政権への高支持率を好機と見て、解散総選挙に打って出た高市首相。しかしながらここに来て頼みの支持率が下降するばかりか、自身の人気が自民党の得票に必ずしも結びつかない可能性までもが浮上するという、厳しい現実に直面しています。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、参政党が高市政権に「ガチンコ勝負」を突きつけた背景を分析。その上で、保守票の分散という構図が総選挙の行方に与える影響を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:支持率急落の高市首相、参政党のガチンコ勝負に戦々恐々
ここに来て支持率急落。参政党のガチンコ勝負に戦々恐々の高市自民
高市内閣の支持率が急落している。1月24、25の両日、毎日新聞が行った世論調査によると、前回調査(67%)から10ポイント減の57%だった。共同通信の調査でも、支持率は63.1%。昨年12月の調査から4.4ポイント下落した。
「衆院選より予算成立を優先すべきだった」「この時期の選挙はよくない」。テレビのコメンテーターらの影響もあるだろうが、そんな意見が多い。「高市早苗に託していただけるのか」という自意識過剰の「大義」にがっかりした人々の意思表示といえるかもしれない。
だが、冷静に考えてみると、選挙本番が近づくほど、高市政権への支持率が下がるのは当たり前のような気もする。
世論調査で高市内閣を支持すると答えてきた人の中には、参政党、日本保守党など保守系の政党に票を投じようと思っている層がかなりの割合で含まれているはずだ。つまり高市首相は支持するが、自民党には投票しないという人々の存在だ。高市人気と自民党の政党支持率に大きな乖離があるのはそのためだろう。
彼らは、中国と融和的であろうとする岸田政権や石破政権を嫌い、「強い日本」を志向する高市首相の誕生を歓迎した。だが選挙ともなると、どの政党を選ぶかを決めなくてはならない。参政党や日本保守党の熱心な支持者が、その党首をトップとする政権をイメージし、調査の際、高市政権支持を選択しないことは十分考えられる。
「過半数の議席を賜れば高市総理。そうでなければ、野田総理か、斉藤総理」と、まるで首相を選択する選挙であるかのように高市首相が語ったのも、党ではなく自分を見て選んでほしいという思いを訴えたと見るべきだろう。
2024年10月の衆院選と今回との大きな違いは、公明党が自民党との連立から離脱し、立憲民主党と新党「中道改革連合」を立ち上げたことだけではない。国民民主党と参政党がさらなる飛躍をめざし、各地に大量の候補者を擁立した。それは当落にかかわらず、単独過半数を狙う自民党の票を削ることにほかならない。
とくに注目したいのは参政党だ。24年の総選挙では、95人を擁立し獲得議席は3だったが、25年の参院選には55人が立候補し、14人が当選するという大躍進を見せた。今回は178選挙区と比例区あわせて190人の候補者を擁立し、さらなる党勢拡大を狙っている。
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自民党を激しく動揺させた福井県知事選の「奇跡的」な結果
問題は昨年の参院選のような勢いが今も続いているかどうかだ。国家主義的な政治信条など共通項が多く、支持層も重なる高市氏が首相になったことで、岸田政権、石破政権を嫌って流出した支持者が自民党に戻り、参政党の伸びに強いブレーキがかかるかと思われた。事実、参政党の支持率は昨年夏をピークに下がり続けていた。
だが、25日投開票された福井県知事選の結果は、自民党を激しく動揺させた。自民党本部が支持した元越前市長の山田賢一氏に対し、保守系の福井市議らが推す35歳の元外務省職員、石田嵩人氏は圧倒的に不利と見られていた。ところが、選挙途中から参政党が支援に乗り出すと、たちまち様相は一変、政治経験のない石田氏が大逆転勝利をおさめた。
選挙終盤、参政党の神谷宗幣代表が石田氏との対談動画を配信したり、支援を街頭で呼びかけるなどしたことが、無名の若者に奇跡を呼び込んだと思われる。
