、シリアにおける少数派イスラム教徒の権利保護と人道的な介入と称した軍事作戦(ただし、これはガザのみならず、シリアにも手を伸ばそうとするイスラエルの動きへの牽制も兼ねたものと考えられる)、キューバに対する締め付け、コロンビアとメキシコへの脅しを通じた圧力、そしてグリーンランドの領有・所有に向けた動きとプレッシャー…。
これらすべての背後に見据えているのが、中国です。
イランについては、予てより戦略的パートナーシップを通じた助力により、中国はイランからの原油を安価で、そして安定的に手に入れる体制を確立しており、その見返りにイランの孤立を緩和するために経済的な支援と外交的なサポートを行っています。
中国政府としては、特にイスラエルを直接的に敵視しているわけではないですが(とはいえ、ネタニエフ首相と現政権のガザおよびパレスチナでの一連の蛮行に対しては激しい非難を加え、自国のことは棚に上げつつも、ICCによる対ネタニエフ首相逮捕要請を支持していますので、関係は悪化しています)、イランを全面的に支えることで間接的にイスラエルを危機に晒していると、トランプ政権は認識し、中国のイランを通じた中東全域に対する影響力を削ぐべく、イランという“口”の前に立ちはだかって対峙しています。
そしてそれに加えて、イランの核開発に少なからず寄与していることも掴んでいるのか、アメリカ政府としては一線を確実に超えたといえるアメリカ軍によるイランへの直接空爆の再開の可能性についても言及し続け、イランの核開発と現体制の背後にいる中国に「あまりでしゃばると、巻き沿いを食うぞ」と脅しをかけていると分析しています。
外交的に仲介を行い、ミッションインポッシブルと言われてきたイランとサウジアラビア王国の関係改善をお膳立てしたことで、イランを入り口にしてアラブ世界全体に影響力を拡げ、イスラエルを飛び越して東アフリカ地域にまで影響力を及ぼして、アメリカの中東における権益と影響力を次々と、オセロの駒のように、ひっくり返している現実と勢いを、イランと言う入り口を封鎖することで阻止したいという思惑が見えてきます。
中国のアクセスを減らすという目的と共に、今の体制を転覆させて対中体制を転換させようという意図から、イランにおけるupheavalを背後で支援し、工作活動も展開して、じわりじわりとイランの現体制を瓦解させようとする作戦を実施しています。
背後にいる中国とロシア、そして地域における工作を忌み嫌うトルコとのバランスが、今後の展開を占ううえでのカギとなりますが、いろいろなアングルから見ると、確実に現時点では中国の影は薄くなっているように見えます。
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米軍によるベネズエラ侵攻で中国が失った膨大な債権
次は1月3日に強行されたベネズエラへの侵攻とMaduro大統領夫妻の拘束作戦です。軍事的には米軍側に一人の犠牲者も出さずにmission accomplishedとなる完璧な勝利に終わりましたが、
外交的な部分とエネルギー安全保障の面、そして米国内の内政上、大きな課題を自ら背負うことになりました。
作戦の目的は、表向きはベネズエラのCartel del Sol(太陽のカルテル)と呼ばれる、大統領以下閣僚も深く関与する麻薬カルテルの撲滅とされていますが、この点についてはCartel del Solの支部が全米に広がっていることと、ベネズエラから米国への直接的な麻薬の密輸はほぼないことから、目的は麻薬面では生産地のコロンビアおよび全米内に散らばるCartel del Solへの宣戦布告という一面があると考えられます。
しかし、これはメインの理由ではありません。
メインの理由は世界最大の埋蔵量を誇るベネズエラの原油権益のコントロールを中ロから奪い返し、西半球および中南米での中ロの影響力を一気に削ぎ落し、剥がしてしまうことと言えます。
