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「ネガキャン動画」問題は新局面へ。高市早苗首相と“秘書疑惑”の答弁と報道を振り返る

週刊誌報道をきっかけに浮上した「ネガティブキャンペーン動画問題」をめぐり、高市首相と公設第1秘書の関係に注目が集まっています。国会では野党が説明責任を追及する一方、高市首相は一貫して疑惑を否定し続けています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、一連の経緯や国会答弁の内容を振り返りながら、現在どのような論点が浮上しているのかを整理します。

サナエの悪あがき

将棋で言えば完全に詰んでる状態なのに、それでも決して自分の負けを認めず、宿題を忘れた小学生のような言い訳で「知らぬ存ぜぬ」を押し通し続ける高市早苗首相の往生際の悪さ&ツラの皮の分厚さは、もはやギネス世界記録級だと思います。何しろ、高市首相の公設第1秘書であり高市事務所の代表もつとめる木下剛志氏が「サナエトークン」の運営者でネガキャン動画の制作者とやり取りしたメールやLINEの画面が60通以上も公開されたのに、それでも「私は秘書を信じます」とノタマッたのですから。

百歩譲って、これが「そういう噂がある」というレベルの話であれば「私は秘書を信じます」でいいでしょう。しかし今回は、その秘書本人が相手とやり取りした物的証拠が数多く挙げられたのですから、自分に掛けられた疑惑を否定するのであれば、まずはそれらの証拠すべてが「誰かが捏造した偽物である」と証明しなければなりません。

それができないのであれば、少なくとも木下剛志氏を伴って記者会見を行ない、木下氏自身の口から「私はあのようなメールやLINEなど送っていない」と証言させるべきです。そして、その上で「私は秘書を信じます」と言わなくては、説得力がゼロです。

その上「週刊文春」は、次なる矢として、木下氏と相手とのウェブ会議の音声データを公開したのです。これはネガキャン動画の制作者本人から提供された音声データなので、高市首相は万事休すです。野党は「この音声が秘書本人か質疑するので聴いておくように」と高市首相に事前通達しました。

これまでは「週刊誌の記事など読んでいない」と言って知らぬ存ぜぬを続けて来た高市首相でしたが、今度は野党から事前通達があったのですから、質疑の場で「私は聴いていない」と言って逃げることはできなくなりました。それなのに、6月4日の衆院予算委員会で、高市首相は平然と「確認できていない」と言い放ったのです。高市首相いわく「該当記事は有料会員向けの記事だった。文春は私に対して虚偽の記事を書いて来た。そんな週刊誌の有料会員になろうとは思わない」とのこと。

ちなみに初月の会費は300円です。総裁選時にライバルだった小泉進次郎氏や林芳正氏をネガキャン動画で誹謗中傷しまくり、大逆転して自民党総裁の座を手に入れた時、高市首相は315人の自民党議員に1人当たり3万円のカタログギフトを大盤振る舞いしました。総額で1000万円近いバラマキですが、こんなにお金が有り余っているのに、わずか300円をケチッで音声データを聴いてないって、はぁ?

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これ、誰がどう見ても「音声データを聴いてないことにするための方便」として、該当記事が有料会員向けだったことを利用しただけじゃないですか? そして、野党から総攻撃を食らった高市首相は、この日の夜に音声データを聴くと約束しましたが、翌5日には「私と話す時よりもかなり高い声でハキハキとしゃべっていたので違和感があった。秘書本人かどうか判断するのは難しい」と白々しい答弁をしたのです。

すでに木下氏のふだんの会話の映像はネット上に流れており、それと文春の音声データを聴き比べると、声の高さも独特の訛りも瓜二つで、誰が聴いても同一人物であることは明白です。それなのに、この期に及んでも悪あがきを続ける高市首相。この呆れ返る答弁を受けて、当然のことながら野党からは、以前から出ていた木下剛志氏の国会への参考人招致の声が高まりました。

6月5日の参議院予算委員会では、これまで通り、文春の一連の報道をすべて「私の知る事実とはまったく違う」と否定し続ける高市首相に対して、立憲民主党の岸真紀子議員からは「第三者を入れて調査をしたらどうか」、塩村あやか議員からは「事実と違うのであれば弁護士を立てて抗議するなり訴えるなりすべき」との指摘がありました。

すると高市首相は「私は過去に(虚偽報道をした)週刊誌を訴えたこともある。しかし裁判に勝ったところで名誉は回復されず時間と労力の無駄だった」と述べた上で「私は国家を背負って仕事をしている。こんなことに時間を使っている暇などない」と一喝したのです。その瞬間、自民党席から拍手が巻き起こりました。何だかな~って感じですが、これが今の自民党の末期的な風景なのです。

目障りな野党議員をドナルド・トランプ並みの力技で押し出した高市首相に、ここからはホッとひと息つけるサービスタイムです。今回が初めての代表質問という自民党の生稲晃子議員は、まずは中東情勢やナフサの問題など当たり障りのないところからスタートしました。

