「日本を滅ぼすのは中国ではなくアメリカ」。昨今、こんな論調が見られるようになってきましたが、国際関係アナリストの北野幸伯さんは無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、「沖縄を狙う中国の方が差し迫った脅威だ」と主張しています。
日本を滅ぼすのはアメリカ? 中国?
先日、国際派日本人養成講座(JOG)から転載させていただいた「地球史探訪:海洋国家の衰亡への道~月尾嘉雄『日本が世界地図から消滅しないための戦略』を読む」に大変多くの読者さんから、共感と感謝のメールをいただきました。ありがとうございます! たくさんいただいた中に、1通興味深いメールがありました。
「古代の海洋国家カルタゴは、ローマに滅ぼされました。今、日本をカルタゴにたとえると、(日本を滅ぼす)ローマにあたるのは、中国ではなく、『アメリカ』なのではないですか?」
実をいうと、こういう見方は、「大流行している」といえるでしょう。
なぜそういう話になるのか?
日本は今、「自虐史観」から脱却しつつあります。そうなると、「なんで俺たち自虐史観もってたんだっけ?」と疑問を持つようになる。調べてみると、「アメリカGHQが洗脳したからだ!」という結論が、容易にでてきます。
さらに調べてみると、日本の政治は、「アメリカの傀儡」といえるような状態である。アメリカは終戦直後だけでなく、現在にいたるまで、私たちを支配している。
とまあ、ドンドン話がひろがり、深まり、「諸悪の根源はアメリカである!」となっていく。これに関連して、いくつか大ベストセラーも出ています。代表的なのは、『戦後史の正体(孫崎 享)』『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか(矢部 宏治)』でしょう。是非、ご一読ください。
さらに視野がひろがると、「この世界はどういう支配構造になっているんだ?」と考えはじめます。すると、「アメリカという国は、世界通貨(=基軸通貨)の発行権を握っている」という事実に気がつく。しかも、世界通貨ドルを刷っているのは、「アメリカ国」ではなく、【民間銀行】(!)である、FRBが行っている。
これ、知っている人には常識ですが、知らない人は【トンデモ】だと思うでしょう? 是非、これを機に、興味をもって調べてみてください。参考までに、ウィキペディアから転載しておきます。短いですが、非常に重要な内容を含んでいますので、熟読してみてください。
連邦準備制度(れんぽうじゅんびせいど、英語: Federal Reserve System, FRS)は、アメリカ合衆国の中央銀行制度を司る私有企業体で、ワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)が全国の主要都市に散在する連邦準備銀行(Federal Reserve Bank, FRB)を統括する組織形態を特徴とする。
FRBは日本の日本銀行に相当し、紙幣の発行などを行う。
「連邦 (Federal)」という語があることから、連邦政府系の機関であると誤解されるが、FRBの株式は民間金融機関が所有しており、連邦議会による監査などは一切行われていない。」
アメリカの中央銀行にあたるFRBは「民間金融機関が所有しており、連邦議会による監査などは一切行われていない」。こういう事実にたいして、「ずるいぞ!」という反応が当然でる。それで欧州エリートは、「ユーロ」を作った。中国とロシアは、組んで「米ドル基軸通貨制」を崩壊させるべく、さまざま画策している。細かくなるので、詳述はしませんが、もっと詳しく知りたい方は、『世界一わかりやすいアメリカ没落の真実(北野幸伯著)』をご一読ください。
というわけで、「アメリカが諸悪の根源説」にも一理ある。そして、私たちは大人ですから、もちろん「アメリカの暗部」も、「世界の支配構造」も知っておくべきなのです。
しかし、中国は、アメリカよりマシなのか?
「アメリカは悪いことをたくさんしている」
これは事実ですが、だからといって、「中国は善である」という話にはなりません。ならないですよね? どうですか?