埋蔵量3,030億バレルと見込まれているベネズエラの原油ですが、国営化後、目立った開発および設備などの更新が滞っており、フルに産出のキャパシティーを発揮できなくなっていたところに、技術と資金援助、および投資を通じて権益を拡大してきたのが中国とロシアの国営石油企業という構図が確立されていました。
それにつれて、ベネズエラの原油を武器に、キューバのコントロールを握り、ニカラグアなどの反米社会主義国家を中ロ陣営に絡めとり、アメリカ合衆国の目と鼻の先で“よそもの”の中ロが影響力を拡大するという構図になっていました。
それを攻撃と大統領の拉致・拘束を通じて食い止めるのが目的と言えますが、中ロをベネズエラの原油権益から追放し、国際原油価格のコントロールを排除するためにトランプ政権が行ったのが、明らかに麻薬関連の甘い汁にも浸かっているチャベスとMaduroの申し子といえるロドリゲス副大統領を暫定大統領に据え、原油大臣も兼ねる彼女を権力の座に就け、それをアメリカが支える体制をとることで、一気にベネズエラの原油へのコントロールをアメリカが確保する体制にしたものと考えます。
それゆえに、昨年のノーベル平和賞受賞者で反チャベス・Maduroの筆頭であるマチャド女史を直接権力の座に就けるという政権転覆と交代を演出するのではなく、確実に原油権益を掌握することを優先する奇策に出たものと考えます(奇策とは言っても、実を取るための現実的な判断に傾いたと言えるでしょう)。
ロドリゲス暫定大統領は、自らの立場・地位および生命が保証され、かつベネズエラの原油開発と施設の近代化、そして原油の増産から生まれる利益をアメリカがベネズエラ国民に還元すると約束をするという“成果”を掲げ、権力基盤を維持できたことで、一応の協力体制が出来、かつ中ロを排除するという動きにも、アメリカという旗印を利用して行うことで、責任逃れが出来るという確証を得たことで、当面はアメリカに楯突くようなことは無い状況が作り出されています。
こうなるとこれまでに多大な投資を行ってきた中国(とロシア)にとっては、自らの投資が回収できない事態が即座に生まれ、著しく影響力を削がれる結果になっています。ベネズエラ産の原油の輸入については、中国に取っては第12位の相手であったことから実質的な痛手は被っていないと思われますが、問題はこれまでにつぎ込んだ投資と施設の回収が出来ず、アメリカに取り上げられることで中国が所有する膨大な債権を失い、それが中国経済にはボディーブローのように効いてくることになります。
またベネズエラ産の原油の権益を、OPECプラスのロシアと共に握ってきたことで、原油の国際価格に影響を与え、可能な限り安価に大量の原油を調達できる体制を築いていましたが、それを一夜にしてアメリカに崩される結果となり、大きな経済的な損失を被ることになりました。
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グリーンランドという米中対立の最前線かつ最重要拠点
ここにきて中国はアメリカによる蛮行・暴挙に対して、法の支配の重要性を前面に押し出し、compensation(賠償)を要求する行動に出ていますが、トランプ大統領がそれをまともに聞くことは無いでしょうし、あったとしても、今後の米中協議の際のプレッシャー要因、そしてディール・メイキングのための材料として用いられるだけだろうと考えます。
ベネズエラ産の原油の権益へのコントロールを奪われたことで、これまで安価に原油を提供する代わりに味方につけてきたキューバなどの周辺国に対するグリップは確実に弱まり、中国が支援することは叶わなくなると同時に、アメリカによる常識外れともいえる一方的な軍事行動を目の当たりにし、対米非難を鎮静化することで“次は我が身かも知れない”という中南米のリーダーの恐れを巧みにアメリカに利用されるという【アメリカによる中南米からの中国の排除】という作戦がうまくいくことになります。
イランに続き、ここでもベネズエラという中南米への入り口をアメリカに蓋をされる(閉ざされる)という中国排除のための策が講じられています。
そして今、米中の対立の火花の最前線かつ最重要拠点がグリーンランドということになります。
なぜグリーンランドか?
