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レッドラインを越えた米国とイスラエル。イラン攻撃が引き起こす「世界大戦ドミノ」という最悪シナリオ

各国を巻き込みながら拡大の気配を見せる中東の軍事衝突。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃をきっかけに、地域紛争がより大きな対立へと発展する危険性も指摘されています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、イラン攻撃に至る外交交渉の経緯と、背後にある中東の複雑な地政学的構図を解説。その上で、今般の軍事行動が世界各地の紛争を連鎖させ、世界大戦へと発展する可能性を憂慮しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:レッドラインを越えたアメリカとイスラエル-グランドデザインなき過信による攻撃が引き起こす“核”を用いた世界大戦に向けたslippery slope

レッドラインを越えた軍事行動の代償。アメリカとイスラエルが開いた「危険な戦争の連鎖」

「ジュネーブでの会議ですが、無期限で休止になるため、今回の渡航は止めて、一旦スタンバイ状態で待機いただけますか?」

先週号のメルマガが配信された頃に連絡が入ってきました。その後、アメリカとイスラエルによるイランへの大規模攻撃の報が入り、最高指導者ハメネイ師が殺害されたかもしれないという情報も入り、「これは大変なことが起きた」という感覚を抱きました。

ハメネイ師については、残念ながら今回の攻撃での死亡が確認されましたが、昨年6月に行われた12日戦争直後にハメネイ師を中心に“ハメネイ師が死亡した際に行うべき一連の行動”が決められ、革命防衛隊に指示書が配布され、中央集権型のオペレーションではなく、各部隊のトップに現場での決定権を与えるという権限移譲まで行われていたとのことで、それが今、私たちが“見ている”イランによる大規模かつ迅速な報復攻撃だと考えます。

議会にも諮ることなく、国連安全保障理事会での協議・決議を経ることなく、イスラエルと共にイランへの大規模攻撃を実行し、ハメネイ師の排除まで行ったことは、明らかな国際法と言わざるを得ませんが、トランプ政権もネタニエフ政権も明らかに国連軽視を貫いていること以外に、なぜこのような蛮行・愚行に至ったのかという理由は見つかりません。

それはトランプ大統領が“理由と正当性”を尋ねられるたびに回答が異なることからも分かります。当初は「イランが弾道ミサイル発射の準備をしており、同盟国イスラエルはもちろん、アメリカ自身にとっても安全保障上の危機が差し迫っていたため、pre-emptive actionとして“自衛的に”先制攻撃を行った」と“安全保障上の差し迫った危機”を理由にしていましたが、様々な衛星画像などから「イランが弾道ミサイルを発射しようとしていた兆候が見当たらない」ことが分かってくると、当初は否定していたregime change(体制転換)を主だった理由に挙げるようになりました。

確かに年初からイラン全土において反体制デモが活発化し(背後にCIAやモサドの存在が指摘されている)、イラン政府はその弾圧において数千人から数万人とも言われる市民・参加者を殺害したと言われているため、現在のハメネイ師をトップとするイスラム法による厳格な統治に綻びが出てきていることは明らかだと考えますが、トランプ大統領が期待したようなイラン国内での独自の体制転換・クーデターは勃発せず、ある意味、緊張が漂いつつも、反米・反イスラエル姿勢で団結しているイランが継続していました。

今年初めごろはまだサウジアラビア王国との関係改善と反イスラエルでの共同歩調も順調で、アメリカとイスラエルがイランを攻撃するかもしれないとのうわさが広がった際も、サウジアラビアを中心に、カタールやUAEなどが「アメリカ軍およびイスラエル軍の航空機による自国の空域通過を許さない」と明言し、米・イスラエルvs.イランとアラブ諸国の構図が出来ており、アラブ諸国側は「米・イスラエルが主張するイランによる差し迫った危機および核兵器開発の兆候はなく、問題はイスラエルが相変わらず蛮行を止めないことにある」という共通認識を有していました。

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ついに切られた「世界を巻き込む大戦争」の火ぶた

ただ地域における核兵器の脅威を軽減するために、米・イラン間で行われている核協議の行方を注視し、イランが軍事目的での核兵器開発を止めることで、それがアラブ全体の非核化の実現と安定に繋がることから、合意の暁には、アラブ諸国は“イランのあらゆる経済復興およびエネルギー面での行いを支持する”というバックアップ体制までできていました。

一向に強硬な姿勢と要求を変えないアメリカ(特にJared Kushner氏)の態度と、広まる・深まるアラブとの絆をベースに、実は先週末か今週末にジュネーブで行われる協議では、イラン側は「もともと核兵器開発の意図はないが、アメリカ側がその明言を要求するのであれば、イラン側としては核兵器の開発を諦めるという約束をする用意がある。その見返りにアメリカは対イラン敵視政策を止め、対イラン経済制裁を撤廃することを要求する」という線まで踏み込む用意があるという情報が入っていました。

