一昔前までは出世するために夜中まで身を粉にして働くビジネスマンも少なくありませんでしたが、今の時代は「自分の時間が無くなる」などといった理由で、昇進を拒む人もいるそうです。そんな時、会社はその社員を強制的に昇進させることはできるのでしょうか? 無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』で、現役社労士が回答しています。
会社は昇進を強制させることはできるのか
「ドリームジャンボ宝くじ1等 5億円」
もし、この当たりくじをもらえるとしたらみなさんは欲しいですか? 「絶対にいらない」という人はおそらくいないと思います。ただ、少しためらう人はいるのではないでしょうか。それは、よく言われることですが「宝くじに当たって不幸になった」という人がたくさんいるからです。
このように、物事はどんなに良い(と思われる)ことでも必ずしもそれだけではないということが多くあります。
これは、会社の人事についても同じことが言えます。
一般的には「昇進」というのは嬉しいものです。仕事の範囲も拡がり、今まで以上の経験も積むことができ、給料も上がります。それを望んで頑張ってきた社員にとっては非常に喜ばしいことでしょう。
ただ、当然ながら昇進は良いことばかりではありません。「責任が重くなる」「勤務時間が長くなる」「部下の指導もしなくてはならない」などの、大変なこともあります。社員の中には、それを嫌って「昇進したくない」という人も出てくるでしょう。
では、会社は昇進を強制的にできるのでしょうか? また、もし昇進を拒否する社員がいたら懲戒処分とすることはできるのでしょうか?
結論からお話しをするとそれは可能です。なぜなら、人事の裁量権は会社にあるからです(ただし、懲戒処分の場合は就業規則にその規定が必要です)。
実は、このような「昇進したくない」という社員についてのご相談は、私も結構いただきます。ただ、その社員に対して「強制して昇進」もしくは「従わなければ懲戒処分」という方法をとることはまず、ありません(「法律的には可能」というお話しをするくらいです)。
なぜなら、会社にとって優秀な社員だからこそ昇進させたい訳であり、そのような方法をとることはその社員のモチベーションを大きく下げてしまうことになるからです。これでは、会社にとってもその社員にとっても良いことはありません。
では、どうすべきか?
「なぜ昇進したくないか」を本人からしっかりヒアリングすることです。その理由は、もしかしたらその社員個人の事情かも知れませんし会社の現状についての不満かも知れません。
もし個人の事情が理由であればその事情に、どれだけあわせることができるか、また、会社への不満であればそれをどれだけ解決できるか、を話し合うことが大切でしょう。
すべてをその社員の希望通りにするのは難しいかも知れませんがある程度の納得感をもってもらうことはできるでしょう。
本来はお互いにとって良いことである「昇進」がもったいない結果にならないように工夫をしていきたいですね。
※補足です。
ただし、昇進に伴い、条件を不利に変更することはもちろん強制的にはできません。念のため。
image by: Shutterstock
『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』
【経営者、人事担当者、労務担当者は必見!】
企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
<<登録はこちら>>