MAG2 NEWS MENU

SONYの元「耳型職人」が開発。20万円のイヤホンがバカ売れする理由

ソニーの元「耳型職人」と呼ばれる松尾伴大氏が開発責任者を務めることで話題となった高級テイラーメイドイヤホンの「Just ear」。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者・青山烈士さんが、なぜこのイヤホンが20万円を超えるにもかかわらず好調な売れ行きを見せているのか、その秘密を探っています。

最高品質と個別ニーズに応えることの両立

今回はソニーエンジニアリングのテイラーメイドの高級イヤホン「Just ear」にフォーカスをあてます

戦略ショートストーリー

よりいい音を楽しみたい方をターゲットに「丁寧な工程と独自の技術」に支えられた「究極の装着感」「好みの音質に調整することができる」という強みで差別化しています。

耳の専門家による最適なフィッティングやエンジニアと対話をしながら音質調整を行うことなどにより、テイラーメイドであることを体感させ、顧客の支持を得ています。

■分析のポイント

最高品質と個別ニーズに応えることの両立

この「Just ear」ですが、実は戦略上、非常に高度なことを実行しています。それは何かというと、最高品質を追求しつつ、顧客の個別のニーズに応えるということを実行しているのです。つまり、最高品質であることと個別ニーズに応えることを両立した戦略をとっているということです。

これは、非常に強力です。

例えば、Apple社のiPhoneは最高品質を追求することで、競合優位を実現していますが、iPhoneはユーザーの個別ニーズにひとつひとつ応えているわけではありません

個別ニーズに応えるということは、非常に手間がかかりますので、最高品質を追求しながら、個別ニーズに応えるということは簡単ではないのです。だからこそ、最高品質であることと個別ニーズに応えることを両立した戦略は非常に強力なのです。

具体的な取り組みとしては、最高のモノを作るといった場合、素材や技術などにとことんこだわって作ることがセオリーですので、「Just ear」もセオリー通り、素材にもこだわっていますし、耳の専門家や熟練のマイスターのこだわりの技術に支えられています。

そして、「Just ear」は、ひとりひとりの耳の形に合わせるだけでなく、一人ひとりの好みの音質に調整する形で、個別ニーズに徹底的に応えています。まさに、最高品質を追求しながら、個別ニーズに応えているといえるでしょう。

また、顧客にとって求める音質、つまり、顧客にとっての最高の音質は顧客ごとに異なるわけですから、メーカーが最高の素材、最高の技術のもとで最高のものを作ったとしても、ひとりよがりになる可能性は十分にあります。

特に開発者の情熱や想いが強ければ強いほど、ひとりよがりに陥りがちです。「Just ear」の開発責任者である松尾伴大氏からは非常に情熱を感じられるものの、最高のモノに対する考え方にブレがないからこそ、顧客の求める最高の音質を実現するために、最高の素材や技術を活用しているわけです。

ここが、今回の学びのポイントになりますが、上記のことからわかるように、重要なことは、「Just ear」が最高品質を追求しながらも、あくまでも「最高の答えは、顧客が持っているということを理解しているということです。これが、顧客から圧倒的な支持を得ている要因のひとつといえるでしょう。

ちなみに、同じように最高品質であることと個別ニーズに応えることを実現している企業として、まず思い浮かぶのがリッツカールトンホテルです。リッツカールトンホテルは、最高品質のサービスを提供することはもちろん、顧客の個々のニーズを満たすことで、顧客から圧倒的な支持を得ていることで有名です。

今後、ソニーエンジニアリングから、どのような商品がリリースされるのか、楽しみにしています。

◆戦略分析

■戦場・競合

■強み

1.究極の装着感

2.好みの音質に調整することができる

 ★上記の強みを支えるコア・コンピタンス

「ひとりのエンジニアの想いと、それを支えるものづくりのプロ集団」

上記のような専門家集団が支えているからこそ、強みを実現できているといえます。

■顧客ターゲット

◆戦術分析

■売り物、売り値

「Just ear」

■売り方

「一人ひとりの耳の形に合わせて手づくりされる、テイラーメイドのイヤホン」

■売り場

image by: Just ear 公式HP

 

青山烈士この著者の記事一覧

本メルマガをとおして、ビジネスパーソンにとって重要となる企業分析能力を磨くことであなたの価値向上のお手伝いができればと思っています。
また、これから社会人になる方には、就職活動で避けては通れない(面倒な)企業分析に役立てていただければと思います。
テキストのみでなく、図表を用いてわかりやすさを大事にしています。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 MBAが教える企業分析 』

【著者】 青山烈士 【発行周期】 ほぼ 週刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け