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【書評】ベテランは褒められたくはない。年下部下との仕事の仕方

年配の非管理職のベテラン社員さんとの接し方になんとなく戸惑いを覚えるというお話、よく聞かれます。そんな思いを抱いたことがある、もしくは現在進行形で抱いているという方にお勧めしたいのが、今回の無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』で紹介されている一冊。ベテラン社員とどう接したらよいのか、どうすれば彼らのやる気を喚起させお互い気分よく仕事ができるのかという具体的な方法が書かれた良書で、土井さんも強く推薦しています。

なんとかしたい!「ベテラン社員」がイキイキと動き出すマネジメント』片岡裕司・著 日本経済新聞出版社

こんにちは、土井英司です。

先日もコメントしましたが、リンダ・グラットンの『ライフシフト100年時代の人生戦略』は、これからの日本人の生き方の指針になると思っています。

というのは、「人生100年」を前提とした場合、キャリアも資産運用もパートナーシップもすべて変更を余儀なくされるからです。

かつての価値観であれば、みんなが出世を目指し、家庭を築いて、ある程度資産を構築したら、あとは余生を送る、で正解でした。定年が60年で、寿命が70歳であれば、働く年数は30数年、子育ては50代後半には終了、老後も10年程度生きるためのお金があれば十分だったからです。

でも、人生が100年になると、話は違います。子育てが終わっても人生はあと30年以上あるから、よほどの資産家じゃない限り、働き続けることを余儀なくされる。何より、30数年も働き続けたら、時代も変わるし、本人も変わる。同じ職場、同じ仕事でモチベーションを保ち続けることは、極めて難しいでしょう。

女性の場合、これに子育てや介護、夫の死(通常女性の方が長生きする)が加わるので、さらに複雑です。

再就職の60代、70代に加え、子育て終了後の女性、介護中の男女、夫の死後、働く女性が加わると、キャリアは変更・中断するのが当たり前」「出世よりも働きがい」となるのではないでしょうか。

本日ご紹介する一冊は、そんな時代に向け、すべての人に読んで欲しい一冊。

これから増える「ベテラン社員(年配の非管理職)」に、マネジメントがどう接して行けばいいか、どうやって彼らの働きがい、生きがいを促進するかを説いた、画期的な一冊です。

なかでも、ベテラン社員を深く知るための「仕事年表のしくみは目からウロコ。ここだけでもチェックしていただきたいと思います。

どうやってベテラン社員のプライドをシフトするかという視点、具体的なツール、実際に大企業がどう取り組んでいるかという事例まで、この未解決の課題に、見事切り込んだ一冊といえます。

さっそく、その気になるポイントを見て行きましょう。

2016年からの10年間で、大企業(従業員1,000名以上)では約340万人程度の50代非管理職が生まれると推定されます。これは2015年の統計局データから、現在40代の日本の総労働人口に、大企業で働く人の割合(約30%)と非管理職の割合(約72%)を掛け合わせた数値です

少し前までは、日本企業は出世を是とした男性中心の文化で形づくられていました。しかし、それは働く人のほとんどが敗者となる仕組みです。ベテラン社員がイキイキと活躍できる組織への進化は、誰もが幸せに働き続けていく社会への進化でもあります

◆「54歳」でモチベーションが変化する!
54歳以降になると、「なるべく今の仕事を続けたい」「今の能力で対応可能な仕事がいい」という気持ちが、挑戦したい、成長したいという気持ちを、大きく上回るようになってきます

◆「仕事年表」でお互いの経験を見える化して共有する
「仕事年表」に1年を1行で記入してもらい、思い出深い経験を一つひとつ聞いていきます。そしてその経験から何を学び、何を大切にしていたかを共有していきます

一人ひとりに個性的な人生がある。そんな違いを受け止めるところから、人間関係の土台ができあがっていく

3割程度の人、特に現状活躍できていない人に共通する結果は、「昔のことしか思い出せない」という現実です(中略)残念な人は、後半、特に直近5年、10年がまったく埋まりません

◆獲得した能力・スキル・マインドは3つの側面で見る
1.その人が生まれ持っているような才能に近い能力
2.経験に基づく知識(例 営業経験によって身についた顧客との人間関係づくり)
3.行動特性に近い強み(例 ピンチになっても動揺しない)

ここまで聞けたら本物──「私のマネジメントに意見をください」

自分を守るために持ってしまったプライドを、仕事の品質に対するプライドへとシフトさせていくことが重要なカギ

「プライド・シフト」に向け、ベテラン社員に対して「自己探求シート」の作成を依頼します

ベテラン社員は褒められたくはない

人間として生まれ、生きていく上でもっとも根本的で大切なスタンスは、自分が世の中へ人間として生まれてきたことへの感謝の念を持っているかどうか

内容の秀逸さもさることながら、おそらく編集者も深い興味を持って読んだであろうことがうかがえる文章の「勢い」に魅せられました。

なかでも、ある企業の経営者が、弱肉強食を是とする部長をたしなめた次の言葉が、キャリアにおける新たな時代の到来を予感させました。そのまま引用してみます。

管理職を目指すことだけが正しいという価値観では、多くの社員が敗者になってしまう

敗者ばかりを生み出すような組織では、社会的に存在意義がないと思う

社員全員が、自分の人生の勝者になってほしい

社員全員が自分の人生の勝者になれる組織仕事。これこそが、これからの日本企業が目指すところでしょう。読んでみて、自分のこれまでのスタンスも見直す良いきっかけとなりました。強烈にオススメの一冊です。

image by: Shutterstock

 

毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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