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そして、自身も乳癌を経験したことから前向きに取り組んでいる「女性の癌の問題」に進みました。生稲議員としては、現行のマンモグラフィ検査には限界があるため、乳癌になる可能性の高い「高濃度乳房」の場合は、追加検査として超音波検査も加えられないかという、以前から訴えて来た内容でした。そして「生稲議員の初鳴きへのご祝儀」として、厚労省から前向きな回答が贈られるという台本通りの茶番劇もありつつ、質疑は癌患者の治療と仕事の両立についてスライドしました。

生稲晃子議員「治療と仕事の両立性についてお伺いいたします。私は2016年、安倍晋三元総理のもとで立ち上がった働き方改革会議に民間議員として参加させていただきました。乳癌経験者で治療をしながら働く人たちの代表として発言をさせていただきまして、この会議の中、1つの仕組みを提案しました。トライアングル型支援というもので、患者本人を中心に、医療機関、勤務先の企業、この2つを繋ぐ両立支援コーディネーターが連携をして、治療と仕事の両立を支える仕組みです。この仕組みは国によって実現させていただきました。
しかし、現場にはまだ多くの課題が残されています」

生稲議員「今、日本では2人に1人が癌になる時代です。癌と診断された人の2割が離職しているという現実があります。また告知から1年以内の自殺も大きな課題となっています。病気と闘うだけでも大変なのに、仕事を続けられるのか、職場に迷惑を掛けるのではないか、収入はどうなるのか、こうした不安を抱えながら治療を続けている人たちも少なくありません」

生稲議員「私は、治療をしながら働ける社会は、単なる福祉政策ではなく、日本の成長戦略だと考えています。少子高齢化が進み、人手不足が深刻化する中で、経験や能力を持つ方々が病気を理由に職場を離れざるをえないことは、本人にとっても企業にとっても、そして社会全体にとっても大きな損失です。その実現のためには、病気になっても働きたいという意欲を持っている人が働き続けることのできる社会を作ることが不可欠だと思います。総理に伺います。
治療と仕事の両立支援は人的資本への投資であり、わが国の成長力を支える重要な政策ですが、どのように位置づけていらっしゃるでしょうか」

高市早苗首相「私どもの事務所にも、膵臓癌ステージ4を告知されたのは去年でしたが、今も元気に働いている木下という秘書がおります。え~、あの~、治療と仕事の両立支援ですが、働き手の確保のためにも、それから病気でお辛い中でも生き甲斐を持って能力を発揮できる環境整備のために、重要だと考えております」

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この場面を見ていた人は、誰もが「えっ!」と思ったでしょう。高市陣営の「ネガキャン問題」だけでなく、怪しげな暗号資産「サナエトークン」の問題にも深く関わっていると報じられて来た、高市首相の公設第1秘書の木下剛志氏が「膵臓癌ステージ4」だと言うのです。これでは野党側は、身体に負担の掛かる「参考人招致」を要請しずらくなってしまうではありませんか。

しかし、今回の質疑とのバランスを考えてみると、ここで癌の詳しい内容や秘書の名前まで言及する必要があったのでしょうか。この流れであれば、単に「私の事務所にも癌の治療を受けながら元気に働いている秘書がおります」で十分なはずです。そう考えると、高市首相がわざわざ「膵臓癌ステージ4」だの「木下という秘書」だのと必要のない情報を盛り込んだのは、うがった見方をすれば「木下秘書は膵臓癌ステージ4なので参考人招致しないでほしい」という絶大なアピールということになってしまいます。

しかし、こんな良心的な見方をしたあたしは、まだまだ、うがりきっていませんでした。ネット上には「この木下秘書は木下剛志氏とは別の人物だ」「高市首相の奈良の事務所には、もう1人、木下という秘書がいる」という真偽不明のうがりまくった投稿がアッと言う間にあふれてしまったのです。もしもこれらの投稿が事実であれば、高市首相は木下剛志氏の参考人招致を野党に思いとどまらせるために、同姓の秘書の病気を悪用したということになるのです。

サスガにそこまで悪質なことはしないと思いますが、高市首相と言えば総務大臣時代から「総務省の文書は捏造」「安倍総理の国葬に反対するSNSの投稿の8割は隣りの大陸から」「外国人が奈良の鹿を蹴っている」など、息を吐くように嘘をつき続けて来た人物です。先日も経歴詐称が発覚したばかりですし、9月8日にはとうとう共同通信社が「ネガキャン動画の制作者とやり取りしていたメールのアドレスは木下剛志氏本人のもの」と確認したとして、この問題を報じました。そして、新聞各紙も後追いを開始したのです。

これまでは「所詮は週刊誌の報道」だとして軽視して来た高市首相でしたが、ついに新聞報道となってしまったのです。しかし、ここまで来てしまっても、高市首相は「これまでの答弁は揺るぎません」などと強気の姿勢を崩しません。今さら後戻りもできないのでしょうが、このまま無理を押し通しても次々とボロが出るだけです。唯一残された道は、自民党の政治家の十八番「すべての責任を秘書にかぶせてトカゲのしっぽ切り」ですが、とうとうナフサだけでなく自分の答弁まで目詰まりして来た高市首相、一体どうするつもりなのでしょうか?

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