「釈然としないことも多々あるが、これで一旦、イラン絡みの危機は収まる」とジュネーブ行きの準備をしていたのですが、先述のように、その協議は開催されず、代わりに私たちは燃え盛るイラン全土の映像とイランによるアラブ諸国に散らばる米軍基地とイスラエルおよびイラン周辺諸国(UAE、サウジアラビア王国、カタール、バーレーン、クウェート、ヨルダンなど)やキプロス(EUメンバーでかつ英国の空軍基地がある)に対する大規模な報復攻撃、そしてアラブ諸国が貫いてきた沈黙の終わりを見せられています。

サウジアラビア王国やUAEはイランに対する報復攻撃を行う可能性に言及し、戦火は中東全域に広がる非常に危険な状態です。

結果として米・イスラエルによる対イラン攻撃は継続されていますし、日に日に参入してくる国々も増えてきています。

キプロスの基地を攻撃された英国はキプロス防衛のために地中海に駆逐艦を派遣しましたし、ギリシャもキプロスとの微妙な関係に沿って艦船を派遣し、UAEなどと相互防衛協定を持つフランスも原子力空母シャルル・ド・ゴールを地中海に派遣・展開するなど、欧州もこの紛争に巻き込まれる事態が生じています。

そして被害は出ていませんが、ちょうどイランとウクライナの間に位置するトルコにもイランのミサイルが飛来し、迎撃されたことで、戦争のウクライナへの拡大を阻む最後の砦たるトルコも一連の紛争に巻き込まれることになります(無事に迎撃してくれたおかげで、NATOの第5条の発動要件は満たさなかったのはラッキーでした)。

トルコと言えば、昨年にPKK(クルディスタン労働者党)と政府との間の和解が行われ、PKKの解散と40年以上にわたる反政府運動の停止が実現され、和平が成立したところですが、長引く対イラン攻撃の次のステージとしてアメリカとイスラエルがイラン国内のクルド人組織を地上部隊としてイランの体制転換のための駒として用いようとしている動きに対し、エルドアン大統領とトルコ政府が危機感を募らせて、イラン情勢への積極的な関与の可能性が高まっているという情報も入ってきています。

まさに第3次なのか第4次なのかもしれませんが、世界大戦の火ぶたが切って落とされてしまった気がしてなりません。

まさに予想していた最悪に近い状況が広がっているといっても過言ではないかと思いますが、このような状況下で得をする国・人がいるとしたら誰でしょうか?言い換えると「そもそもなぜこのような事態になったのでしょうか?」。

さらには「アメリカのトランプ大統領は今回のイランへの大規模な攻撃と広がる中東地域での不安定化によって何を得ようとしているのでしょうか?クリアな目的はあるのでしょうか?」

謎は深まるばかりですが、いくつか私の答えと見立てをご紹介できればと思います。

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「イランの体制転換」を狙うイスラエルの長期計画

まず「誰が得をするのか?」についてですが、これはトランプ大統領でもアメリカでもなく、ネタニエフ首相であり、イスラエル政府だと考えます。これは「では、何の目的で行われたのか?」という問いにも直接繋がりますが、【イランの体制転換(Regime Change)】であり、これは30年来のイスラエルの悲願の実現のために行われたと言い切れます。

ガザでの蛮行に対するトランプ政権の過剰なまでのイスラエル贔屓もそうですし、ハマスとの間接協議において提示してきた停戦案も悉くイスラエル寄りのものといえますが、このイスラエルべったりのアメリカ政府の姿勢は、政権によって強弱の度合いに違いはあるものの、一貫した外交方針です。

それをネタニエフ首相およびイスラエルは利用し、様々な形で実質的にワシントンDCの政治プロセスを“所有”することで、これまでに中東地域で戦争を引き起こしてきました。

リビアのカダフィ大佐掃討作戦、スーダンへの介入、ソマリア、ガザ、ヨルダン川西岸地区におけるユダヤ人入植地の拡大、レバノンのヒズボラへの攻撃、シリアへのあらゆる介入、イラクでの戦争、イエメン(フーシー派)への介入など、イスラエルがアメリカを利用して戦争を引き起こし、宿敵を倒してきたケースを数え上げるとキリがありませんが、その中でも最大の獲物こそがイランでした。

