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森友学園問題で注目。知られざる幻の「第二教育勅語」とは?

連日様々な報道がなされている学校法人森友学園を巡る問題ですが、同学園が運営する塚本幼稚園において園児たちに暗誦させていたことでにわかに注目を浴びることとなった「教育勅語」。昭和23年に国会決議によって廃止されたことは広く知られていますが、明治末期にその内容を改めた「第二教育勅語」が作られていたことはご存知でしょうか。在米作家・ジャーナリストの冷泉彰彦さんは、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、その知られざる幻の「第二教育勅語」の中身について紹介しています。

幻の第二教育勅語の

歴史家の八幡和郎氏といえば、蓮舫氏の二重国籍問題で強硬な論陣を張っていた人で、この点に関しては私は賛同しかねます。ですが、史家としては、情報へのセンスとバランス感覚に不思議な味があり、100%とまでは言いませんが、興味深い指摘をしている方でもあります。

その八幡氏は、昨今話題の教育勅語について

明治末期には教育の基本とするには時代遅れといわれ、西園寺文部大臣が国際性や女性の重視を加えた新しい勅語の制定を図り明治天皇の了承も得ていた。それが、明治天皇の崩御で改正の機会を失い、逆に大正や昭和を通じて不磨の大典化されてしまって弊害も多かった。

とコメントしています。

私は西園寺の第二教育勅語」というのは不勉強で承知しておりませんでした。この八幡氏の指摘で初めてその存在を知り、その中身を見てみることができました。その全体像は、この論文の15ページにあります。

文部大臣西国寺公望の文教政策(※ PDFファイルが開きます)

文章のリズムや格調などクオリティとしては草稿ということで「イマイチ」なのですが、色々と興味深い記述があったのも事実です。

例えば、中ほどに出てくる

彼ノ外ヲ卑ミ内ニ誇ルノ随習ヲ長ジ、人生ノ模範ヲ衰世逆境ノ士ニ取リ其危激ノ言行ニ佑ハントシ、朋党比周上長ヲ犯スノ俗ヲ成サントスルカ如キ、凡如此ノ類ハ皆是青年子弟ヲ誤ル所以ニシテ恭倹己レヲ持シ、博愛衆一一及ホスノ義ニ非ズ。

という辺りは西園寺だけでなく、一説によれば陸軍の秋山好古なども関与したというだけあって、非常にシャープな感じがします。

特に「衰退時の逆境の士を人生の模範にして、その過激な言動を真似しようとしてはならない」というのは、非常に重たい指摘です。楠木父子、赤穂浪士に新撰組という種類を教育の中で美化してはダメだと言っているんですね。これは重要な指摘と思います。

後は、結語の部分も立派ですね。

教育ニ懐クモノハ深ク朕カ深衷ニ顧ミ、百年国猷ノ在ル所ニ遵由シテ教育ノ方向ヲ誤ルコトナキヲ勉メヨ。

教育は国家百年の大計に依拠しなくてはならない」というのは、実に重いです。

そんなわけで八幡氏のおかげで貴重な勉強ができました。但し、蓮舫さんへの批判は、しっかり政策論に向かうようにして欲しいですね。

 

 

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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