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「台湾有事」は本当に迫っているのか?外交攻勢で“外堀”を埋める中国の静かな戦略

「喫緊の危機」のように語られ続けている、中国による台湾への武力侵攻という言説。しかし事態は水面下で、これまでとは異なる様相を見せ始めているようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、世界各国の中国への対応の変化について詳しく解説。さらに習近平政権が推し進める「外交による台湾封じ込め」の構図を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:単なる「中国シフト」ではない 中国は外交攻勢で台湾問題を抑え込む

「武力」は行使せず。外交攻勢で台湾問題を抑え込む中国

先週は、このメルマガでファイブアイズの国々がコロナ禍で停滞した対中外交の扉を6年から8年ぶりに開けて、本格的に動き出していることをレポートした。

【関連】世界は「脱米国」へと踏み出したのか?カナダとイギリス両首相の“訪中”が映し出す「米覇権時代の終焉」

そうした見立ては、いま欧米メディアにも広がっている。

例えば、直後に出された『フォーブス』の記事「トランプが促す『中国ピボット』 米関税、世界の貿易構造を再編」(英語版は1月31日)だ。

記事では、カナダのマーク・カーニー首相や英国のキア・スターマー首相のほか、フィンランド、フランス、アイルランド、韓国など数々の主要経済国の首脳が相次いで中国を訪れ、次にドイツのフリードリヒ・メルツ首相の訪中が控えていることを受け、

各国首脳が中国の習近平国家主席や李強首相に会おうと次々に北京詣でをしている状況は、「中国へのピボット」という大きな動きが世界貿易の構造をリアルタイムで再編しつつあることを物語っている。

という現状分析が紹介されている。

まったく同感である。

だが、中国の外交攻勢はこれだけではない。ロシアのウラジミール・プーチン大統領と春節前のオンラインでの会談を行ったほか、ドナルド・トランプ大統領とも電話会談をこなしたからだ。

中国とロシアのここ数年の蜜月関係についてはいまさら言うまでもないことだ。首脳会談のなかでモニターに映し出されるプーチン氏の柔和な表情は、他の場面で見る険しい顔つき大統領とは別人だった。

習近平国家主席が米ロの首脳とどんなことを語り合ったのか、簡単に振り返っておこう。

まずはプーチン大統領との内容だが、注目はプーチン氏の「ロシアは中国と共に、国連、上海協力機構(SCO)、BRICS等の多国間枠組みで戦略的協力を継続し、国際問題にプラスのエネルギーをもたらすことを望んでいる」という発言だ。

多分に、アメリカの国際法無視、国連秩序軽視を意識した発言で、SCO、BRICSを軸とした国際秩序の構築を呼びかけているかのようだが、中国の反応は慎重である。

4月にトランプ大統領の訪問を成功させる意図が働いているからだろう。

そのトランプ大統領との会談では、前回の「(台湾は)まったく話題にならなかった」というのとは打って変わって真正面から台湾の話題が取り上げられた。

習主席が、「台湾問題は中米関係において最も重要な問題だ。台湾は中国の領土であり、中国は国家の主権及び領土的一体性を守らなければならず、台湾の分離を許すことは永遠にあり得ない。米国は対台湾武器売却の問題を慎重に扱わなければならない」と強調したのに対して、トランプ大統領が以下のように答えたという。

「米国と中国はいずれも偉大な国家であり、米中関係は世界で最も重要な二国間関係だ。私は習主席と素晴らしい関係を築いており、習主席を大変尊敬している。私と習主席の導きのもと、米中は経済貿易分野で良好な相互交流を行ってきた。私は中国の成功を歓迎する。米側は中国側と協力を強化し、両国関係の新たな発展を後押しすることを望んでいる。私は台湾問題における中国側の懸念を重視しており、中国側と意思疎通を保ち、私の任期中、良好かつ安定した米中関係を維持していきたい」

中国側の発表だが、それでも「台湾問題における中国側の懸念を重視しており、中国側と意思疎通を保ち」と応じているのは注目に値する。

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台湾を安定して手元に引き寄せられる状況にこぎつけた中国

台湾側もこのことを気にしたのか、米中首脳の電話会談に素早く反応し、ロイターによれば台湾の頼清徳総統は、「米国との関係は『揺るぎない』ものであり、協力プログラムは継続され、変更はない」と述べたという。

だが、同じ時期、北京では中国共産党中央委員会台湾事務弁公室・海峡両岸関係研究センターと、中国国民党国政研究基金会が共同主催する国共両党シンクタンク・フォーラムが開催された。

これは国民党の代表団が訪れ、中国側と接触する前哨戦だと考えられていて、中台の別の意味での接近を象徴するフォーラムと位置付けられている。

国民党の新しい主席の鄭麗文は、中国との関係改善に前向きな党首として知られている。彼女が当選した時には習近平からいち早く祝電が送られている。

北京に日参する西側先進国の首脳たちが「一つの中国」という原則に理解を示し、一方で台湾の野党とも着実に関係を深める中国──。

この流れをどう理解すべきか。

日本では専ら「台湾有事は日本の有事」という発想で、欧米メディアにもそうした見方は根強い。

例えば、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の2026年3月号は、「台湾に迫り来る嵐──北京を行動に駆り立てる複合要因」という記事を載せ、北京の武力行使に警戒すべきと警告している。

その理由は

北京は「ドナルド・トランプほど台湾に無関心で、台湾海峡に軍事介入してくる可能性の低い米大統領は今後現れない」と確信している

からだという。

だが、一方では中国を取り巻く外交環境や台湾内部の変化もあり、外堀は確実に埋められているようにも見える。

リトアニアの首相も台湾の事実上の大使館設置を「誤り」と認め、中国との関係改善に乗り出している。

北京にとっては、焦らず待っている方がはるかに安定して台湾を手元に引き寄せられる状況ではないだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年2月8日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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