トランプ政権の強硬なイランへの姿勢を利用し、トランプ政権に“イランの核開発の疑念”を示し、バンカーバスターまで投入させてイランへの直接攻撃にアメリカを引きずりこみ、今回、イランに対する大規模攻撃にアメリカを参加させました。

これこそがイスラエルの地域における長期計画であり、その計画の実現のためにアメリカを引き込んで、アメリカの圧倒的な軍事力を盾にしたイスラエルの揺るぎなき一強体制の確立です。

そこに自国の核兵器とアメリカの核兵器が加わり、結果としてアラブ社会の抑圧を強化し、最終的には中国とロシアを中東地域から追い出すという、地政学的な動きといえます。

このイスラエルと米国の企てに中東アラブ諸国は気づいていたため、イスラエルに抵抗するための塊を作るため、中国とロシアを引き入れ、長年のライバルであったイランとも手を結んで基盤を固めつつ、アメリカをイスラエルから少しでも切り離すために、親米的な態度を取り続けるという、非常にデリケートなバランス外交を展開してきました。

今回のアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃への報復として、以前よりイラン政府は周辺国に散らばるアメリカ軍基地およびイスラエル全土を対象とすることは明確に述べつつ、「そのようなケースにならないことを望むし、そのための努力は惜しまない」と至る所で明言し続けていました。

ゆえに、アラブ諸国も領土内のアメリカ軍基地への攻撃は想定しつつも、インフラや市民施設への攻撃はないと考えていた模様ですが、イランの体制内では空港機能の停止や物流網の停止(ホルムズ海峡の閉鎖など)が、ハメネイ師が死亡した場合に取る戦略として含まれていたことで、アラブ諸国への攻撃が拡大するという不幸な結果になっており、反イスラエルの塊の結束に歪みが出るという流れになってしまっています。

ただ、アラブ諸国も報復攻撃の可能性を示唆しつつも、まだ行っていない理由の一つに「アメリカとイスラエルが主張する“イランからの差し迫った脅威”の存在」に対する大きな疑念が渦巻いているため、まだ本格的な対イラン戦争には踏み切っていません。

かなりすれすれのラインでの攻防になっていることは確実ですが、GCC(湾岸協力会議)諸国間で諸々の真偽を確かめ合う作業が進められています。

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すべて嘘だった「イランからの差し迫った脅威の存在」という疑念

このメルマガを書きながら、いろいろな情報を整理していますが、様々な分析を元に言えることはアメリカとイスラエルが今回の先制攻撃の理由として挙げた「イランからの差し迫った脅威が存在した」という“疑念”は、どうもすべて嘘だということです。

ジュネーブで米・イラン間の核協議の仲介をしていたオマーンの外務大臣や調停者が繰り返し話していた通り、開戦前でさえ、交渉は秩序の下で進展していたと認識しています。

ちなみに今回、米・イラン間で話し合い、アメリカが脅していた内容を見てみると、実際に10年前には合意済みの内容であり、イランやオマーンの調停担当者曰く、「アメリカは自らも決定に加わったはずの交渉合意内容をなぜ今、また蒸し返し、イランに対する攻撃を脅しとして示すのか、全く理解できない」とのことで、私も幻のジュネーブ行きの前にそのように考えていました。

“差し迫った脅威”など存在せず、イランがアメリカと再交渉する必要性もなかったはずです。そして“交渉”自体、アメリカがイランにケチをつけて、言うことを聞かせるための隠れ蓑に過ぎないことは明らかです。

実際に交渉の必要性を謳い、交渉の席に就きながら、アメリカはイランへの攻撃を昨年6月に行っていますし、今回も交渉が進展し、イランが折れて合意が近いという段階でその実を収穫する代わりに、またアメリカはイランへの攻撃を(イスラエルにそそのかされて)実施しました。

これを計画的な侵略と呼ばずして何と呼べばいいのか分からないほど、トランプ政権が出してくる正当化の根拠は陳腐なもので、明らかな嘘と分かるものですが、それを押し切って行動を進め、イスラエルが中東を支配して“大イスラエル”になり、地域における覇権を確実なものにするために、世界的な覇権の回復を目論むトランプのアメリカが力を貸すという構図が具現化されたのが、今回のイランへの破壊的な攻撃だと考えます。

その背後にあるのが、駐イスラエル米国大使のマイク・ハッカビ─が明言した「中東はすべてイスラエルのものであり、神が彼らに中東を与えたのだ。アメリカはその実現のために力を発揮しなくてはならない」という内容なのですが、ホワイトハウス内で彼のこのような発言を叱責するものは誰もおらず、欧米諸国もこの発言について特に懸念を表するようなことはしていません。キツイ言い方をすれば、欧米諸国もイスラエルに言いくるめられているのかもしれません。

