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あの中島聡も「今年あたりが転機」と警告。AIにコードを任せる時代の衝撃的変化から目を逸らすな

AIがコードを書く時代、ソフトウェアエンジニアの仕事はどう変わるのでしょうか。「達人」と呼ばれるレベルに達して初めて良い設計者になれるという従来の常識は、もはや通用しなくなりつつあります。Claude Codeを駆使して数ヶ月分の開発をわずか数週間で完了させた経験を持つ著名エンジニアにして投資家の中島聡さんは、プログラミングを知らなくても良いソフトウェアが作れる時代の到来を予感しています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、発行者の中島さんが、AI時代における人間の役割と設計能力の本質について考察します。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

AI時代の人間の役割

AIが人間よりも賢くなろうとしている時代、私たち人間の役割がどうなるのか・どうあるべきかは、とても重要な話です。このメルマガにも、「ソフトウェア・エンジニアという職は無くなってしまうのか」とか「自分の子供には何を勉強させるべきか」などの質問が数多く寄せられています。

そんな中で、二つほど、目に留まった記事がありました。

考えてからでは遅すぎる https://x.com/Jumpei_Mitsui/status/2015052151475876322

AI時代における 「作る人」と「考える人」を分けるという古い発想https://x.com/kouta_hikichi/status/2015419798256312818?s=46

「達人」になって初めて見える世界

前者はゲームや(アートとしての)レゴ、後者はプログラミングと分野は違いますが、どちらも一つのとても重要な話をしています。それは、「レゴを組み立てる」「コードを書く」などの「手を動かしてものを作る作業」を長年積み重ねて「達人」とも呼べる領域に達して初めて、最も重要な「どう作るか」という部分をちゃんと考える余裕が生まれて、良い設計者(=考える人)になれる、という話です。

私も長年、プログラミングをしていて、この感覚は良く分かります。プログラミングは非常に自由度が高いため、同じことを実行するプログラムの書き方は無数にあります。

初心者は、この自由度の高さゆえに、個々の関数をどう実装するかで悩み、そこに時間を取られて、動くものを作ることに精一杯で、全体的な設計の良し悪しを考える余裕がなくなってしまいます。

慣れてくると、個別の関数の実装などは自動的にできるようになるので、何を関数として定義し、どこまで共通化するかなどに考えが及ぶようになります。

さらに上達すると、その辺りの設計もほぼ自動的にできるようになるため、もっと上位の、モジュール構成、モジュール間のインターフェース、汎用化、共有化、プラットフォーム化など、中長期的に見た設計により多くの脳みそを使えるようになります。

コーディングそのものが、「水を得た魚のように」書けるようになると、「作っては壊すプログラミングスタイル」すら可能になります。設計段階だけでは見えないことがたくさんあるため、まずはざっくりと動くものを作った上で、大規模なリファクタリングを繰り返しながら、より良い設計に近づけて行く手法です。

「コードが書けるAI」で開発現場が激変

「コードが書けるAI」の誕生により、ソフトウェアの作り方が根本的に変わろうとしています。「コードを書く」という作業そのものは、AIに任せることができる時代になったからです。

そんな時代のソフトウェアの作り方は、まだ確立していません。「コードが書けるAI」が誕生したのがごく最近であるのが一番の理由ですが、そのAIが日進月歩で賢くなっており、「AIに任せられる範囲」が毎日のように広がっていることも、手法の確立を困難にしています。

私自身、GraphAIの開発までは、AIに頼らずにコードを書いていましたが、MulmoCastの開発においては、特にffmpeg関連でAIの助けを大いに借りました。そしてMulmoChatの開発に至っては、私は設計者の役割にとどまり、「作っては壊すプログラミング」をClaude Codeをフルに使いこなして行いました。

その結果、私の生産効率は爆上がりし、普段であれば数ヶ月はかかるであろう「AIネイティブなOS」のプロトタイプをわずか数週間で作ることができたし、その過程で、「GUI Chat Protocol」というLLMにGUIツールを提供することにより、AIチャットをマルチ・モーダルなものにするプロトコルを設計することができました。

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コーディング不要の時代は来るのか

ここで生じる疑問は、「コーディングをAIに任せる時代に、必要なスキルとは何か?」です。

上の二つの記事、および、私の経験から言えば、「水を得た魚のように苦もなくコードが書ける達人」になって初めて、ソフトウェアの設計能力が身に付く、と言えますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?

私はアセンブラ(機械語)からプログラミングをスタートしましたが、コンパイラやインタープリタを使ってプログラミングをする際に、アセンブラの知識が必要なことは一切ありません。

それと同様に、「コードが書けるAI」がさらに進化した結果、プログラミングを一切知らなくても良いソフトウェアを作れる時代が来る可能性は十分にあると私は感じています。今の進化のスピードを見ていると、今年あたりがその転機のようにも思えます。

問題は、良いソフトウェアに必要な設計能力を、自ら手を動かしてコードを書く経験なしにどうやって身につけるか、ですが、設計そのものをAIが人間よりも上手にやってしまう時代が来ても不思議はないし、「良い設計」の定義すら変わりつつあるとも感じています。

特に、「(自分)一人しかユーザーがいないソフトウェア」や「使い捨てソフトウェア」においては、「目的が達成できれば十分」なので、従来型の「設計の良し悪し」の基準が必ずしも適用できません。

ソフトウェア業界だけの話ではない

残念ながら、「ソフトウェア・エンジニアという職は無くなってしまうのか」とか「自分の子供には何を勉強させるべきか」などの質問に対する直接的な答えにはなっていませんが、これが現在ソフトウェア業界に起こりつつある変化であり、これを無視しては、ソフトウェア・エンジニアのキャリアや、ソフトウェア・ビジネスそのものを考えることはできません。

そして、もっと重要なことは、これがソフトウェア業界に限った話ではないという点です。人間よりも賢くなりつつあるAI、そしてそれを搭載したロボットは、ソフトウェア開発プロセスに与えているのと同じような変化を、あらゆる業界の仕事に対して起こす可能性が十分にあるのです。

(本記事は『週刊 Life is beautiful』2026年2月3日号を一部抜粋したものです。「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナーなどメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です )

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