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糖尿病にかかって研究を始めた?江部康二×桐山秀樹『糖質制限』対談(1)

糖尿病の予防・改善に効果的な治療法として、またダイエット法としてもすっかり定着した糖質制限。今回は、そんな糖質制限の提唱者として知られる医師の江部康二先生と、先日『おやじダイエット部新入部員 脱・メタボ14日間の旅!』を上梓されたばかりのノンフィクション作家・桐山秀樹さんによる、クロストークの模様を大公開! 第1回目は、お2人それぞれの“糖質制限との出会い”について、大いに語っていただきました。

ふたりの糖質制限との出会い

―――まずは、お二人が出会われたきっかけですが、桐山さんが糖尿病と宣告された時に、江部先生の著作を偶然読まれたのがきっかけだったということですが……。

桐山:そのときは糖尿病だけじゃなくて、高血圧と狭心症、そして心筋梗塞にもなりかけ、という診断をされまして。まさに“死の四重奏”(笑)。医者に「死にますよ」と滅茶苦茶に叱られて、しょげて帰って来たその晩に、自宅で雑誌を見ていたら、江部先生の著作の広告を見かけて。

江部:あれは、何の本やったっけ?

桐山:プレジデント社の雑誌『dancyu』の別冊で、『満腹ダイエット』です。プレジデント社には知り合いの編集者がいるので、次の日に「実は糖尿病になって……」って話をしたら、すぐにその本が宅急便で届けられてきたんですよ。

江部:『dancyu』は、その前から仕事で関わってたんだよね。

桐山:そうです、グルメ取材で。取材日程の関係で、焼きそばを一日七食とか、そういうタイトな取材も当時はありましたね(笑)。だからその頃、体重が92㎏ぐらいあった。

江部:そうなるだろうなぁ(笑)。

桐山:で、届いた本を読んで、次の日からすぐさま実践したんです。糖質を一切取らないようにする「スーパー糖質制限」を。そうしたら、92kgあった体重がみるみる減って、糖尿病の数値も瞬く間に良くなったので、「これはすごい」と思って。

江部:実際にお会いしたのは、痩せてからかな。結局、それで20kgぐらい痩せたんだっけ?

桐山:そうですね、一番体重が減った時で67kgまで落ちて。その後は、糖質を制限する基準を若干緩やかにしていて、今は70kg~73kgあたりをキープするようにしています。糖尿病の宣告を受けてから、かれこれ5年経ちますが、実践したことは「スーパー糖質制限」だけだったんですが。

江部:はじめてお会いしたのは、東京だったっけ?

桐山:そうですね。江部先生の会議が東京であって、その夜の懇親会でした。先生にぜひともお礼をしなければ、ということで、お会いして。その後は、取材なども兼ねて、先生のいらっしゃる京都の高雄病院に度々お邪魔させていただいて、糖質制限の疑問点をお聞きするといった感じに。

江部:そうそう。最初にお会いした時、桐山さんの検査結果の数値も見せてもらった。

桐山:そうです。それでメールでも頻繁に相談させていただいて……。

江部:初期はいろいろアドバイスしてたな。最初の頃は、糖尿病のお薬を飲みながら、糖質制限をしていたもんだから、「それすぐに止めてちょうだい」とか。

桐山:そうですね、本当ありがたかったです。通院しているわけでもなく、お金を払っているわけでもないのに(笑)。

江部:いやいや。……アドラー心理学で言うところの「他者貢献」ですよ。それが本人の幸せにつながると、アドラーがそうおっしゃっております。

―――「糖質制限」には、桐山さんが実践された「スーパー糖質制限」も含めて、3つのパターンがあるんですよね?

江部:いや、今は4種類あると考えてもらったほうがいい。

桐山:そうなんですか。

江部:桐山さんが実践していた「スーパー糖質制限」は、1食分の糖質量の目安が10~20gと、ほぼ摂らないようにする。白米・小麦粉などを使ったパン・麺類など、糖質が多く含まれる食品はNG。糖尿病になってしまうと、こうでもしないと血糖値は下がらない。

「スタンダード糖質制限」は、昼食は糖質OKで白いご飯も少しは食べていいけど、朝と夜はガマンしてねっていうスタイル。これはサラリーマンの方とか、お昼は外食が多いから、そこで糖質を控えるのはハードルが高いということで、このやり方を推奨しているの。

で、主にダイエットを目的にしている方に勧めているのが、最初の2週間は「スーパー糖質制限」で頑張って、それで5kgぐらい痩せたら、その後は「プチ糖質制限」といって、夜だけ糖質を制限して痩せた体重を維持する方法。

―――従来までの3つのパターンですね。

江部:そして最近、新たに提唱しているのが「緩やかな糖質制限」で、これは“糖尿病になりたくない”って考えている方に向けた糖質制限。今はまだ“予備軍”ってレベルなら、1食分の糖質量を30g~40gまでに抑えておけば、将来的に糖尿病にならなくて済むし、もちろん体重減少の効果もあると。

桐山:なるほど。

江部:「糖質制限」を始めようと思っている方の現状に合わせて、この4つから選べばいいじゃない?