イランによる反撃が予想以上に強烈であることと、軍事専門家でさえ初めて見ると言われるsuper sonicの弾道ミサイルが見事なまでにイスラエルの各都市に着弾する様を見て、そして報復の矛先がEUのメンバーでもあるキプロスにも及んだことで、欧州各国はやっと重い腰を上げたと言えますが、不快感を示しつつも、トランプ政権とイスラエルの蛮行を止める行動を取ることはせず、ただ「トランプ大統領にはイランの今後についての明確なプランがない」(ドイツのメルツ首相)と嘆くだけで、抑止力としては機能しない“役立たずな”姿を晒しています。

ウクライナへの対応でも既に露呈していますが、欧州は“べき論”を振りかざすのみで行動がとれず、アメリカに苦言を呈してみてもトランプ氏の動きを止めるだけの力はありません。キツイ言い方をすれば、欧州はすでに米国の属国に成り下がり、アメリカのグローバルな覇権回復と維持のための装置に過ぎないと言えます。

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誰もアメリカに支配される世界を望んでいないという現実

欧州各国のリーダーの中で、まだ麻痺していないと思うことができるのは、イタリアのメローニ首相くらいでしょうか。

彼女は今回の壊滅的なイラン情勢を前に「中東での爆発的な状況やキプロス上空のドローンは、別々の紛争ではなく、国際法の破壊の直接的な結果です。すべてはウクライナで始まりました。国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、隣国の国境を冷酷に侵害し、世界全体にルールはもはや適用されないというシグナルを送ったのです。(中略)残念ながら、ヨーロッパでの戦争はすでに始まっており、これらの出来事を“遠いもの・関係のないもの”と考えるのは非常に危険な幻想である、というのが現実です。ウクライナで破壊された法の支配を回復しなければ、混乱はますます悪化するばかりです」と嘆いていますが、この声に他の欧州のリーダーたちが呼応しないと、戦争はヨーロッパを確実に飲み込み、各地の紛争が連鎖して起こる世界大戦に突入することになります。

この起こり得る世界大戦を、アメリカはたとえ自国中心的な形であっても終結に導けるかどうかと考えてみた際に、大きな懸念と疑念が湧いてきます。

もし今、起き始めていると考える世界大戦が核戦争になったら世界の終焉を意味しますが、それを仮に防ぐことが出来たとしても、米国にはもう世界を運営するだけの経済力も技術的な優位もなく、中国の台頭を受けて、世界的な軍事力の優位性も疑問符がつく状態です。そして誰もアメリカに支配される世界を望んでいないのも現実です。

今回のイランへの攻撃の主目的は“体制転換(regime change)”で、ハメネイ師の殺害後、繰り返し「残った体制派による親米への転換」をトランプ大統領は謳っていますが、その可能性はゼロに等しく、1億人の人口を抱え、かつ旧ペルシャ王国の中枢をなす国として5,000年以上の歴史を誇る国ですので、遠く離れた“ただの世間知らずな”国からの代理人によって支配できる国ではありませんし、そのような姿勢は確実に中東アラブ諸国がいまだに恥と感じ、“欧米に騙された”と強く感じる歴史的な感情に火をつけて、結束して反米・反イスラエルに動くことが目に見えています。

今回のイランへの作戦は、確実にレッドラインを越えるものであったと言えますが、トランプ大統領は世界戦争と反米の連鎖の形成への導火線に火をつけてしまいました。

短期的にはトランプ大統領のアメリカとネタニエフ首相のイスラエルは軍事的な勝利を収めることになるでしょうが、どちらも決して無傷での勝利はなく、戦いが長引くにつれ、イランはもちろん、イランと一線を交えることになったアラブ諸国、そしてその背後にいる挑戦的なNATO加盟国で地域のパワーハウスであるトルコ(かなりの反イスラエル)、トルコの同胞であるアゼルバイジャンや他のトルコ系の国々が連鎖し、そこにロシアと中国が接近して、米・イスラエル陣営への攻撃を始めることになると考えられます。

また、通常は中立または静観を保つはずのインドは、3月4日・5日に起きたインド洋での海軍演習に参加していたイランの艦船を米軍の潜水艦が魚雷で沈め、80名超の死者を出した事件は、自国のsphere of influenceにおいて行われた蛮行であり、地域のリーダーたるインドの顔に泥を塗る行為および挑戦行為・威嚇と受け取られる可能性が高く、そうなるとインドが反米の陣営に与することも大いに予想できる展開となります。

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中東からアジアへと拡大する「戦争ドミノ」の恐怖

そのような事態になるとどのようなドミノ現象が起きるでしょうか?

