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米独メディアも警告。高市首相の“財政ポピュリズム”が引き起こす「トラスショック」再来

高市早苗首相が衆院解散会見で打ち出した「積極財政」と「食料品2年間消費税ゼロ」が、日本の信用を国際的に揺るがす事態となっています。国債を増発して借金を増やしつつ税収を減らすという政策に、国内外の金融機関や投資家の間で不安が広がり、長期国債が売られて利回りが上昇しました。米国の世界最大級の資産運用会社は新規買い入れを停止し、ドイツメディアは「狂乱状態」と表現して英国の「トラスショック」を例に警告しています。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、漫画家・小林よしのりさん主宰の「ゴー宣道場」参加者としても知られる作家の泉美木蘭さんが、高市発言がもたらした金融危機とMMT理論の幻想について詳しく解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:泉美木蘭の「トンデモ見聞録・第387回 首相は日本国債の「信用保証人」である

首相は日本国債の「信用保証人」である

高市早苗が衆院解散会見で「積極財政」と「食料品2年間消費税ゼロ」をダブルで打ち出したことが、日本の信用を国際的に揺るがす事態となっている。

これは、国債を増発して借金を増やしつつ、税収を減らすという政策だ。

日本国債を買っている国内外の金融機関や投資家の間では、日本の財政運営への不安が広がり、長期国債が売られて利回りが上昇した。

国債とは、国におカネを貸した際に受け取る「借用書」のようなものだ。

「長期国債の利回りが上がる」とは、日本に30年、40年と長期間おカネを貸したままだと損するかもしれない、という見方が強まり、「そんな国債は買いたくない」「今持っている国債を売りたい」と考える人が増えて、国債の価格が下落、より高い見返りをつけなければ売れなくなっているということである。

これだけだと庶民からは遠い話のように感じるかもしれないが、国債の金利は、いずれ銀行の金利に影響を及ぼす。

住宅ローン、教育ローン、奨学金、自動車ローン、中小零細企業向けの融資。1~2年もすれば、クレジットカードの分割払い手数料や、賃貸物件のオーナーの財布を通じて、家賃や更新手数料にまで影響が及ぶだろう。

そして、おカネを貸してくれた人に、高い見返りを支払うのは日本だ。

つまり今後、日本は借金をするたびに高金利になってしまい、そのツケは数年後、国民に回ってくる。高い金利負担が財政を圧迫し、医療や介護、子育ての支援にまで圧力がかかる可能性まで出てくるのだ。

日本の借金は、1324兆円(!)。

国が1年間で稼ぐおカネ(GDP)の2.3倍以上にまで膨れ上がっていて、主要先進国の中でもケタ違いの水準だ。単純に人口で割ると、国民1人あたり1000万円以上になる。

それでも「責任ある積極財政」と、なんだか強そうでプラスの感じがしてカッコよく感じさせる単語を使って、29.6兆円もの国債を発行して借金を増やす一方、食料品の消費税・約5兆円を2年間ゼロにしたいと言う。

減税は、消費者には歓迎されるが、肝心の「どう穴埋めするか」の説明がない。野党の減税政策に対抗心をかまして、「財政ポピュリズム」と言っていい政策を打ち出したことは明らかだった。

この事態に、金融市場はたちまち「やばくない?」と反応したというわけである。

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日本の首相は「日本国債の信用保証人」

もちろん、野党の減税政策にしても、財源や効果について腑に落ちる説明がない。メディアは「与党も野党も、実現性のない減税競争で、どっちもどっち」という論調だ。

食料品を減税したところで、農業・漁業などの生産者も、加工品の製造工場も、円安で燃料や肥料、材料が高騰しているのだから値上げをしないと苦しい。特に、新鮮なうちに売り切らなければならない生鮮食品は、生産者にしわ寄せとなり、後から値上げとして跳ね返るのではないかと私は疑問を持っている。

与野党いずれにしろため息が出るが、世界が見ているのは、やはり「首相」として盛大に演説した高市早苗の発言なのだ。

そもそも日本の首相は「日本国債の信用保証人」である。

その首相の発言は、たとえ国内向けの記者会見であっても、「国債市場に対するメッセージ」になる。

国債という借用書は、「日本国はお借りしたおカネを、きちんとお返しします」「財政運営には責任を持ち、無茶はいたしません」という国家としての信用があってこそ成り立っているものだ。そして、日本国債は、これまで「世界最大の安全資産」と言われてきた。

その信用を、言葉と態度で体現する立場にいるのが、首相である。

ところが、その本人が、国債増発を「選挙のカード」として使い、借金を増やす一方で税金は減らすという、とても健全とは言えない財政運営に対する軽々しい態度を晒してしまった。

高市:実現するとは言っていません、「検討を加速する」だけですよ。 国民:なんだ、選挙用のリップサービスかよ。

日本国内なら、この程度で済むだろう。だが、市場の見る目は違う。

「日本は、国債の信認よりも、選挙を優先する国なのか?」

本来なら、首相は財政ポピュリズムのブレーキ役となるべき存在だったのに、みずから率先して火に油を注いでしまったのだ。高市の言葉は、あまりにも軽々しかった。

国内外で非難轟轟「日本、こわっ……」

この事態を受けて、日本では、長期国債の大きな買い手である生命保険会社に動揺が走り、金融庁が急遽調査を行ったと報道されている。

生命保険会社は、将来の保険金支払いに備えて巨額の国債を保有しているため、金利が上昇すると損失につながり、経営そのものに影響しかねないからだ。

米国では、日本の長期国債を持続的に買い入れしてきた世界最大級の資産運用会社が、「日本の財政政策への懸念」を理由に、新規の買い入れを停止。米メディアも、高市発言について「新たな不安定要因を生み出している」と警笛を鳴らしている。