正直いうと、日本には、「アメリカは諸悪の根源。(だから?)中国は善である」という人が、多いです。「自主派」「自立派」といいながら、実をいうと「親中派」という人がとても多い。
そして彼らは、「日本は中国に悪いことをした」と、日本の過去を攻めます。こういう人たちは、「人権」とか、「戦争反対」とかもっともらしい言葉を口にしている。
一方で
- 中国は、虫も殺さぬチベット人を120万人虐殺した
- 中国では、文化大革命のとき、40~1000万人(諸説あり)が殺された
- 中国では、大躍進政策の失敗で、2000~5000万人(諸説あり)が餓死した
- 中国は、ウイグルで46回も核兵器実験を行い、ウイグル人を大虐殺した
これら衝撃の事実は、「完全にスルー」します。「安倍は独裁だ!」と叫ぶ一方で、中国が公式的に「共産党の一党独裁」である事実は、完全に無視する。それどころか、中国に「言論の自由」「信教の自由」「結社の自由」など「基本的人権」が「全然ない」ことを見事に無視し、「これからは中国の時代。日本も乗り遅れるな!」などというのです。
中国に比べれば、アメリカは「まだマシ」という証拠
実際、第2次大戦後、日本は「アメリカの支配下」に入って、「まだマシ」でした。証拠もあります。
戦後アメリカの支配下に入った、日本と西欧。
共産ソ連の支配下に入った、中国と東欧諸国。
「政治は民主主義」「経済は資本主義」のいわゆる西側諸国は、共産国家群に比べ、比較的自由であり、国民も豊かさを享受できるようになりました。
一方で、「政治は共産党の一党独裁」「経済は全部国営の計画経済」だったいわゆる東側諸国。
まず政治的には、しばしば「自国民の虐殺」が行われた(例、スターリンのソ連、毛沢東の中国、金日成の北朝鮮、ポルポトのカンボジア)。
経済的には、西側諸国に決定的に遅れ、貧しい生活を強いられた。私は、モスクワにソ連末期から住んでいます。だから、当時の経済状況を知っています。90年代の初め
- 首都モスクワでも自動車は少なく、道路はいつもスカスカ
- テレビは白黒が多い
- ビデオがある家はほとんどない
- 洗濯機がない家も珍しくない
こんな状況だった。私は、モスクワの庶民の暮らしを見て、「こりゃダメだ」とすぐ思いました。
西側諸国の方が「マシ」である、明らかな例もあります。そう、アメリカに支配された韓国と、ソ連、後に中国に支配された北朝鮮の違い。もともと北朝鮮と韓国は同じ民族なので、いいサンプルです。
アメリカに支配された韓国の、1人当たりGDPは、2万8100ドルで、世界31位(2014年))。
一方の北朝鮮、公式統計はないものの、韓国統計庁の推計で、2010年1074ドルとなっています。
「どう考えてもアメリカに支配された韓国の方が豊かで自由」であるといえるでしょう。
中国は、1978年まで「ソ連経済」の真似をして貧しく暮らしてきた。しかし、賢い鄧小平が「日本経済を真似る」路線に転換し、急成長がはじまった。そして、現在では、GDPも軍事費も世界2位になっている。
しかし、「共産党の一党独裁国家」「世界有数の人権侵害国家」である「政治面」は変わっていません。
なぜ私は、アメリカの脅威より中国の脅威を重要視するのか?
これ、もう何十回も書きました。中国が、このような戦略をもっているからです。ここに書かれていることの本質は
- 中国は、ロシア、韓国とともに、「反日統一共同戦線」をつくる
- 日本には、北方4島、竹島の領有権がない。そして【沖縄】の領有権もない!
- 反日統一共同戦線には、【アメリカ】も引き入れるべし!
です。これを読めば
- 中国は、「反日統一共同戦線」を構築している
- 中国は、「沖縄」を狙っている
- 中国は、「アメリカ」を味方にして、日本をつぶそうとしている
ことは明白です。「中国は脅威でない」という人は、なぜ「反日統一戦線をつくり、沖縄の領有権を主張する」中国が「脅威でない」のか、納得のいく説明をして欲しいと思います。
というわけで、私は、アメリカのさまざまなネガティブ面を知り尽くした上で、なお「沖縄を狙う中国の方が、差し迫った脅威だ」と思うわけです。
アメリカの問題は、もう70年もつづいています。だから、まず中国問題を片付けて、その後アメリカ問題に取り組めばよいのです。
image by:wikimedia commons
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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