桐山:しかし江部先生のスゴイところは、自ら糖尿病にかかって、自分の身体で糖質制限のことを調べて、それで自ら本を書いているところなんですよね。まさに一人三役(笑)。

>>次ページ “ダイエットにも効く”ことは最初から明らかだった

―――そもそも江部先生が糖質制限食に関して、研究されたり、本を執筆されたりしたきっかけは何だったんですか?

江部:最初は、1999年に私の兄(江部洋一郎氏:現・高雄病院名誉院長)が気付いたのよ。ところが、私を含めた周りの人間はまったく信じず。それでしばらくは塩漬け状態にされていたわけ。

桐山:そうだったんですか。

江部:その2年後ぐらいかな。2001年当時、私の患者さんで重度の糖尿病の方がいたの。血糖値が560で、HbA1cが14.5%という……。

桐山:それはかなりの大物(笑)。

江部:普通の中肉中背のおじさんなんだけどね。即入院させて当初から一日1600kcalというカロリー制限で、食事は玄米菜食とお魚。それで歩け歩けって感じでやってたんだけど、1週間たっても食後血糖値が400を切って来ないし、尿糖も100gだったのがせいぜい70gくらいにしか減らない。

桐山典型的なカロリー制限をされていたんですね。

江部:当初はそうですね。それで、もうどうにもならないんで、モノは試しで兄が前に言ってた糖質制限に基づいた食事に変えてみたら、もうその日から食後血糖値が200を超えることはなくなったし、翌日の尿糖は8g。これにビックリして、“兄貴もたまにはイイことを言うな”と思って(笑)。それからかな、真剣に研究をし始めた。

桐山:そのころに、先生ご自身も糖尿病だってことが発覚したんですよね。

江部:そうそう。幸か不幸か……自分では“幸”だと思っているんやけど。オヤジもお袋も糖尿病だから、サラブレッドの家系だったんだけど……油断してた(笑)。

桐山:そこからは、“どの食物が血糖値を上げる原因になるか”を自分の身体で調べられる日が続いたと。

江部“人体実験”じゃないけど、徹底的に試して調べてみたのよ。果物食べたり、魚食べたり、肉食ったり……。そうしたら、本当に血糖値を上げる原因となるのは糖質だけだってことが、すぐにわかったの。当時はSMBG(血糖自己測定)器も高価だったけど、自分で勝手に調べてた。

桐山:それで上梓されたのが、2005年の『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 糖質制限食のすすめ』(東洋経済新報社)ですよね。

江部:4年ほどはそうやって、自分の体を使って調べてたし、自分の病院の患者さんにも糖質制限を勧めていたから、症例もたまってて。で、これは画期的やってことで、執筆に至ったわけ。

桐山:この『主食を抜けば糖尿病が良くなる』は、“糖尿病の改善”というテーマに絞って書かれたんですよね。

江部:当時から、ダイエットにも効果があるっていうのは明らかだったんだけどね。でも、ダイエットに効く! 糖尿病にも効く! 何にでも効く! ……っていう風にすると、なんだか“胡散臭いトンデモ本”のように思われるから(笑)。だから、それから3年ぐらいしばらくは、糖尿病に絞って書いてたな。その後、徐々に“ダイエットにも効果があるよ”ってことで広げていった。その間にしっかりとした確証も取れたからね。

撮影/岸 巧(中尾写真事務所)

『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』
著者/江部康二
漢方医、糖尿病医として有名な江部康二による美容・健康メルマガ。自ら提唱・実践している、効果バツグンの糖尿病治療法&メタボ対策「糖質制限食療法」に関する話題など、2007年から長期に渡り書き綴られている大人気ブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記」の内容を整理・要約し、適宜最新情報を加筆してお届けする、いわば「進化版徒然日記」です。
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『ノンフィクション作家・桐山秀樹の『週刊・おやじダイエット部通信』』
著者/桐山秀樹
糖尿病と診断されたことをきっかけに「糖質制限食」を実践、20kg超におよぶ減量と健康体を取り戻す。メルマガには全国の糖質制限の食事処や隠れ家レストラン、カフェ、健康的な焼肉屋、糖質制限仲間のイベントなどなど、糖質制限ファンなら見逃せないレポートが満載!
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