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黒歴史を忘れない。日本人に突きつけられた「21世紀の不平等」

共産主義・民主主義を問わず「万人、万国が平等」という建前はとうに崩壊、個人や国家間の格差に様々な場所から怒りの声が上がり続けています。そんな世界を我々は、そして日本はどう生き抜いていけばいいのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが、歴史を紐解きながらその術を提示しています。

「平等」な民主主義の大ウソ

私の住んでいるロシアは、1991年まで共産主義国家でした。共産主義国家は、「すべての人は平等である」という理想をもって建設されたのです。

ところが、建前どおりには行きませんでした。やはり特権階級が登場した。「すべての人は平等である。しかし、ある人々は、『より平等』である」。ソ連の民は、ぜいたくな暮らしをする共産党幹部をこう皮肉っていました。

「……やっぱり、ソ連はロクなもんじゃないですね!」

その通りです。私は、共産主義者だったことはありません。しかし、こっちに来てみて、「やっぱ共産主義はダメだ!」と実感しました。

「やっぱり民主主義ですよね!」

そのとおりです。私も独裁より民主主義の方がずっとマシ」だと思います。しかし一方で、「民主主義は、『みんな平等』」というのも幻想です。

どこにでもいる、「より平等」な存在

私は、毎年開催される、「ユーロビジョン」という歌コンテストを楽しみにしています。今年は5月14日、スウェーデンで開催され、42か国の代表が歌を披露しました。1位ウクライナ、2位オーストラリア、3位ロシアという結果。

どうやって勝者を決めるのか? 投票で決まるのです。視聴者が、気に入った人に電話で投票する。そうなると、「人口の多い国」が毎回勝ってしまいます。それで、「自国の代表には投票できない。自国以外の人に投票しなければならない」という規則がある。たとえば、ロシアに住む人は、ロシア代表に1票入れることができません。

「視聴者が勝者を決める歌コンテスト」、なんとも「民主主義的」ですね。しかし、ここにも「より平等」な存在がいます。ユーロビジョンには、予選と本選がある。普通の国は、予選でトップ10に入らなければ本選に進めない。しかし、「BIG4」と呼ばれる4か国は、予選に出ず、毎年本選に直行できるのです。イギリス、ドイツ、フランス、スペインです。

「すべての国は平等である。しかし、ある国は、『より平等』である」。こういう欺瞞は、どこにでもあります。たとえば、全加盟国が平等に1票をもつ「国連総会」。

総会の決議には、「強制力」がありません。強制力があるのは、「国連安保理」。そして安保理には、「常任理事国」がいて、「拒否権」をもっている。拒否権をもつ常任理事国とは、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国。そして、この5大国は、「核兵器拡散防止条約」(NPT)で、「合法的」に核兵器保有を許されている。

NPTは、「5大国以外の核兵器保有を禁止する」「不平等条約」なのです(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮は、NPT体制に入らず核兵器を保有している)。

不平等な世界をいかに生きるか?

というわけで、「平等な民主主義世界の中には、多くの欺瞞が隠れています。「こんな現状は嫌だ!」というとき、2つの道があります。

1つは、「体制を無視して独自の道をいく」こと。しかし、これは「破滅への道」です。日本は、かつてこの方法で「いける!」と思いました。1930年代はじめ、満州国問題で国際連盟と揉めた。日本以外のすべての国が、満州国建国に反対した。それで、日本はブチ切れて、国際連盟を脱退してしまった。国民は、政府の勇気ある決断を支持し、帰国した松岡全権代表は、「国民的英雄」として、大歓迎されたのです。

しかし、その後の日本はどうでしょう? 世界を敵にまわして戦い、大敗北です。このことは、いまの日本人も「大いなる教訓」として覚えておくべきです。

190か国が参加する世界秩序NPTから脱退しても、「核兵器保有するべきだ!」という人がいます。まさに、「満州国は日本の生命線!国際連盟を脱退しても守る」と叫んでいた1930年代と同じ道ですね。

もう1つの方法は、「体制内で力を増し変革すること」です。「そんなことは不可能だ!」と思うかもしれません。しかし、そうでもないのです。19世紀の半ば、日本は欧米列強と不平等条約を結ばされました。日本政府は、辛抱強く交渉を進め、56年かけてこれを平等なものにかえました。それに、国際連盟で日本は、「常任理事国だった事実も忘れるべきではないでしょう。

最近では、中国の人民元が「SDRの構成通貨入りした」(15年11月)という大きな出来事がありました。これも中国は、「体制を破壊せず」「中から働きかけること」で達成したのです。人民元SDR構成通貨入りの善悪はともかく、「手法」は学ぶべきですね。

私たちは、「不平等な世界」に生きています。それが嫌で、ブチ切れて過激な行動に出れば、潰される。1930年代の日本から、比較的最近の「ジャニーズ騒動」まで。次元は違っても、同じような出来事は、頻繁に起こっているのです。

過激な行動に出て潰される国、人々から得られる教訓は何でしょうか?

忍耐強くあれ現実主義者であれ理想に向かってゆっくり進め

image by: Shutterstock

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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