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「有休ください」「本気か?」という会社を訴えたら勝てるのか

働く者の権利として認められてはいるものの、雰囲気的になかなか取りづらいのが有給休暇。あの手この手で社員に有休を取らせないように画策する会社の実態を報じるニュースなどもよく目にします。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、そんな有休を巡り起こされた訴えと、裁判所が下した判決が紹介されています。

有給休暇を合法的に取得させない方法はあるのか?

まわりの友人によく言われることの一つが「(独立すると)自由でいいよね」です。確かに、「今日、出勤するかどうか」「何時に出勤して、何時に帰るか」は、自由に決めることができます。確かにこれらは会社にいたときにはできなかったことです。

ただ逆に、会社にいたときにできて今できないこともあります。それは「有給休暇を取ること」です(もちろん、今も自由に休むことはできますが、当然ながらお金は出ません)。

この「有給休暇」と言えば、経営者と社員で、とても意見が割れるところでもあります。経営者側から見れば「この忙しいときに有給なんか取って!」と感じることが多いでしょうし、社員側から見れば「全然、有給なんか取れない!」と感じることが多いでしょう(私も、あまり有給を取った記憶はありませんね)。

今は、経営者とお話しする機会がほとんどなので、前者に関する悩みを伺うことが多くあります。

ほぼ24時間365日、会社や仕事のことを考えている経営者にとって、「ゆっくり休みを取る」という有給休暇についてあまり良い印象を持っていない場合も結構あったりします。

そこで、極端な場合、「うちには有給休暇なんて無い」「有給の申請なんか受け取らない」と会社内で公言している経営者の人もいたりするのです(もちろん、どちらも法律違反です。念のため)。

では、実際にそこまで極端では無いにしても、有給の取得しづらくなるような言い方をした場合はどうなるのでしょうか?

それについて裁判があります。ある塾運営会社で、その講師が、有給休暇の取得を妨害されたとして会社を訴えました。有給休暇を取得しようとしたところ上司などから次のように言われたというのです。

「そんなに休んで仕事がまわるなら、会社にとって必要ない人間じゃないのかと思われるよ」
「そんなに仕事が足りないなら、仕事をあげるから、○日に出社して仕事をしてくれ」
「(経営者が、全社員が参加する集会で)今後、有給休暇はよく考えてから取るように

そして、結局は有給申請を取り下げざるをえない状況になったというのです。

では、この裁判はどうなったか?

会社が負けました。「有給の取得を妨害したのは違法」と判断されたのです。

いかがでしょうか?

おそらくみなさんの中で管理職や経営者の人はこの会社側の考え方に共感される人のほうが多いかも知れません。ただ、実際にそれを言ってしまって有給を取らせないとこの裁判のようになってしまうのです。

では、有給を取らせないためにはどうしたら良いか? これは、私も日頃よくいただくご相談内容です。答えは非常にシンプルで、「そのような方法はありません(すいません汗)」とお答えしています。法律で取得が認められている以上、法律違反をしない限りそれを阻止することはできないのです。

では、社員に好き放題に取らせるしか方法はないのかというとそうでもありません。まず一つ目の方法として日頃から社員とお互い信頼関係を築いた上でその取得の日を調整してもらうことです。

「この忙しいときに勝手に有給取って!」という会社で状況をお聞きすると忙しいことを理解していないから取得しているというよりも、会社に対する不満や不信感から「会社が忙しくても自分は関係ない」という意識で取得している場合が多かったりします。

また、その他の方法としては、思い切って「有給取得を促進する」というのもあります。前もって取得日を決め、仕事を含めたスケジュールを組んでもらうのです。こうすれば社員も仕事の忙しさも考えて調整して取得するようになります(もちろん、事前にその意図や思いもしっかり伝える必要がありますが)。

「人もいないし、忙しくてそれどころじゃない!」という状況も、もちろんあると思います。ただ、それでもやはり、有給取得はすすめていくべきではないかと私は思っています。

今後は、強制的に有給を取得させるような法律も成立しそうな様子もあります。会社ごとの有給取得率の開示も進むでしょうから取得率の低い会社は、人を採用しづらくもなります。「今日から」とか「来月から」ではなくても良いのです。まずは「1日分から」でも良いのです。

有給取得、すすめてみませんか?

image by: Shutterstock.com

 

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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