いろいろなポイントが挙げられますが、まずはグリーンランドの物理的な位置とそれが物語る地政学リスクを、
ぜひ北米と北極圏、欧州が一望できる地図を思い浮かべながら、見てみたいと思います。
グリーンランドは長年、欧州のデンマーク王国の自治政府として国際法上存在していますが、グリーンランド(首都ヌーク)とデンマーク(首都コペンハーゲン)の直線距離は約3,550km~3,570kmで、飛行機では直行便で約5時間半~6時間程度(コペンハーゲンから)かかり、地理的には離れています。
それに対し、アメリカ合衆国で一番大西洋側に張り出しているメイン州北部からデンマークの首都ヌークまではおよそ2,000kmの位置にあり、カナダのエリス岬とグリーンランドはたった26kmしか離れておらず、橋などで容易に地続きにできる距離であるため、実は地図学上は、グリーンランドは“アメリカ”に分類されています。
「距離が近いからアメリカの一部だ」と言いたいのではなく、その近さゆえに、そこに中ロの影響力が及ぶことにあった場合、カナダとアメリカの北米大陸国にとっては国家安全保障上の大きな脅威となります。
ゆえに「国家安全保障上、グリーンランドが必要」というトランプ大統領の“こじ付け”は、決して妄言で済ますことはできないとも考えられます。
言い方を変えると、アメリカ合衆国が一方的に(勝手に)自国の裏庭と認識して影響力を及ぼしてきた中南米地域同様(南端)、北端で同じく裏庭的な位置にあるグリーンランドに影響力を及ぼそうという思惑が働くのは、乱暴であることには変わらないのですが、理解はできるかもしれません。
問題は物理的な近接性だけではなく、この近接性がおよそ26kmという狭い海、それも深く、ずっと凍結していた北極海を間に持つという特性ゆえ、この“海峡”ともいえる海域に中国やロシアの潜水艦が潜んでいるとして、それらが実は原子力潜水艦だったりしたら、それはカナダおよびアメリカ合衆国によっては大きな国家安全保障上の危機と言えます。
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「中国の影響力拡大の阻止」に収斂されるトランプの言動
現在、その海峡にどの程度の中ロの潜水艦が潜っているかは、正確には分かりませんが、先ほどの地図を違った形で見て、アメリカ、カナダそして大西洋の向こう側にある英国、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドを眺め、フィンランドの隣にあるロシアまで視野を広げた場合、グリーンランドを含めた海域で米英および他のNATO加盟国などと、ロシアの軍事的プレゼンスを隔てる線が見えてくるかと思いますが、この線が(実際には見えませんが)、実は欧米諸国の対ロ・対中防衛線となります。
もしその線をロシアそしてその同盟国の中国の潜水艦が越えていたとしたら、アメリカ合衆国にとってもその同盟国にとっても、安全保障上の脅威が一気に高まり、中ロにプレッシャーをかけられる構図になってしまいます。
現時点でどのような軍事的なプレゼンスが繰り広げられ、どこで両サイドがにらみ合う展開になっているかは私には分かりませんが、これまでこのグリーンランドを含む西側ゾーンの防衛をデンマークおよび欧州が怠っていて、中ロに侵入の隙を与えていたか、今後、そう遠くないうちに侵入の扉を開くことになるかといった危機に早期に対応できないのであれば、アメリカがNATOを通じた相互防衛という形ではなく、自国領として組み込むことで、より厳格な軍事的な展開が可能になるという思考が働いたうえでの、トランプ大統領のとんでもない(非常識な)サプライズ発言なのではないかと、ちょっと勘繰ってみたくなりますがいかがでしょうか?
ちなみにグリーンランドをアメリカが所有するという妄言を耳にした際には、ベネズエラの直後ということもあり、「ああ、世界第6位のレアアースの埋蔵量があり、確か最近になって、中国企業が、デンマーク政府をすっ飛ばして、グリーンランド自治政府に直接働きかけて、“グリーンランドの開発支援”とでも名打って投資を急拡大しているから、それをトランプ大統領が看過できない失態と捉えて、too lateになる前に対応したいということなのだろう」と解釈していたのですが、資源開発には目がないはずのアメリカがこれまで大規模に手を出してこなかった現実に鑑みて、「もしかしたら、本当の理由・狙いはそこではないのではないか」と考え、分析を別のアングルから行った結果、辿り着いた・見えてきたのが、これまでお話ししてきた内容です。
そうなってくると、イランへの圧力の拡大、ベネズエラへの侵攻、そしてグリーンランド“防衛”を強行しようとするトランプ外交の狙いが、中国の影響力拡大の阻止という共通項に行きつくのではないでしょうか?
もしそうならつかみどころがなく、かなり強引な一連の行動の背後にある理由が見えてくるので、対応策も練ることができるのですが、それが腑に落ちるものであったとしても、やはりトランプ流のやり方はかなり強引で、非常識で、かつ力で押し切る外交・やり方であるという事実は変わらず、認めるべきものはないかと考えます。
そういいつつも、ちょっと複雑な構図の解法が見えてきた気がして、嬉しくなっている私がいるのも事実です。
真夏の南半球に滞在している今週は、ちょっと環境を変えていろいろと考え、国際情勢を読み解いてみたいと思います。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年2月6日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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