イスラエルとハマスの戦いはアラブ諸国を巻き込んだ地域戦争に飛び火し、イランを巡る対峙に繋がり、トルコを経由して、ロシア・ウクライナ戦争に飛び火します。

そして東地中海を超えて東アフリカの不安定要因を際立たせ、それがクーデターベルト(西アフリカから中央アフリカに伸びてきているクーデターが勃発している国々の帯)を辿って、アフリカ全土を巻き込む戦争に繋がる恐れが高まります。

そしてアジア太平洋地域諸国を巻き込むことになれば、インドとパキスタンの緊張に再点火され、カシミール地方での対峙を経由して、中国との緊張が高まると、それは中国とインドの影響が及ぶミャンマーの内戦を激化させ、それがまたタイとカンボジア間での紛争を再度刺激することに繋がります。確実に戦争はドミノ倒しのように広がります。

そして今、イランとの攻防に力を削がれているアメリカは、(イスラエルが望む通りに中東の泥沼にはまり)中長期的に足止めを食らい、武器弾薬も大量に消費することで、ウクライナに対する武器供与の余裕がなくなり、欧州が全く頼りにならない中、ウクライナはロシアを前にして討ち死にするような悲劇に発展する可能性が高まります(実際にゼレンスキー大統領もその懸念を毎日のように口にしていますが、あまり相手にされていない模様です)。

中東での足止めは、アメリカの軍事的なプレゼンスがアジア太平洋地域から離れることも意味し、そうなると、就任以来、全く目立った成果を挙げていない習近平国家主席にとっては、予定を早めて台湾侵攻を強行して、宿願である台湾併合を成し遂げ、中華統一を旗印に、終身国家主席の地位を固めにいくインセンティブが一気に高まることになりかねません。

もし中国が台湾侵攻を強行し、周辺地域を勢力圏に収め、支配を確実にするためには、軍事的なシステムを構築するために与那国島を押さえにかかることが予想されますが、沖縄に鎮座する米軍やグアムにいるはずの米軍は本当に台湾および広域アジア太平洋地域の防衛に動く余裕があるかと考えると、かなり怪しいと感じます。

恐らく日米安保条約を盾に日本の防衛を依頼しても、トランプのアメリカからは「自国のことは自分で守れ」と言われるだけでなく、「台湾防衛と中国の伸長を食い止めるために、日韓が主力となって戦え」と言われるシナリオが予想されます。

そうなったら日本も韓国も台湾のために戦うのでしょうか?

領土的な話で言えば疑問ですが、ただ台湾が中国側に吸収されることは、すなわち東シナ海・南シナ海における領海のラインが変わり、かつ排他的経済水域(EEZ)が中国のEEZとぶつかるだけでなく、海路・輸送経路も大きく変わることを意味します。

ホルムズ海峡のコントロールに加え、東アジア諸国にとっては生命線となる台湾近郊の海域の通航も容易ではなくなることを意味します。これに対応するために、また愚かな戦争が勃発したら…。確実に世界大戦に巻き込まれることになります。

この悲劇を食い止めることができるのは、アメリカでもイスラエルでもなく、ましてやアメリカの属国になっている欧州でもありません。

アメリカに虐められつつもまだモノを言える大多数の国々が、アメリカ・イスラエル・ロシアが力任せに行う愚行と蛮行に対して「これらは完全に言語道断で、非常に危険で、決して看過できない違法行為だ」と公然と声を上げ、連帯することなのですが、果たしてそのような連帯は生まれるでしょうか?

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イラン攻撃を機に動き出した米イスラエル覇権の終焉

トランプ大統領やその次の大統領、そしてそのアメリカを“所有”するイスラエルは、引き続き力による外交を通じて、法の支配を無視し、自らの利害に基づいて、グローバルな覇権の構築と維持(イスラエルは地域覇権の確立)に突っ走ると思われますが、今回、イランへの大規模攻撃を強行したことで、アメリカもイスラエルも自らを長く続く泥沼の戦争にはまることになり、自らの優位性の終わりのプロローグとなるものと考えます。

残念ながら欧州各国やカナダ、オーストラリア、そして日本はアメリカの不当な侵略行為に対して一切の非難を行わず、盲目的に従っていますが、アメリカとイスラエルが力で他を抑えつける帝国的な思考と体制は、すでに今回のイランへの大規模攻撃を機に崩れ始めるエンドゲームを起動させたのではないかと恐れています。

そのような中、果たして希望の種はどこで見つけることができるのでしょうか?

“話し合い”が否定される中、その答えを見つけるのはとても難しいと痛切に感じています。

今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年3月6日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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