「保守層奪還に期待が高まっていたが、冷や水を浴びせられた格好」と時事通信は自民党の落胆ぶりを報じた。まさにそういうことだろう。選挙で発揮される神谷氏のカリスマ性は健在とみえる。
もちろん、一つの県知事選だけで国政選挙の行方をうらなうことはできない。だが、3人だった参政党の衆院議席が、目標の30には届かないまでも、二桁に乗るのは確実だろう。また、参政党は勝算のない候補者でも小選挙区に多数を擁立しており、その分、自民党候補の票を食い荒らす構図にもなっている。
積極財政や外国人政策の規制強化などを訴える参政党は、政策の方向性も支持層も高市首相と重なる。選挙で自民党とどう向き合うかは、重要な課題だ。J-CASTニュース(1月26日配信)に、その難題にまつわる一つの記事が掲載された。
1月25日、福井テレビの討論番組に参政党の衆院選立候補者、藤本一希氏が出演したさいのことだ。「選挙戦で最も訴えたいこと」として、「高市氏を支持」とフリップを出し、こう語った。「今回は自民党対ほかの野党という戦いではなく、党の壁を超えて、高市氏が進めたい国づくりを支持するのか支持しないのか、そんな戦いだと思っております」。
高市首相を支持するために衆院選を戦う。それが参政党の目的なのか。当然、内部から批判の声が上がる。記事には、こう書かれている。
参政党員だというXユーザーが「ここは党の見解を今一度統一していただきたく思います」と厳しいポストを投稿すると、神谷代表がこれに反応。当該ポストを引用した上で、「厳重注意しました」と明かした。
藤本氏は「誠に申し訳ありませんでした」と謝罪。高市政権について神谷代表は「40%は支持できるが、60%は支持できない。40%の部分を本気でやってもらえるならそこは協力したい」と微妙な言い回しで釈明した。
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神谷代表の口から飛び出した「なりふり構わぬ煽り発言」
だが、藤本氏の高市礼賛は参政党の方針とかけ離れたものではない。参政党は公式TikTokなどで「高市政権を応援します」「高市さんの考え方に共感します」などと発信してきた。高市政権支持を打ち出すことで、昨年の参院選で奪い取った保守票の自民回帰を防ぐ作戦を展開してきたのである。
だが、いざ総選挙という段になって、高市支持と参政党への投票呼びかけという矛盾の解消に迫られた。そこで「高市支持なら参政党へ」と街頭演説で呼びかける無理筋の戦術に切り替えたのだが、これでは今一つ聴衆が盛り上がらない。そしてついに、神谷代表から、なりふり構わぬ煽り発言が飛び出した。
「高市さんのあの人当たりの良いキャラに乗せられて自民党に投票したら後悔しますよ!」「自民は単独過半数を取るつもりでいますよ。そんなことはさせないぞ!」
神谷代表は高市路線への共感を示しながらも、自民党に「ガチンコ勝負」を挑む戦略を選んだ。木原稔氏(官房長官)が出馬する熊本1区に山口誠太郎氏を立て、黄川田仁志氏(内閣府特命大臣)の埼玉3区にも中村なおこ氏を擁立するなど、高市首相の側近にも容赦なく「刺客」を送り込んだ。
「日本を動かす政権の一角にしっかりと参政党を入れていこう」。神谷代表は27日、JR東京駅前での第一声で、そう聴衆に呼びかけた。衆院で目標とする25~30議席を獲得し、連立政権に加わりたいということか。福井県知事選で手ごたえをつかみ、鼻息が荒い。
現時点で各メディアが伝える選挙情勢は、自民・維新で過半数を上まわり、政権を維持するとの見方が大勢だ。やや下降気味とはいえ高市内閣の支持率が高水準を維持しているからだろう。
しかし、高市人気がそのまま票に結びつくとは限らない。国民民主党、参政党、日本保守党などに保守票が分散する流れは、高市首相でも押しとどめるのは難しい。連立を組む日本維新の会でさえ、選挙協力ができず、大阪を中心に80をこえる選挙区で競合している。同質の支持層を食い合い、味方が味方でないのが、この選挙の過酷な現実だ。
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image by: X(@神谷宗幣【参政党】)