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ホームセンターの異端児「コメリ」はなぜ農村に出店するのか?

飽和状態にあるホームセンター業界において、「コメリ」が独自の路線で成功を収めています。牧歌的な雄鶏のロゴが象徴するように、ターゲットは「農業を営む人たち」。コメリはどのようにして農家のニーズに応え、そして業績を伸ばしているのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、詳しく分析しています。

コメリの地域密着経営

こんにちは、佐藤昌司です。「コメリ」は、DIY用品や園芸用品を核商品として、ホームセンターとハード&グリーンを展開するチェーンストアです。ホームセンター業界は飽和状態にあり、ホーマックやニトリといったリーダー企業が幅をきかせる中、コメリは独特の戦略で両者を追撃しています。

コメリの本社は新潟県にあります。地域人口が1万人程度の農村エリアに重点的に出店しています。他のホームセンターとは一線を画した出店戦略を行っています。

通常、ホームセンターは地域人口が3~5万人以上ある商圏に出店します。しかし、コメリはそういった商圏を避け、競合が進出しない商圏を選んで出店しています。

大手ホームセーンターの出店戦略とは

大手ホームセンターは、規模の経済を発揮し、低価格で、豊富な品揃えで勝負する戦略をとるのが一般的です。これは、ホームセンター業界に限らず、多くの大手の小売業に当てはまることです。

カインズホームやコーナンなどはまさにこの大手の論理で出店しています。規模の経済を発揮するためには、ある程度の規模の商圏人口が必要です。そのため、大手ホームセンターは商圏規模がある地域に出店しています。

しかし、コメリは大手がとる出店戦略とは一線を画し、小商圏に出店する戦略をとりました。小商圏では、大手による規模の経済を生かした豊富な品揃え戦略は機能しません。豊富な品揃え戦略を実現するためには大型の店舗が必要になりますが、小商圏では在庫効率が悪化し、採算がとれないからです。

農村地域をターゲットにした

コメリは小商圏を中心に出店していきましたが、さらに特徴的なのが、農村地域をターゲットにしてきたことです。園芸用品や農業資材を中心とした品揃え戦略により、農業を営む人たちを主要顧客としています。

創業地の新潟の地場産業でコメリの主力製品でもある金物や建築資材などに特化し、その主力製品に合ったマーケットに経営資源を注ぎ込んでいきました。

さらに、商圏内のシェアを高めるために、特定のエリアに集中化して出店するドミナント戦略を採用しました。集約された出店地域において効率的な店舗運営を行うとともに、特定の地域における知名度の向上を狙いました。

コメリは農村地域をターゲットにすることにより大きく成長していきました。日本の農業の国内総生産は、2009年で5兆3,490億円と巨大なマーケットであり、そのマーケットにコメリは照準を絞ったのです。

農家のニーズに徹底的に応えた

農業分野における有力な競争相手は農業協同組合(JA)や専門卸ですが、コメリは農家への手厚い対応で農業分野での地位を高めて対抗しています。

例えば、農業所得のある顧客を対象に同社が発行するコメリ・アグリカードは、通常決済に加えて、毎年1回顧客が指定した月に一括払いできる「収穫期払い」が用意されています。

ネット通販で農家が出品した作物を販売する「産直市場」や、店頭での在庫が難しい大型商品を物流センターから直送する体制も整えています。

コメリは農業分野にターゲットを絞り、農家のニーズに徹底的に応え、競争相手のJAを凌駕する品揃えやサービスを提供し、インターネットによる販売体制の確立により、大きな競争優位性を確保することができました。

コメリは、大手が参入したがらないニッチ(隙間)市場を狙ったことが功を奏しました。大手との競合を避け、地域に密着した経営を行いました。そして、ホーマックやニトリと肩を並べる大手企業へと成長していったのです。

image by: Wikimedia Commons

 

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店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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