ドイツの経済日刊紙は、日本国債の利回り上昇を「狂乱状態」と表現。高市発言について「財政の持続可能性に深刻な疑問を投げかけている」と厳しく批判した。

その上で、2022年に英国首相だったリズ・トラスが起こした金融パニック「トラスショック」を例に挙げている。

トラスは、財政規律を軽視したメッセージを発信し、財源の裏付けのない減税を打ち出した。それが引き金となり、英国国債暴落、金利急騰、ポンド急落を引き起こして首相辞任に追い込まれている。

この事件以降、「首相の言葉は、国債の信用そのものにつながる」という認識が国際的に共有されるようになり、各国の市場関係者は、首相による財政発言に神経を尖らせるようになった。

とりわけ、経済規模の大きい日本の国債が、これまでの「安心・安定・信用」を失い、急激に値動きするような事態になれば、その影響は世界に波及しないとも限らない。予想もつかない金融ショックの引き金になる可能性すらあるのだ。

「日本、こわっ……」

今回の件で、世界からそう見られはじめ、日本の「信用」は「警戒」の対象になったと言っても、過言ではないだろう。

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「MMT理論」という思い込み

日本ではこれまで、「国債を大量に発行したために、値崩れして金利が跳ね上がる」ということが起きないように、日銀が国債を大量に買い支えてきた。

近年もてはやされている経済理論のひとつに「自国通貨建ての国債なら、どれだけ発行しても、日銀がおカネを刷って買えばいいので、破綻しにくい。だから緊縮財政なんかやめるべき」と主張するMMT(現代貨幣理論)というものがあるが、高市はこれを好んでいるらしい。

簡略して説明すると、MMT理論は「国民から徴収した税金で、どうやりくりするか」ではなく、「まず政府がおカネを使って回し、税金で物価を調整する」というものだ。

市場に出回るおカネが増えると、そのおカネの取り合いになり、物やサービスの値段は上がりやすくなる。物価が上がり続ける「インフレ」という現象だ。

そのため、通常は、日銀が、銀行の金利を引き上げて、おカネの流れにブレーキをかけることで物価を制御するのだが、MMT理論では、それを増税や出費控えで調整するという。

物価の変動に応じて、増税だ、減税だ、予算変更だと即座に国会審議を通せるものだろうか? 増税なら反発必至だし、そのたびに何百億円も税金を使って選挙をするわけにもいかない。私には現実的とは思えない。

このMMT理論が脚光を浴びたのはコロナ禍だった。

「こんなに給付金をばらまいて大丈夫か?」「ギリシャみたいに財政破綻するのでは?」という議論が起き、MMT論者がこう主張している。

「ギリシャは自国の通貨ではなくユーロで、中央銀行が自由に国債を買い支えられない。一方、日本は自国通貨”円建て”の国債だし、日銀がいくらでもおカネを刷って買えるから、財政破綻しない。

そもそも、アベノミクス以降ずっと金融緩和して、ブレーキなど踏まなかったのに、インフレにならなかったのだから大丈夫だ」

デフレ時代だから「うまくいくように見えた」

たしかに日本は、「ゼロ金利」「マイナス金利」と手を打って、おカネを流れやすくしてきたが、物価は上がらず、不況から立ち上がれない時代が長く続いた。

吉野家の牛丼は280円(現在453円)に、マクドナルドのハンバーガーは59円(現在190円)に値下げされ、街には100円ショップが増殖した。

価格比較サイト『価格ドットコム』が急伸し、家電もパソコンも「どの店が最安値で売っているか」を比較するようになった。『アマゾン』では、新品と同じページで中古品が売られ、定価販売が敬遠されがちになった。

「もっと安く買える店があるはず」「待てば安くなるはず」──それが、物価が下落し続ける「デフレ」時代の庶民感覚だった。

こうなった大きな理由は、新自由主義の世界の仕組みだ。

世界全体で生産効率を追い求めて、国際分業体制が進み、低賃金・低価格が当たり前になった。その中で日本は、賃金も上がらず、将来不安は強くなり、少子高齢化まで起きて、家計も企業も「おカネは貯めておかねば」という感覚になった。

日本は不況でも、ユニクロやH&M、しまむらで服は整う。お腹が空けばコンビニがある。サイゼリヤに行けば280円でミラノ風ドリアが食べられるし、グラスワインが100円で飲める。家には、メルカリで売るほど不用品があるし、猛烈に買いたい物はない。

だから、政府がおカネの量を増やしても、それが消費に回らず、物価に反映されなかった。

つまり、日本でMMTが「うまくいくように見えた」のは、世界全体が、安さを競い合うデフレ時代だったからだ。

だが、今は状況が一変したーーー (『小林よしのりライジング』2026年1月27日号より一部抜粋・敬称略。続きはメルマガご登録の上お楽しみください)

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【著者】 小林よしのり 【月額】 ¥550/月(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4火曜日 発行予定

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